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『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (120) 不思議な東北旅行

 奈良滞在を切り上げたのはいつころなのか、正確な日にちは不明ですが、5月末日か、あるいは6月のはじめころだったような印象があります。奈良を離れて向った先は布川の徳満寺なのか、あるいは千駄ヶ谷の那須家なのか、この点も不明瞭です。翌大正8年になると和辻さん宛の葉書が全集にたくさん収録されていて、2月15日から7月17日までの所在地は那須家であることがわかりますので、前年の後半期も那須家に滞在していたのであろうとひとまず推定されます。

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中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。

●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…

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