個人事業主の辿る道

個人事業主になって三年になるがいくら個人と言えども、全て一人できる訳ではない。

目の前のクライアントのニーズに答えることに全力を注いでいると、他のことに手が回らなくなる。

営業や集客をはじめ、自分が生き残っていく為には一般の企業が行なっていることを最低限行なっていく必要がある。

そうなると心身の健康やスケジュール管理など高い自己統制能力も求められてくる。

そんな私が起業して最初に分かったことは

”人間、誰しも独りでは生きていけない”ということだった。

むしろ個人事業主ほど、人に依存しなければならない生き方なのかもしれない。

そんな個人事業主が最初に考えることは自分より秀でている人に頼ることだ。

私は大金を払ってコンサルタントに相談することにした。

当時そのコンサルタントは個人事業主に対しては実績のある人だった。

けれど、その結果は散々なものだった。

確かにそのコンサルタントの提案はやれば結果が出るものであったが私の事業に寄り添ったものではなく、収益を出すことだけにフォーカスしたやり方だったからだ。

その後も、資金と時間をかけて色々なことをした。

会員制のビジネス交流会に入ったり、マーケティング研究コミュニティに入ったり、高額セミナーに通ったり、自身でコラボイベントやコミュニティを企画したりもした。

結果、どれも鳴かず飛ばずに終わった。

なぜ何をやっても成果を出せなかったのか振り返ってみると至極単純

”自分のことしか考えてなかった”からだ。

自分の利益の為だけに動く起業家は間違いなく、生き残れないということを私は三年かけて学んだ。

いいや、悟ったと言ったほうが正しいかもしれない。

つい先日、私のもとに独立したての個人事業主が相談に来た。

彼は投資詐欺にあい、共同でベンチャービジネスを立ち上げたがそこでも詐欺にあった。

そこで巻き返す為に独立した。

けれど独立して自分が何から初めて良いのか分からないということで私のところに相談にきた。

いわばよくある典型的な相談例だ。

彼がかつての自分と重なるところもあり、3年間で学んだエッセンスを時間をかけて教えた。

起業家の基本的な考え方、マーケティングの基本的な考え方、集客から成約までのプロセスを教えた。

彼は霧が晴れたように満面の笑みで満足した様子だった。

さらに、独立するまでのみんなで協力できるコミュニティの提案もした。

資料を作成し、理念やミッションの話をし、深く共感してくれた様子だった。

そしてつい先日、彼から連絡がきた。

彼はやっぱり私の提案をキャンセルしたいということだった。

要約すると、”提案は素晴らしいが私は時間と手間をかけたくない”というものだった。

”自分のことしか考えない”とはまさしくこういうことだ。

相手が自分にどれだけのものを与えてくれているのかが見えていないのだ。

おそらく私もそうやって身勝手な振る舞いをしてきたのだろう。

だからこそ、何も言うこともなく、彼の意見を聞き入れ、全てを白紙に戻した。

こうやって起業家は痛みをともなって育っていくのではないのかと最近は思う。