デザイナー評価制度とフィードバックの「伝え方」
はじめに
ユーザベースでは四半期に一度のサイクルで目標設定と評価※ を実施しています。
評価制度の全体像についてはCDO平野さんのnoteや登壇資料に詳しいので、そちらを見て頂くとして。
どんな評価制度にするかその設計はもちろん大事ですが、確定した評価について、1on1など口頭で行われる面談での「伝え方」もけっこう大事だと感じています。
自分はチームリーダーという役割柄、必然的に「伝える側」になることが多いのですが、これがなかなか難しい&悩ましい。
試行錯誤した結果、(決して全てではないですが)メンバーから「伝え方がうまい」と言って貰えることもあったので、このnoteでは実際にどんな流れで何を話しているか、書いてみたいと思います。
伝える側・受け取る側双方にとって何かひとつでも役に立ったら嬉しいです。
※…分かりやすくするため「評価」と表現しましたが、ユーザベースでは評価という言葉は使わず実際は「フィードバック」と言います。理由は後述。
Netflixでも実践される「フィードバックの4A」
この「フィードバックの4A」を実践しています。「NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX」という本に出典があるようです。(実はこの本を読んだことがないのですが、社内で読んだ人が紹介してくれたことがきっかけで以後参考にするようになりました。)
この4Aを意識するだけで「伝え方」はだいぶ変わってくるように思います。特に最初の「相手を助ける気持ちで」と最後の「フィードバックを受け入れるかどうか選択権は相手にある」にはハッとさせられました。
最近は慣れてきたので言ってませんが、最初の頃は面談の冒頭で「私はこの4Aに基づいてフィードバックしますね」と宣言・共有することで、面談をどういう場にしたいと思っているか、受け取る側もどう受け取ったら良いかの目線合わせから入るようにしていました。
何に対してフィードバックするか?
僕たちSaaS Design Divisionには上図のようなコンピテンシーマップ(スキルマップ的なもの)があります。縦軸に「〇〇の力」といった具合に表現される観点があり、横軸に広さ・深さでラダーになった(右に行くほど難しくなる)達成基準が表現されています。
基本的にはこのマップをベースに会話していきます。どの観点のレベルが上がったか、具体事象を元にフィードバックします。
例えばこんな伝え方です。大事なのは具体事象を元に説明すること。具体的に何のどこを良いと思ったか伝えることで、受け取る側も「この観点ってそういう所を見てるんだ」と知る・理解を深めることができます。
レベルはステイだったとしても、純粋にGoodだと感じた所も同様に具体事象とセットで伝えます。
ついステイな部分は触れずにスルーしてしまいがちですが、受け取る側として言及されないよりされた方が嬉しいだろうと思い(自分がそう)、これについても伝えるようにしています。
「悪い所」ではなく「伸ばしやすそうな所」
Goodの反対、Moreについて。ここが伝え方として難しいですよね。
結論から言うと、Moreをただ指摘して終わるのではなくその先のNext Actionとセットで伝えるよう心がけています。
弱みの指摘だけだと、例えば一回限りの特殊状況に対して重箱の隅をつつくようなフィードバックも成り立ってしまいますが、それだと受け取る側として納得感がなかったり消化しづらいですよね。なので弱みが再現するであろう or チャレンジの機会があるものに絞ってNext Actionとセットで伝えるようにしています。
そもそも誰だってMoreは耳が痛いものです。Moreを聞かされる瞬間も、面談後に咀嚼する時も、常にその心理的ハードルは伝える側が想像する以上のものです。
なので伝える側も言いっ放しにならず、もし自分が同じフィードバックを貰ったら受け取りやすいか? 次の行動が起こしやすいか? を考え、クリアしたものだけフィードバックするくらいがちょうど良いバランスになる気がしています。
また、Moreは必ずしも弱点の克服とは限りません。つまり強みの更なる強化かもしれない。これも立派なMoreです。
もしかしたら弱みは一旦置いておいて強みの強化に集中した方がその人の可能性を広げてくれるかもしれない…そう思えたら、無理に弱みに言及しないのもひとつ手だと思います。いずれにしても
これを忘れてはいけません。あくまで選択権は相手にあるということ。「私はそんな風に思うけど、このフィードバックを採用しても良いし、別の手段でもって達成してくれても構わないよ」そういうスタンスで伝えるように努めています。
分からない時は分からないと素直に言う
フィードバックを伝える側の心理として、受け取る側より優れてないといけないとか、指摘するからには自分も出来てないといけないとか、そんな謎プレッシャーに陥ることがままあります。
そしてつい「自分は間違ってない…!(間違えられない…!)」と自己保全に走り段々こじれていった経験、ある人も多いのではないでしょうか。
なので、伝える側こそ素直になるべきです。つまり、迷ってる時は迷ってると言う。分からない時は分からないと言う。
こんな頼りないフィードバックで良いのか?とも思いますが、自己保全に走り説き伏せるような伝え方になるよりずっと良いです。少なくとも経験上、伝える側も迷ってる・困っていることをオープンにすることで、建設的な対話に繋がったことが多いと感じています。
面談は一方的に伝える場ではなく「対話する場」
上記のようなフィードバックを伝えた後
と相手にも話を振り、感想や不明点、納得いかなかった所などを共有してもらいます。面談はお互いの景色を交換し合う場・対話する場です。
フィードバックは、相手も気づけなかった理想と現実のGapを埋める手助けとして機能すべきであり、決して押し付けるものでもありません。そうした考えもありユーザベースでは「評価」とは言わず、「私にはこう見えてるけど、どうかな?」と、贈り物を送るようなニュアンスも込めて「フィードバック」という言い方をしています。
対話を通して伝える側から見えてる景色と受け取る側から見えてる景色にズレがないか確認し合ったり、Next Actionの具体について深掘ったり、理想の姿に変更がありそうであればそれについて会話してみたり。
ちなみに、伝える側より受け取る側が多く喋るくらいの方がバランスは良いです。伝える側は立場的に強くなりがちなので、その気がなくても喋りすぎると押し付けっぽくなってしまうので注意が必要です。
面談直前までめっちゃ悩むのが常
いかがでしたでしょうか。評価をしたりそれを伝える人にとって「相手を助けるような気持ちで」や「分からない所は分からないと言う」というのは、少し気が楽になるような部分もあったかと思います。
とはいえ僕自身、自分のフィードバックがこれで本当に適切なのか?はいつも相当悩みます。言葉の選択や伝え方次第で、相手を傷つけたりデモチベーションさせる可能性がある。常に不安・恐怖心があります。
一方、言いにくい事の中にこそ相手の成長を後押しする要素や自己認識力を高める一助となる要素が多かったりするのも事実。なので思い切って少し言いにくい事やあえてハードル高めのオーダーを出すこともあります。最後は相手が受け止めてくれると信じるしかありません。
面談の時期はいつも悩むので大変だなと感じることも多いですが、相手の事をひたすら考えていると不思議と優しい気持ちになってくることがあり、こういう時間も悪くないなと思います。
この記事が伝える側・受け取る側双方にとって何かの役に立ったり、両者の橋渡しのきっかけになってくれたら嬉しいです。
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