見出し画像

「さざなみのよる」読書感想文

今年は昨年よりも、小説や他のクリエイターさんが投稿しているnoteのエッセイをたくさん読み、感銘を受けたものを紹介したり、感想を述べたりする投稿を増やしたいと思っている。

作品と人をつなげる橋渡しの役に立てれば嬉しい。

それでは本題の「さざなみのよる」の感想へ。

複数人の視点から一人の女性を描く物語

この本に出会ったきっかけはnoteの読書の秋企画。

作者のことも、この本の前評判も知らない。
シンプルにタイトルと表紙のデザインだけで直感で選んだ本。
元々小説はこうして選ぶことが多い。直感選びが好き。

本の内容をざっくり紹介すると、個性的で芯のある一人の女性がいて、若くして癌で亡くなってしまう。物語はそこから始まり、その女性が関わることで人生の気づきや大きな決断をすることになった人たちが、その女性との出来事を思い出していく。

夫、姉妹、親戚、友人、同僚、元恋人など。

一人ひとりに強い影響力を与えていた女性が視ていた世界はどんな世界だったのか?あの時のあの行動、あの発言の意味は何だったろう?と思いをはせることで、また新しい生きるためのヒントを得る。

皆の中心になっている女性の発言や行動の一つ一つが、読み手の自分も考えさせられることが多い。

ありきたりな日常に突然起った、死ぬべきではない人の死。
何人もの視点で描かれた彼女は個性的で芯がしっかりして、不思議と人生の道しるべとなってくれる人。

そんな人は身近にいるだろうか。

【作品の感想】意図的ではない影響力は強い

亡くなった女性が生前、いろんな人に意味深な発言をし、後々、その意味がわかるのですが、その言葉の数々が物語の登場人物だけでなく、読み手にも影響を与えてくれる作品だと思う。

さざなみのよるを書いた木皿泉さんが、この物語で伝えたかったことはなんだろう。

物語の中心にいた亡くなった女性の発言が、作者の伝えたいことだったのか?それとも、その女性の言葉を聞いて行動する「後に残された人」の行動が伝えたいことだったのか?

少なくとも僕は、その両方に影響を受けた。作品の途中に出てくるなんてことのない一言が、物語を読むと特別な言葉になって自分の中に入ってくる。

例えば、

「お金にかえられないものを失ったんなら、お金にかえられないものでかえすしかない」

この「かえす」の意味は本人にかえすという意味では無いと思っている。失ったものがお金にかえられず、なおかつ大きなものなら、その分を別のどこかに「おくる」ことで「かえす」ことになるのかなと。

少なくとも僕はこの本を感じてそう思ったし、とても意味の深い言葉のように感じた。

他人に影響を与えるというのは、この人の人生を変えてやろうと思ってできるものではない気がする。この物語の中心にいる女性は、どこまでも自分らしかった。

自分らしく生きた結果、周りのひとを巻き込んだ。
その結果、亡くなってからも影響を与え、心の支えにもなっている。

そんなことで、影響力についても少し考えさせられた本だった。

【小説の書き方に対する気づき】細部ほどしっかり

今回、「さざなみのよる」はノンストップで初めから最後まで読ませていただいた。時間にしてちょうど3時間。

小説というのは読めば読むほど、その世界に没入していく。

余談だが、読んだ媒体は紙の本ではなくiPhoneⅩ。スマホだ。
あの小さなスマホの画面に3時間集中したのだが、全然疲れなかった。

なぜここまで没入できるか考えてみた一つの答えが、「細かな描写が丁寧に描かれ、タイミング良く入っていること」だ。

小説の中に登場する人物の生活が鮮明に想像できたから、小説の世界に没入できたのだという答えに至った。

どういうことかというと、本書とは関係無いが自分なりの例を書いてみる。

<A>
寒い冬、早朝携帯のアラームで起きる。
二度寝しないよう、遠いところに携帯を置いていたせいで、布団を出ないと止められない。
自分の仕掛けなのに自分でイラッとしながらも、素直に起きてはみがきをした。
天気が良く小窓から朝日が入り込み気持ちが良かった。
<B>
季節は冬。朝7:00。
~♪
携帯にセットした、目覚ましのアラームが鳴る。二度寝しないため、布団からでないと止められない場所に携帯を置いていた。
自分で仕掛けた自分のための仕掛けなのに、「クソッ」と思いながら布団から起き上がる。まんまと自分の思惑どおりになった。
そのまま眠気を覚ますため、2Fの寝室をでて階段を降り1Fの洗面所で歯を磨く。
冬の晴天。小窓から入る日差しが気持ちよく、ただそれだけで、いつもより気持ちよく起きれた気がする。
起きたときのイライラは既になくなっていた。

どっちも同じ朝を想像して書いた。

僕はBのように回りくどいけど、細かく書かれた日常の描写を読むのが好きだ。僕の例はプロと違って上手くないけど、言いたいことが伝わると嬉しい。

ライティングの仕事理論で考えると、完結に結論から書くし、冗長表現は御法度だけど、小説は細かい部分も丁寧に描く方がいいと思った。
とはいえ、もちろん無駄に長いのはいらないけど。

まだまだ上手く表現できないけど、プロの作家さんの文章にもっと触れて、どんな文章を書くと「没入して読了できるか」を考え続けていこうと思う。

他にも細かいところだと、専門的なこともきちんと丁寧に描かれていたり、恐らく実際にこういうことがあったのだろうなと思わされるような場面もあった。

きっと、実体験や、取材をして得た情報なのだろう。そうじゃないと書けないだろうなと思ったところが多々あった。

総じて今回の気づきは、細かくて一見物語の本質とは違う部分をいかに丁寧に描くかが大事、ということだった。そして、その場面を差し込むところ、読み進めていく中での緩急のつけ方も。

学ぶことはたくさんあった。

おわりに

一冊の本から学んだ事は多い。

特に僕の場合は、自分で勝手に答えを作るのが好きなので、ビジネス書と違い、色んな捉え方が許される「小説」という読み物は面白くて好きだ。

同じ作品を読んだ人がいたら感想を言い合いたいと思う。

「さざなみのよる」も面白かった。
是非、このnoteをきっかけに手に取って読んでもらえたら、感想を言い合いたい。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集