見出し画像

心が乱れる理由を知っておく

こんにちは、産婦人科医の高尾美穂です。

先日、「女性ホルモンとメンタルヘルス」という講座を担当しました。

この講座は4〜5時間の講座ですが、このような長時間にわたる講座を最後にしようと決めたのが去年の秋ぐらいのことで、予定を立てていた今回の講座が最後となりました。

今まで8年間にわたり、このような講座を1000回ほど担当しました。

オンラインに切り替わってからもリアルタイムで皆さんの質問にお答えしながら、この4〜5時間の講座を続けてきましたが、最終回ということで、今までに繰り返しご参加くださった方も、最終回だからと初めて参加くださった方も、リアルボイスで出会い、お嬢さんのために自分が勉強したいという姿勢でご参加くださった方もおられ、メンタルヘルスというのはこれからの日本の社会や世界においても非常に求められていくテーマなのだろうということを改めて感じました。

心が安定した状態で過ごしていくためにどんなことを知っておいたらいいのか、その中でも特に女性が揺さぶられるホルモンとの関係性については、ある程度はっきり言えることがあるのではないかというようなお話でした。

また皆さんと一緒に良いメンタルヘルスについて考える機会を持てればなんて思ったりもしております。

今日もいただいたレターを一つご紹介させていただきます。

高尾先生こんばんは。

今日は職場やコミュニティなどで人に自分が伝えたいことがある時、またはこういう提案があるなどを伝えたい時の自分のメンタルの持ち方について相談したいと思います。

私は40歳後半の女性です。

このような時、大体難色を示して言いたがる人が必ずいるのですが、そのような人を前にすると、伝えたい内容はしっかりあるのに身構えてしまい、声のトーンが緊張気味になってしまったり、うまく言えなかったりします。

これは完全にメンタルの持っていき方で失敗しています。

私の義理の母は相手が逆上して話してくるとびっくりはするけれどそのうち逆に気持ちがさっと冷めてきて淡々と相手に話せると言っていました。

私はちゃんと伝えられるのだろうかと考え過ぎて力が入り過ぎてしまいます。

もっと自分の気持ちを楽に持っていけたらいいと思うのですが、先生はそのような時どのように気持ちを持っていって、どのような精神状態で相手とお話しされますか。

アドバイスいただけたらすぐにはできなくても、私もイメージして真似をしたいなと思います。よろしくお願いします。


ご相談いただいた場面は、皆さんも想像できますよね。

自分が良いと思う提案についてお話したいのに、それに対して大抵難癖をつけてくる人がいて、そういった際においてちょっとだけ自分が緊張して声が上擦ったりするという方なんだろうと思います。

こういう状況においては、話を受け取る側の方達がどんな気持ちや心持ちになるのかということをちょっとだけ想像しておくといいのではないかと思います。


私たちの心が乱れる状況とは


まず心が揺さぶられる、心が乱れる理由になり得るような出来事にはどんなきっかけがあるのか。

心が揺さぶられる、かき乱される状態が生まれ得る状況として、まず一つ目に自分が知らなかったことでしょうか。

言葉で言うと無知みたいな言葉になりますが、その状況つまり例えば新しく決まりが出来たのに、それについて知らなかったや、今だと、このコロナの状況の中でどんどん移り変わっていく物事をキャッチアップできていなかったなど、こういった時というのは私たちの心が揺さぶられるというのは間違いないわけです。

つまり、今回のレターのケースにおいては、この方が提案しようと思っていることを相手があまりよく分かっていない内容の時、その時は何となく向こうにもちょっと反対したいという気持ちが生まれてもおかしくないと思います。

知らないような話や十分に状況を把握できていないことだからこそ相手の心が乱れるということを予めイメージしておくと良いのではないかと思います。

二つ目に理由になり得ることを考えてみた時に、自分が望んでいることと違う状況が生まれそうな時というのもあると思います。

例えばルールが既に走っているとして、それを変えたいというような話の時、自分がそのルールに特段困っていないのであれば、変えなくて良いという思いになると思います。

つまり、自分が望む状況と違う状況が生まれそうな時も心が乱れたりするわけです。

相手が望んでいない可能性も頭の隅に置いておくことができると、相手がそういう反応するかもしれないと想像しながらお話を続けることができるわけです。

そして三つ目に理由になり得ることとして、相手にその提案自体を拒否したい、できればその状況を避けたいと思うような嫌悪感などがある場合には、相手の心を乱す、心を揺さぶることになり得ると思います。

そしてもう一つが、皆さんもよくあることではないかと思いますが、分からない、先が見えないから怖い、恐ろしいという気持ち、恐怖です。

この恐怖は、言葉にしてみるととても大袈裟に思えるかもしれませんが、私たちにとってよく分かっていないことというのは、少しだけ恐ろしいという気持ちがあってもおかしくないと思います。

そのため、この方がいいと思っている提案をされたとしても、その状況になってみないと分からないことがあるという部分に関しては、ちょっとだけ恐怖心が生まれてもおかしくないということだったりします。


より良い状況を生むために準備できること


このようなことが相手の心を揺さぶる、かき乱する理由になり得るということを、想像しながら相手に提案をすると良いと思います。

何か新しいことを提案するということは、世の中的には既に動いている物事に対して一石を投じるというような状況です。

となれば当然、今の状況を変えたくない、嫌だ、怖いなどという気持ちが相手から生まれたっておかしくないし、それもあり得ると思いながら話を続けることができれば、私たちがそこで敢えて緊張してしまうこともないので、相手の反応自体を予想しておくと良いのではないかと思います。

何かを提案する際、提案する側の方が立場が強いと言えます。

提案される側の方からすると、いきなり提案され、突然のことなんです。

そのため、相手の方が心乱されたとしてもおかしくありません。

そう考えると、自分の提案をを受け入れてもらえるかもらえないかは別として、その相手の心が乱れている状態に対して私たちの心を乱すこともないはずです。

そして、どんな反応があったとしても、こういう反応が返ってきたというぐらいの受け取り方をしていつも通りお話をされると良いのではないかと思います。

とはいえ、私たちの心というのは、なかなかコントロールすることができないということはきっと皆さんもイメージされている通りだと思います。

心のコントロールが難しい、なのでコントロールできる部分に目を向けてみる。

例えばヨガであれば、毎日の練習や、動きの積み重ねによって、自分の体がコントロールできるようになり、そのうち呼吸がコントロールできるようになり、その次に感覚が制御できるようになって、いずれ心もコントロールできるといいというようなイメージです。

心をコントロールすることは本当に難しいことです。

しかし、突然起こる出来事に対しての心のコントロールは確かに難しいかもしれませんが、起こり得る可能性があることを予想しておけばもしかすると、今これが起こってるのかもしれないというような冷静な捉え方ができるのではないかと思います。

ただやはり、コミュニケーションは相手があってのものです。

人に対する緊張感というのは、当然相手にも伝わります。

そういった状態で良いコミュニケーションはできないと思うので、できれば自分自身もリラックスした状態で、相手に受け入れてもらいやすい言葉を選んで伝えるということが必要になってくるでしょう。

そのためには、そもそもの日常的なコミュニケションが大切で、ある程度その雑談の中でも大事なことを伝えられるぐらいの関係性を作っておくのが良いのかもしれません。

肩肘張った状態で、これは伝えなきゃと伝えることも必要かもしれませんが、良いコミュニケーションや信頼関係の中で、この人が言うんだったらまあそうだよねと思えるような関係性を気付いておくというのが、自分にとって楽な状況を生むのではないかと思います。

ことなかれ主義の私は、できれば角が立たないようなコミュニケーションが望ましいだろうと思っています。
言わない方よいだろうと思う言葉を、自分で飲み込めるかどうかというのも、一つのコミュニケーションです。

自分がその言葉を発しないという選択し、代わりに受け入れてもらいやすいような言葉を選ぶ、それが明日からの良いコミュニケーションに繋がる。

皆さんの日常的なコミュニケーションについて、ちょっとだけ振り返るきっかけにしていただけると幸いです。



いいなと思ったら応援しよう!

産婦人科医 高尾 美穂
皆さんからの温かいサポートはすべて「保護ねこ活動の支援」に使わせて頂きます。 いつもご声援有難うございます。