【読書メモ】『パラドックス思考』(舘野泰一 ・安斎勇樹著)〜実践編〜
本書の第5章以降は、前半の理論編を踏まえた実践編です。具体的かつ示唆に富んだ事例に溢れていて必読の箇所です。特に興味深く感じた、感情パラドックスに気づくためのセルフチェック、キャリアに変化を創り出すヒントの二点について触れて、個人的に妄想したジョブ・クラフティングとのつながりを最後に少しだけ書いてみます。
理論編についての所感は以下のブログにまとめています。
感情パラドックスに自身で気づくために。
人によっては、「私は感情パラドックスを感じることがないです」という方もいるかもしれません。もちろん、感情パラドックスがない方も世の中にはいるのでしょうが、おそらくほとんどの方はなんらかの感情パラドックスを感じるのではないでしょうか。
ただ著者たちによれば、感情パラドックスは個人の奥底にあるコンプレックスと紐づいていることも多いようです。そのため、隠れた感情に気づけないことも多く生じます。本書では、この隠れた感情を発掘するためのセルフチェックとして次の六つを挙げています。
本書ではそれぞれの点について具体的な例示や丁寧な解説がなされているのでぜひご関心のある方は中身をお読みになってみてください。自分には感情パラドックスはないと思っている人が、こっそり自分でチェックできる素晴らしいチェック項目だと思います。
キャリアに創造的な変化を生み出す
パラドックス思考を用いるとキャリアにも活用できると著者たちはしています。キャリア論を研究している身として大変興味ある指摘でした。というのも、キャリア自律が定着しない日本企業のビジネスパーソンにとって、現実的な処方箋を提供してくれていると思えるからです。
伝統的な日本の大企業では、それなりの処遇が得られるために自身のキャリア開発に責任感を持って取り組む意識と行動が弱い傾向があります。そのため、社外への意識だけではなく社内でのキャリア開発についても積極的に動けず、キャリアが停滞してしまうことも多いでしょう。本書では、キャリアのマンネリ化を打破するためのヒントとして以下の四つが提示されています。
上記の①〜④についても詳しくかつ具体的にポイントが紹介されているので、気になる方はぜひ書籍を読んでみてください。
ジョブ・クラフティングにも通じる!?
キャリアのマンネリ化を打破するためのヒントの「②仕事の目的と手段の関係性を逆転させる」は、ジョブ・クラフティングに通じると感じました。仕事の目的は基本的には組織視点でのものになります。他方で手段については、ある程度は個人がハンドルできるものでしょう。
この目的と手段の関係性を逆転させるということは、個人視点で仕事を捉え直すということを意味するのではないでしょうか。これは、職務を個人の創意工夫で創り込むということであり、ジョブ・クラフティングによって自身のキャリアに変化を加えるということになるように感じます。この辺のことは立教の修論で書いたことなので、我田引水感がスゴイので話半分に聞いてくださいませ。