クリームは溶け、気泡は残る ①
ア
ス
フ
ァ
ル
ト
ソ
フ
ト
ク
リ
|
ム
レ
ク
イ
エ
ム
あ〜あ、もったいない。
舗道に落ちていたクリームはじんわり溶けかかっていました。西暦2000年夏。場所は外苑東通り沿いのとあるバス停。
詩ってすごいなぁ。
20年前の些細なできごとを今も鮮やかに再生してくれます。句自体に記されている情報はごくわずかなのに、作者の私は読み返しただけで時期や天候、位置情報まで思い出せてしまう。
俳句はある意味、超記憶術なのかも。
一瞬のきらめきをビー玉の気泡のように閉じこめることができれば、いつでも取り出して鑑賞できますし、皆で共有できますよね。クリームは消えても気泡は残る。私も数千句のビー玉コレクションをたまに広げてはニヤニヤしています。
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さて、私の思いつき( #タテの一行詩やってみた )に大勢の皆さんが応えてくださって本当に驚きました。ご参加くださった皆さん、ありがとうございます!
ヨコ書きのnoteにいきなりタテ書き詩が現れて、皆さんはどう感じましたか。
わくわくした
ドキッとした
とまどいを覚えた
眉をひそめた
感じ方はいろいろだったと思います。
その驚きや当惑から目をそらさないでほしいんです。
今はヨコ書きデフォルトの世の中ですけれども、私たち日本人はやっぱりタテ書きが好き。なにげない一言もタテ書きだと重みを増し、香りを放つ気がします。
「いやいや、わかるけどさ、ヨコ書きのサイトにタテ書きがゲリラ的に乱入するのはどうなの?」
「文字数少ないのに行数ぜいたくに使って、その分たくさんスクロールしないといけないし腱鞘炎になったらどうしてくれる?」
……なんていう声はまだ聞こえてきませんが、そういう意見が出るのは自然だと思います。
でもね、世の中が変わってゆく時は多少の波風が立つのかもしれない。ヨコ書き社会が今後タテ書き主流へ変わることはないでしょうが、今よりも自由にタテ書きが楽しめる、ゆとりある世の中になってくれたらなと私は期待しています。
タテ書き専用サイトや専用アプリに愛好家を隔離するのでなく、ヨコ書き仮想空間を構築運営している人たちが敷地内にタテガキストたちの中庭も作ってくれたら最高にうれしい。今回はそんな思いもこめてタテの一行詩を提案しました。
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皆さんの作品を読みながら、日本語の美しさをしみじみと味わっています。今夜から数回に分けてご紹介しますね。
一番乗りで駆けつけてくれたのが北海道のぴぃぴさん。口ずさみたくなるようなタテナガのフレーズと、スクロールする私の指を驚かせたタテナガすぎる猫の絶妙なシンクロ!
米国にお住まいのたなかともこ@みかんせい人さんの扇風機の句を読んでいたら、家族愛を軸にしたSF映画を思い出しました。『ET』『コンタクト』『インターステラー』。音と音の間にふっと感じとれる静かなメッセージ。秋の気配は宇宙からの通信にも似て、どこか切なく優しい。
ミオール / Micheálさんのまなざしは時空を超えて縄文日本へ、宇宙空間へ。壮大ななぞかけのような一句ですが、ドゴン族にまつわる逸話を聞くと「えっ、これノンフィクション!?」とロマンの血が騒ぎはじめます。
高知の棚田から四季折々の美しい花便りを届けてくれる望美さん。画像にはめこまれたタテの詩はご当地ポスターにも似て、郷土愛がふんわりと伝わってきます。
りなるさん、楽しみながら書きましたよね、この詩。文字の端々からニコニコしている感じが伝わってきます。こちらまで楽しくなってきました。
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さて、楽しい作品群のご紹介は②へ続きます。
しばしお待ちを。他の皆さんからの作品も随時お待ちしています!