【論文レビュー】学校から職場への移行で起きるリアリティ・ショックは何に影響するのか?: Caliskan & Ergun(2012)
組織行動論の領域の先行研究を修士時代に行い始めた当初驚いたのは、看護領域での研究蓄積が非常に多いという点です。海外でもそうですし、日本でも同様の傾向のように感じます。本論文は、トルコの医療機関で働く若手の看護師を対象として、学校から職場へ移行したばかりの際に感じるリアリティ・ショックに関する調査を行っています。
全体像
本論文では、職務満足、感情疲弊(燃え尽き)、離人症傾向、個人的達成感、とリアリティ・ショックとの関連を見ています。全体像を示した分析閣下は以下のとおりです。
リアリティ・ショックをどこから受けるのかという起点について、本論文では二つのものを対象としています。一つは学校機関で、もう一つは職場の教育機関です。上の表は、それぞれのリアリティ・ショックごとに影響しているものが違うということを示しています。
学校機関の影響
表の左列を見てみます。学校機関からのリアリティ・ショックは職務満足に影響を与えていることがわかります。リアリティ・ショックが高いと職務満足が低いというネガティヴな影響関係があることが、5%水準で有意であるとしています。
職場での教育機関の影響
他方、表の右列にある職場での教育機関からのリアリティ・ショックはいくつかの影響関係があることが明らかになっています。
第一に、学校機関からのリアリティ・ショックと同様に職務満足にネガティヴな影響を与えています。これは、1%水準での有意差があるとしています。
第二に、燃え尽きに対しても1%水準で有意であるとしていて、職務満足よりも大きい値であることがレポートされています。リアリティ・ショックが燃え尽きにより影響を与えるというのは、職場にとって大きな課題であるということも意味しています。
第三に、個人的達成感に対して5%水準でネガティヴに影響を与えることもわかりました。
専門職のリアリティ・ショック!?
看護師を対象とした研究といっても、看護師以外の領域と必ずしも無縁というわけではありません。たとえば、看護師とは専門職の一つであり、また入社2年以内という対象から若手社員と捉えることもできます。このように考えれば、専門職や若手社員が感じるリアリティ・ショックとして推察することもできるかもしれませんね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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