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【読書メモ】『パラドックス思考』(舘野泰一 ・安斎勇樹著)〜理論編〜

物心がついた頃から、社会は変化が激しく複雑で難しいと言われ続けてきました。広く人口に膾炙したVUCAについて本書では、V(Volatility)とU(Uncertainty)を「未来のわからなさ」、C(Complexity)とA(Ambiguity)を「現在のわからなさ」と簡潔な表現でまとめています。二つのわからなさに対応する鍵概念としてパラドックスに焦点を当てて書かれています。面白すぎて、感想を書いていたら長くなったので、今回は第1章から第4章の理論編について書きます。

感情パラドックスを受け容れる

パラドックスには、客観性に関する論理パラドックスと人の気持ちや主観性に関する感情パラドックスの二つがあるとしています。本書では、このうちの感情パラドックスに焦点を当てて書かれています。

興味深いと感じたのは、この感情パラドックスを著者たちは否定的に捉えていないという点です。人は感情パラドックスを抱えて生きるものであり、「「めんどくさいけれど愛らしい特徴」として受容する」(54頁)ものとして捉えている点です。このような発想の転換だけでも、心がすっと楽になる気持ちになります。

パラドックス思考の三つのレベル

では、感情パラドックスを受容した後に私たちはどのようにパラドックスに向き合うと良いのでしょうか。本書では、受容・編集・利用という言葉を用いて、以下のように三つのレベルで捉えています。

【レベル1】
感情パラドックスを受容して、悩みを緩和する
【レベル2】
感情パラドックスを編集して、問題の解決策を見つける
【レベル3】
感情パラドックスを利用して、創造性を最大限に高める
61頁

感情パラドックスをネガティヴに捉えるのではなく、自身の内なるパラドックスに気づいて、むしろそれらを用いて創造性の発揮に繋げるという考え方が提示されています。私がこのようにまとめ的に書いてしまうときれいごとに捉えられてしまうかもしれませんが、本書では「あるある!」と思える例示がふんだんに用いられていて、共感できる状況から噛み締められるので、ご関心のある方はぜひ例示をよくお読みになってみてください。

個人的に思ったこと

本書を読んでいて思ったことは、ナラティヴ・アプローチと近い考え方なのかもという点です。研究の関係上、ナラティヴを用いているサビカスのキャリア構築理論をよく読むからだと思うのですが、個人のライフキャリアという観点で考えると近しいと感じました。

たとえばサビカスさんのキャリア構築(構成)理論では語りナラティヴを以下のように述べています(と私は理解しています)。

キャリア論にも通ずるところが多くて、実践編もたのしみです!字数が長くなっているので今日はここまでにして、明日、新たなnoteでアップします。


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