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実録、夫が救急搬送された日【レポ】


あれはごく普通の日常だった。いつものように夫を仕事に送り出し、娘を学校に送り出し、私も仕事に行く。いつもの平日のルーティーン。

だが、仕事中1本の電話にてその日常は脆くも崩された。

品出しを始めた午前10:40過ぎ職場に電話がかかってきた。たまたま私が近かったので電話に出る。

「はい、〇〇〇〇(職場名)でございます」

「もしもし、私○○救急隊の〇〇と申しますが、ここに〇〇(私の名前)さんって方はいらっしゃいますか??」

「わ、私ですが・・・」

ががが・・・とてもとても嫌な予感しかしなかった。

「実は先ほど旦那様が仕事中の事故で怪我をしまして、○○病院に搬送中です。奥様すぐに来られますか???」

え??事故??え??怪我??一体どういうこと??WHY??

一瞬思考回路が止まって頭の中は?でいっぱいになった。しかし、夫の一大事ということだけはわかって話を聞いてはい!!はい!!って返事をするたびに私の顔は青ざめていった。

「わかりました、すぐに向かいます」

「何分くらいで来られますか?」

「40分くらいあれば・・・」

「わかりました、よろしくお願いします」

それからの記憶があまりない・・・。

すぐに店長、MGに報告して、取り合えずトイレに行った。そして、同じパートさんにもすまないとの旨を伝え、すぐに荷物を持って職場をあとにした。

ちょっとしたことで会社の人が大げさに救急車呼んだだけだろ??いやいやちょっと待て、ものすごく重症なのか??しゃべれる?意識はある?死んじゃうの??とか車の中でぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる~一周回って大丈夫じゃないかとかおかしな思考回路になっていった。でも口は乾き涙を流しながらGoogleマップを頼りに病院に向かうのだった。

地図アプリで場所を調べながら行った病院は最近新しくできた隣の県で大きな病院だった。場所がよくわからないので総合受付に行き、搬送された家族のものですと伝えると、救急の場所を教えてもらいそちらへ向かう。とにかく大きな病院はさながらRPGのダンジョンそのものである。地図で場所を確認しながら進み、扉を2つくらい抜けて救急の受付にたどり着く。

「○○(夫)の家族のものです」

「○○さんは中で処置中なので待合でお待ちください」

と言われ、書類を少し書いて、受付の人に渡す。そして救急車に一緒に乗ってきてくれた会社の方に対面する。私は深々と頭を下げ会社のお偉いさんであろう方に挨拶をする。

「主人がお世話になっております。〇〇の妻です、今日は本当にありがとうございます」

「奥様ですか?こんにちは。大変なことになってしまいびっくりしたでしょう??とりあえず座ってください」

それから会社での出来事をその上司の方に聞いたところによると、最初救急隊の人に聞いた話だとでかい鉄板で足を切ってと言っていたが、どうやら違っていたらしく、機械に挟まった薄い鉄板がはねて足を切りつけたらしいと。防犯カメラがついていたのでそれを今特定中との事。足の皮がえぐれていたという話だから夫は大丈夫なのか??と思ったが意識はあったとの事だからきっと大丈夫なはずだと。

祈る気持ちで呼ばれるのを待っていた。なかなか出てこないから処置に時間がかかっているのかもしれない、もしかしたら入院も覚悟しないとかなと思っていた。夫の両親にも連絡したりしてなんやかんやとやっていたら私がついてから1時間くらい経っていた。

そしてしばらくすると。

「○○さんのご家族の方中にどうぞ」

呼ばれた。はやる気持ちで中に行った。

「○○の家族のものです」

「こちらどうぞ」

と処置室に案内され、私は夫と再会した。処置の終わった夫はベッドに座っていて意識もしっかりしていてちょっと歩きずらかったがちゃんと歩けた。

「大丈夫?」

「あぁ、大丈夫、心配かけたね」

よかった生きてる。よかった生きてる。大事なことなので心の中で2回唱和した私。とりあえず安堵した。それから待合に移動して経緯をまた会社の人に話す夫。CT検査などしていた関係で呼ばれたのが遅かったようだ。幸い検査の結果骨折もなく出血も止まって安定しているので入院はしなくてもいいとの事で帰れることに。

(やったぁぁぁぁぁぁ~~~~←心の声)

それから受付に呼ばれる。

「え~○○様会社での事故ということで労災になるのですね。とりあえず保険証は使えないので預り金で現金で1万円お支払いをお願いします」

はにゃ??現金???

今やこのご時世、キャッシュレス会計が多いので私は大きな病院はカードで払えると思っていたから財布にあまり現金を入れてなかった。労災になるとお金が返ってくるので現金支払いがセオリーらしい。保険を使うにしろ救急車を呼んでいるので、支払いが膨大になってしまうので最初は預り金として1万円払うとかあるらしいのだ。そういえば昔事故で運ばれたときうちのお母さんも払っていたっけな?とぼんやり思い出すが後の祭りなので仕方なく私のお小遣いの財布もみて現金をかき集め何とか1万円支払いした・・・。

その後薬も出たがやはり現金支払いの為すっからかんな私のお財布だったので申し訳なく上司の方にお金を借りて支払いした。(借りたお金はその日のうちに夫が返した。)

労災だとそんな落とし穴があるのかと病院あるあるを感じながら、今度そういうことがあったら(あっては困るが)現金を下ろしていかねばと固く誓うのだった。

その後は夫と一緒に来てくれた会社の方を会社に送り届けしばらく待っていたが、手続きやらに時間がかかるそうなので一旦家に帰った。

帰ると夫の母が来てくれて話をした。

「大丈夫だったのね。ちょっと安心した。○○ちゃんはお昼食べたの?」

「あ、そう言えば食べてない・・・」

お義母さんに言われて初めて私はお昼を食べていないことに気付いた。これから食べることを伝え私は家の中に入る。病院に行くときお昼でも買って職場の方にも差し入れをすればよかったと気の利かない嫁を演出してしまったと今更気付く私であった。

冷凍の焼きおにぎりとカップ焼きそばを用意してお湯を沸かしおにぎりを温めて夕方だけどちょっと遅い昼ご飯を食べた。おにぎりとカップ焼きそばを食べながらようやく夫が生きていたことを実感して涙があふれてきた。カップ焼きそばが涙で見えなくなった。嗚咽を漏らしながら泣いた。でもお腹すいたから食べた。生きててよかった。本当に良かった。鉄板がお腹に当たらなくてよかったと。

それから娘っこが帰ってきて驚愕していた。娘にも大丈夫だということを伝えて安心させ、夫からの連絡を待つ。連絡がきたのはそれから1時間もしてからの事だった。

「何とか車運転できそうだから帰るよ」

「え?痛くないの?」

「あ、多少痛いけど運転はできそうだから」

「本当気を付けて帰ってきてね」

帰ってくるまで気が気じゃなかった。やっぱり迎えに行けばよかったかな??とか途中で事故りませんようにとかよからぬことばかりが頭をよぎってしまい心配だった。

それからしばらくして

「ただいま~」

夫が帰宅した。

「もう、会社で大目玉だったよ」

と笑いながら帰ってきた。

「もう、心配したんだから・・・」

また泣いてしまった。

「おーすまんね、心配かけたね、本当事故は紙一重だからもっと気をつけないと、ありがとう、本当ありがとう」

「生きててよかった、本当よかった」

私は再度安堵しながら夫の背中を撫でた。夫も安心したようで笑ってくれた。夫よ生きててくれてありがとう。

これが実録夫が救急搬送された日だった。もう救急搬送されないでほしいと願うあの日の私なのだった。



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