【論文レビュー】職務経験期間が短くて自己効力感が低い人ほどキャリア・アダプタビリティは大事!?:Jiang et al.(2018)
先行研究では、キャリア・アダプタビリティ(以下CA)は職務停滞感(job content plateau)に逆相関する(例:CAが弱い人ほど仕事に停滞感を感じる)と言われていました。本論文では、その逆相関の関係性に職務経験期間が調整効果を有する(例:職務経験期間が長いと逆相関関係が強くなる)ことと、自己効力感が職務経験年数によるCAから職務停滞感への調整効果を調整する(例:自己効力感が低くて職務経験期間が長い人ほど、CAと職務停滞感の逆相関関係が強くなる)ことが明らかになっています。
ここまでごちゃっと書くとわかりづらいと思うので、①職務経験期間による調整効果と、②自己効力感による調整効果について、分けて書きます。
その前にまず全体感を著者たちは図示しているので以下を見取り図として頭に置いておいてください。
①職務経験期間による調整効果
まず、先行研究によりますと、CAは職務停滞感と逆相関関係にあるようです。CAとは環境やキャリアの変化に対する適応能力であり、ざっくり言えば変化対応能力のようなものです。したがって、CAが高い人であるほど、日々の仕事の中でも変化に機敏で自ら変化を創り出そうとするために停滞感を感じづらい、というのは直観的にもわかりやすいでしょう。
で、職務の経験の長さが両者の逆相関関係を強化する(調整する)ということを本論文では明らかにしています。一つの職務の経験期間が長くなれば、職務に対する慣れから停滞感を感じやすくなるものでしょう。つまり、職務の経験期間が長くなる時ほどCAが職務停滞感に影響する度合いが高くなるというわけです。
②自己効力感による調整効果
さらに、この職務経験期間がCA→職務停滞感への影響するという関係性に、自己効力感も調整効果を持つと結論づけています。調整効果が二つ被ってくると文字で考えるとわかりづらいので、上に引用した関係図で理解すればわかりやすいでしょう。
それでも文字でも補足すれば、自己効力感が高い場合には、職務経験期間がCA→職務停滞感へ影響する度合いをコントロールしやすいのけれど、反対に低い場合にはコントロールできづらく困難な事態になりますよ、ということなんです。実務的には「まあ、そんなもんじゃない」という気もしますが、定量で押さえてくれていると研究する身としてはありがたい論文です。