【論文レビュー】キャリア・アダプタビリティは年収アップには関係ないそうです:Haenggli & Hirschi(2020)
本論文は、キャリア・アダプタビリティをはじめとしたキャリアリソース(資源)が何から影響を受けて何に影響を与えるのかを明らかにしています。ポイントは、それぞれのリソースによって影響するものが異なるので、相手が何をもってキャリアをうまく進められたと捉えるか(career success)によって支援のあり方は異なりますよ、という点です。
著者たちは量的調査を行い、自己効力感や楽観性からどのような影響を受け、主観的なキャリアの成功や客観的なキャリアの成功にどのように与えたのかを明らかにしています。論文内の以下の図に端的に表れているのでご参照ください。
キャリア・アダプタビリティに特化して見てみますと、影響を与えているのは楽観性です。環境変化や将来に対する楽観的な態度が重要であるということなのでしょう。
なんと言っても面白いのは、客観的なキャリアの成功に対してネガティヴな影響を与えることが有意に出ている点です。要は、年収アップや昇進昇格といったものにキャリア・アダプタビリティは関係しないと本論文では言っています。客観的なキャリアの成功に影響するのは知識やスキルであり、職務経歴が年収に影響すると考えれば、感覚的には理解できるように思えます。
キャリア・アダプタビリティは、統計的有意差はないものの主観的なキャリアの成功に影響の可能性が示唆されています。著者たちも述べていますが、サビカスのキャリア構築理論のhowに当たるものがキャリア・アダプタビリティなので主観的な内容への影響があるのでしょう。