オウンドメディアに必要な「格」と「箔」
最近またオウンドメディア関連の講演が増えてきました。参加者の方とやりとりさせていただくと、またオウンドメディア界隈が息切れしてきているな、という感触を覚えます。「オウンドメディアのKPIをどうすればいいのか?」「社内でどうやったらコンセンサスをとれるのか?」といった問いが多く、みなさんオウンドメディア自体をどう「捉えればいい」のか悩んでいるような気がします。
いわゆる「オウンドメディア」(独立型のテキスト中心のメディア)の方向性は2方向あって、ざっくり言えばマーケティング的かブランディング的か、ということなのですが、前者はコンテンツをフックにして、その商品なりサービスになんらかのアクション(コンバーション)をKPIと置く、いわゆる「間口型」で、ここではSEOやデリバリー手法に重きが置かれます。
反面後者は、静的で過不足なく情報を網羅している企業情報サイトと対を成すような形で、企業の人格やコンテクストを伝えるために存在する「オーセンティシティ型(信頼醸成)」とでも言えるようなメディアがそれに該当すると思います。私が運営しているオウンドメディアもこちら側で、冒頭の質問をされたのも、こういった建て付けのメデイアを運営している(しようとしている)方達です。
前者の戦略は比較的シンプルで、ユーザーがweb上でニーズが顕在化するタイミングにアプローチする方法がとられますが(テクニカルな点で難しさが伴う領域です)、後者についてはどんなユーザーと接点を作るのか、といったところから考える必要があることと、「企業好意」というゴールが不明瞭な点であることから、「そもそもなぜこのメディアをやるのか」という根本的な問いが常につきまってしまうことが悩ましい点でもあります。そういった視点において冒頭の「どう捉えるか?」で悩んでしまう、ということかと思います。
組織として進めることですから、何かしらの課題があってオウンドメディアに取り組むことを決めているのだと思いますが、冒頭の声を聞くに、なんとなく安易に「オウンドメディア(メディア発信)」を解決策として決めてしまってはいないか?という点が気になっています。
オウンドメディアに携わって久しいですが、個人的なことを言わせてもられば、今やっているオウンドメディアたちも、「オウンドメディアを始めよう」として始めたわけではなくて、「企業のあらゆるコミュニケーション」と「企業内にある(眠っている)情報・人」と「世の中の潮流・兆し」を見渡して、足りないことを探していたら「オウンドメディア的な展開」になってしまっただけのことなんですね。要は必要に迫られて立ち上げただけなわけです。
何が言いたいかというと、オウンドメディアが不要というわけではなく、その手前の「社内外を見渡し必要なことを洗い出す」プロセスがまず大事ということです。
そういった意味でオウンドメディアに携わる人に必要なのは、オウンドメディアの「立ち上げ・運営スキル」ではなく、先述した「オウンドメディア的なアプローチ」ができるスキルであって、それは情報の動きが早い時代において、あらゆるビジネスパーソンに確実に求められるスキルだとも思うわけです。そんな領域を組織の先頭で担える可能性があるのがオウンドメディア(的)担当者だと思うわけです。PR領域と言ってしまえばそれまでですが、旧来の(組織上)のPR担当ではなく、本来的な意味あいでのPRがより求められる時代にあって、このポジションはもっと重宝すべき(重点化すべき)だと声を大にして言いたい近頃です。
話が脇にそれましたが、それはそれとして、オウンドメディアを立ち上げたなら、その価値は何で測るのか、といった課題は引き続き残ります。いろんなメディアの話を聞かせてもらい、長く続けられているメディアを見て感じるのは、(CV目的以外の)オウンドメディアにおいての価値は突き詰めると「格」と「箔」にあると感じ始めています。
『BRUTUS』を例に出します。コーヒーや宿や飲食店、インテリアからアパレルに至るまで、様々なテーマで編集部の目利きによって取り上げられたお店や人たちが並びます。取り上げられた方にとってみれば『BRUTUS』に出ることで「価値が上がる」というベネフィットがついてきますし、『BRUTUS』に載るようなお店(人)になりたいと目標にする人もたくさんいるかと思います。『BRUTUS』というメディアには「いつか出てみたい」という「格」があり、結果取り上げてもらった人にとって大きな「箔」になる、ということです。
同様にオウンドメディアにおいても「そこなら出たい」「出たなら自慢できる」と社内の人から思われることはもちろん、もっと言えば、そのオウンドメディアに呼ばれる企業以外の人にとっても、「そのメディアに出るならなんらかしらのアピールになる」と思ってもらうところまで目指すことだと思います。
ありがとうございます。 サポートって言葉、良いですね。応援でもあって救済でもある。いただいたサポートは、誰かを引き立てたたり護ったりすることにつながるモノ・コトに費やしていきます。そしてまたnoteでそのことについて書いていければと。