【応用篇】キャリア・アダプタビリティはどのように活用できるのか!?
今日も先日の組織行動論勉強会の発表内容のまとめです。昨日は、マーク・サビカスのキャリア構築理論とその主な概念であるキャリア・アダプタビリティについてざっくりと基本的な内容を書いてみました。今日は、キャリア・アダプタビリティを何によって測定するのか、何によって影響を受けて何に対して影響を与えるのか、といった活用のあり方に関するいくつかの論文をレビューします。
※昨日のブログはこちら↓
キャリア・アダプタビリティを測定する
キャリア・アダプタビリティを測る尺度開発はいくつか行われているようですが、サビカスが共同で開発したものが2021年現在では定着しているようです。論文は以下となります。
Savickas, M. L., & Porfeli, E. J. (2012). Career Adapt-Abilities Scale- Construction, reliability, and measurement equivalence across 13 countries. Journal of vocational behavior, 80(3), 661-673.
昨日も解説した四つのC(「かとうこうじ」と覚えるやつです。笑)のそれぞれに六つの設問がついた計24設問となっています。
①Concern(関心):自身の将来に向けた関心
②Control(統制):将来に向けた準備のために統制すること
③Curiosity (好奇心):将来可能なシナリオを探索すること
④Confidence(自信):自身の将来展望を探究する自信
尺度はCAAS(Career Adapt-Abilities Scale)と呼ばれていて、訳出していない状態ですが、24設問はこちら↓。
サビカス先生たちは2012年の論文で設問を設計しただけではなく、キャリア・アダプタビリティは後天的に開発可能だとしている点が重要です。
影響関係
何が影響を与えていて、何に影響を与えているのか、というキャリア・アダプタビリィを取り巻く影響関係について、90本の論文のメタ分析によって明らかにしているのが以下のレビュー論文です。
Rudolph, C. W., Lavigne, K. N., & Zacher, H. (2017). Career adaptability- A meta-analysis of relationships with measures of adaptivity, adapting responses, and adaptation results. Journal of Vocational Behavior, 98, 17-34.
全体像の図は以下の通りです。キャリア・アダプタビリティは左から二番目の真ん中の上の箱です。
上図だけですとわけわからん感じがするかもなので、直訳風でごめんなさいですが、それぞれの箱について簡単にまとめます。
①Adaptivity:影響を与えるもの
後天的に開発がなかなかできない心理的特性が挙げられています。特定の行動をとる上で影響を与えるものには幼少期に形成される特性もやはり影響を与えるということですね。
②Adaptive Responses:影響を受けるもの&結果に媒介するもの
変化に適応するための行動の実行に関するものです。キャリアに関する計画・探索・意思決定といったものが該当しています。
③Adapting Results:影響を受けるもの
適応行動の結果変数です。いろんなポジティヴなものへの影響がありますが、面白いのは規範的コミットメントと継続的コミットメントに影響がないという点です。つまり、一口に組織コミットメントと言っても、情緒的コミットメントには影響がありますが、他の二つには影響がないんですねー。組織コミットメントを三つの次元で捉えるメリットは以下をどうぞ。
レビュー論文までは読んでみたものの、2017年以降も研究が蓄積されている領域ですので、今後も読んでいきたいなと思ってます。
質疑応答で印象に残ったこと
キャリア構築理論の内容からすると、サビカスはプラグマティストだよね!という中原先生のご指摘が印象的でした。たしかに、キャリア・アダプタビリティは量的に把握するものでありながら、キャリアテーマは言葉による語りから構築する質的なものです。
その後のディスカッションでも話題になり、私が理解した限りで言えば、キャリア構築理論は質をベースとしながら、キャリア・アダプタビリティやホランドの六角形を語りのきっかけとして量も用いているというプラグマティックなものなのでしょう。
プラグマティズムについてはざっくりと以下の通りです。
今後は、量的アプローチによる実証研究をスタディするだけではなく、質的アプローチの先行研究もスタディしてみたいなと思っております。