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【論文レビュー】日本企業におけるキャリア・アダプタビリティの特徴:益田(2009)

本論文は、日本企業におけるキャリア・アダプタビリティの実証研究であり、非常に示唆的な内容でした。

益田勉. (2009). キャリア・アダプタビリティと組織内キャリア発達. 人間科学研究, 30, 67-78.

キャリアにおける適応能力とは?

変化の激しい時代においては、典型的なライフやキャリアを想定することは難しいものです。そのため、変化する環境に対して適応することが重視され、キャリアにおけるアダプタビリティ(適応)が重視されるようになりました。

プロティアンキャリアで有名なHallもアダプタビリティを述べており、Savickasもまたキャリア・アダプタビリティを提唱しています。両者の違いに関して著者は考察をしており、端的に言えば、Hallは内的適応を表すものをアイデンティティとして外的適応を表すアダプタビリティとを峻別していますが、Savickasは両者を含めて適応能力としてキャリア・アダプタビリティを捉えています

Savickasのこのアプローチの背景としては、キャリア・アダプタビリティを含めたキャリア構築理論(Career Construction Theory)が社会構成主義をメタ理論としていることにあります。他者や社会と個人との相互作用によって現実が生成されるとする社会構成主義の観点に立ち、内的適応と外的適応とを峻別せずに捉えているということなのでしょう。

キャリア・アダプタビリティについては以前まとめました。

日本企業でのキャリア・アダプタビリティの特徴

キャリア・アダプタビリティの質問紙としてはSavickas & Porfeli(2012)が現在では主流です。ただ、本論文はそれ以前のものですので、Savickas(2002)、Krumboltz(1999)、渡辺・黒川(2002)を基に質問紙を構成し、因子分析の結果としてSavickas(1997)以降のキャリア・アダプタビリティの四つの因子(自信・関心・コントロール・好奇心)が検証しています。

四つの因子を基にクラスタ分析を行い、四つのキャリア・ステージとして明らかにしている点が非常に示唆的です。

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それぞれのクラスタの年齢における出現数がこちらです。

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【1型】変化に直面して立ち止まってしまっている

キャリア・アダプタビリティの全ての尺度が低い水準にとどまっているタイプです。各年齢において見られますが、46歳以降の群で比率が上がっているのはキャリアに関する諦めを表していると言えそうです。

【2型】確立・維持期

コントロール因子を除く他の三つの尺度が全て最も高いタイプです。キャリアに関する過去の実績に自信を持ち、今後についても計画的に進める特徴を有しており、30代から増えて36歳以降から高く頻出するようになります。

【3型】転換期認識を伴う探索期

コントロール因子は最も高いものの自信因子の低さが好対照のタイプです。実績に関する認識は低い一方で、自身の意志と責任でキャリアを形成しようとします。45歳まではそれなりに高い比率でありながら、その後は減少していきます。

【4型】転換期認識を伴わない探索期

関心因子の低さと好奇心因子の高さが好対照のタイプです。若い年齢においてのみ高い比率であることから、計画的な取り組みというよりも見通しの効かない環境の中での試行錯誤によってチャンスを掴もうとする特徴と言えます。

日本企業で働く社員のキャリア・アダプタビリティに関する実証研究から学ぶことは多かったです。もう少し日本語の論文も含めて読んでみようと思いました。


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