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【読書メモ】働く個人のキャリア志向性のタイプと、組織との適合度合いは、意欲や業績に影響するのか?:『キャリア・オリエンテーション』(坂爪洋美著)
キャリア・オリエンテーションを測定するための尺度開発と、尺度を活用して組織からの支援の認知、内発的動機付け、職務パフォーマンスにどのように影響するのかについて調査・分析・考察された章を中心にまとめてみます。
キャリア適性尺度
本書での第5章ではキャリア適性尺度の開発と因子分析による因子妥当性の検証がなされています。その結果、五因子構造(上昇、保証、挑戦、自由、バランス)でそれぞれの因子に七つの質問項目がある35設問の妥当性が検証されたとしています。
この尺度を用いて、キャリア適性を説明変数に置き、主観的指標と客観的指標を目的変数として設定し、両者の関係性を分析・考察している第6章がとても興味深いです。主観的指標としては組織サポートと内発的動機付けとの関連について、客観的指標については業績評価との関連について分析を行っています。
組織サポート
本研究における組織サポートは、Eisenberger et al.(1986)を参照して改変したとの記述があるので、POS(Perceived Organizational Support)を測定していると言えます。
調査分析の結果としては、キャリア適性が組織と適合している個人は組織からの支援を受けていると認識する傾向が高まることがわかりました。つまり、組織に対してポジティヴな情緒的反応が高まるということが考えられます。
内発的動機付け
組織からの支援の認識が高まる一方で、働く社員の内発的動機付けに影響するという関係性は見出せませんでした。組織に対する感情が良好なものになっても、意欲的に働くようになるとは限らない、ということです。
業績評価
キャリア適性の組織との適合度合いと業績評価との関係はやや複雑です。まず、キャリア適性の下位次元の中の「自由」に関して組織との適合度合いが高いことと業績評価の高さとの相関関係が明らかになっています。働く個人が「自由」に職務に対して取り組めることを、組織とアライン取れている場合には職務のパフォーマンスが高まるということなのでしょう。
次に、「上昇」と「挑戦」については、組織との適合度合いは関係なく業績評価の高さとの関係が有意に見出せたとしています。組織の中でのポジションや報酬をあげることを志向していたり、職務の中で挑戦したい欲求が強いタイプは、組織とのアラインメントは関係なく職務パフォーマンスを高めようとするということと読み取れます。
おまけ
キャリア・オリエンテーションという概念は、基本的には現在所属する組織に対するキャリアの志向性を示すものであるということを改めて理解しました。組織内という前提を取り払ったキャリアの志向性を測るためには、プロティアン・キャリア志向やバウンダリーレス・キャリア志向といった尺度を使うのが良いようです。