歌謡曲レコード その6 帰り来ぬ青春(73/05)/和田アキ子 DJ・小西康陽氏が継承する「歌手」和田アキ子の存在感
「見えない世界」に続いて早くも2回目の登場となるアッコです。今回はアズナヴールによって歌われたフレンチシャンソンの名曲「帰り来ぬ青春」の日本語カバーで、73年のシングル「ふれあう愛」のB面として収録された1曲。
わたしがこの曲を知ったのはピチカートファイヴの小西氏がreadymade mixと銘打って発表した2005年のリミックスシングル盤。ルパンを彷彿させるピストル音を効果的に使い緊張感を持たせ、サスペンスフルな演出で、まるで60年代のフランス映画のエンディングや予告で使われていそうな編曲でアレンジしたもの凄く格好良く、素晴らしい1曲に生まれかわっています。
そしてさらにわたしを魅了させたのは和田アキ子の歌唱力。こんな繊細な歌を彼女のダイナマイト歌唱がどう料理しているのか。きっと世界観もへったくれもなくボロボロになってるんじゃなかろうかと、勝手で失礼な予想しか巡らず恐る恐る聴いてみたのだ。それが聞いてびっくり。彼女が若い時に録音された音源を使っているということを差し引いても、どちらかといえば不器用で一辺倒なアッコの歌唱がしっかり歌の世界にマッチし、情緒の余韻も残しているではないか(失礼!)。
いまでは聴けなくなった彼女のロングトーンは当然健在だし、どこまでも底なしに響くボーカルの圧。タバコによるラスピーな声質も歌にぴったりだ。これは小西氏がもっとも良質に料理してみせた彼のディスコグラフィのトップ・オブ・トップではなかろうか。
数多くの歌手がこの歌をカバーしているが、わたしが聴いた中ではダントツでベストな音源である。この曲を聴いて和田アキ子の世界をもっともっと深くしりたいと、彼女のディスコグラフィを貪る日々が始まったのだ。
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