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【レポート】現場任せのOJTの課題とキャリア自律:2024年12月24日公開

労働政策研究・研修機構の藤本真さんが、リクルートワークス研究所さんが実施した「Global Career Survey」を解説されているレポートが興味深いです。職場での能力開発やキャリア自律について考えさせられました。

日本企業のOJTは現場任せ

まず興味深いと感じたのは日本のOJTは現場任せというご指摘です。少し長いですが、大変鋭いご指摘なのでそのまま引用します。

私はもともと、日本の「OJT」と呼ばれるものは多くの場合「OJL(On the Job Learning=自分でやりながら覚える)」だと思っているんですが、この調査結果でも、「プログラム」「トレーニング」といった文言が選択肢に入ると回答率が落ちていて、非常に納得するものがありました。教育プログラムに基づかないということはつまり、職場任せになっているということであり、その結果私が著書で示したように、職場管理職の時間不足やノウハウ不足が個々の社員の能力開発に大きく影響していると考えられます。

このご指摘は納得しつつ、反省しながら読みました。本社人事部門にいると、ビジネスの状況や個人の状態性は多種多様なので、現場での育成に任せがちです。もちろん、個別型の育成そのものが悪いとは思いませんが、必要なプログラムを本社人事がいかに用意し、それらが結果的にあるタイミングでどこまで身につけられたのかをモニターする、といったガバナンス機能が弱いというのはその通りだと思います。

キャリア自律の「逆機能」

こうした現場任せの状態において、キャリアを個人が現場で自律的に開発するというキャリア自律という考え方が広まることで、本来のキャリア自律が果たす順機能とは異なる「逆機能」が生じることが考えられます。著者の以下の指摘にも十分に意識することが必要でしょう。

能力の評価が処遇とどう結びつくのかについてしっかりした認識がない状態で長年やってきて、昨今いきなり「キャリア自律しろ」「リスキリングをやれ」とあおられているのですから、不安になるのも当然という気がします。

本人も不安になりますが、それとともに上司や育成担当者としてもどのように対応すれば良いかわからず放置になってしまう、という最悪の事態になりかねません。

企業/人事がガバナンスを効かせる

こうした最悪の事態を防ぐためには、現場を尊重しつつも、企業あるいは人事が主体的に取り組むことが必要なのでしょう。

分権化が進んだとしても、人事としての責任というものは残ります。現場との関係において、「あなたたちが働きやすいように、仕事の中で成長できるように、そして働きぶりや成長を組織としての成果に必ずつなげていくように企業や人事が請け負うから、そこは心配せずにやってほしい」と整理することはできるのではないかと思うんです。それを放置してしまうと、職場管理職の負荷は限界に達し、社員個々人の面倒を見切れなくなり、結果、社員が孤立したり、さらに大きな不安をかかえたりして、能力開発への意欲を失ってしまうことになるでしょう。

現場での変化に即応的に対応するためには、個別的な対応が求められる場面は今後も増えるでしょう。しかしながら育成を現場任せという名で放置し人事が責任逃れをするのではなく、企業や人事がガバナンスを効かせることで職場の能力開発と個人のキャリア開発を支援するということが大事になるのではないでしょうか。

最後まで目を通していただき、ありがとうございました!


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