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消えない罪

賞レース向きの作品を中心にNetflix映画が秋から年末にかけてミニシアターやイオンシネマなどで限定上映されるのが恒例行事となっていて、それを楽しみにしている映画ファンも多い。

でも、正直なところ今年のラインナップは微妙だ。その理由は映画賞レースが盛り上がっていないからだと思う。

前年度のアカデミー賞がコロナの影響でエントリー資格を得ることができる作品の対象となる公開時期を通常のその年の1月から12月までではなく、1月から翌年2月までにしてしまったことにより、今年度の対象期間が通常より2ヵ月も減ってしまい、その結果、エントリー資格を持つ作品が例年より少なく、水で薄めたようなものになっているというのもあるのではないかと思う。

しかし、それ以上に大きな要因となっているのは、ポリコレ路線の作品ばかりを評価する最近の賞レースに一般の映画ファンが興味を失っているということなのではないかと思う。

去年の秋から年末にかけて劇場上映されたネトフリ映画5本はどれも賞レース向きの作品だった。個人的にはいずれも作品賞にノミネートされるポテンシャルはあったと思う。

でも、ノミネートされたのはBlack Lives Matterのムーブメントに連なるテーマを持った「シカゴ7裁判」と実話をもとにした映画業界ものの「Mank」だけだった。
「ヒルビリー・エレジー」は90年代の民主党政権時代を“悪夢”(米国の話です)のように描いていると思われてしまったことから、ポリコレ・リベラル思想に洗脳された米エンタメ界では酷評されてしまった。
また、「ザ・プロム」は多様性を描いた作品なのに、“悪役”が女性でしかも黒人であることから、やはり、無視状態に近い扱いになってしまった。
「ミッドナイト・スカイ」は白人中年男性が出ずっぱりだから、ポリコレ脳の連中からすれば、それだけで駄作になってしまうのだろう。

ネトフリ映画ではないが、「ファーザー」のアンソニー・ホプキンスがアカデミー主演男優賞を受賞した際にブーブー文句を言う連中が多かったのは、白人で男性でしかも高齢者が受賞したからだしね。

そんな流れを意識したせいで、今年のネトフリ映画の限定上映作品は例年よりも多い7本が選ばれているにもかかわらず、あまりにもポリコレを意識した作品ばかりで、“うーん”って感じがしてしまうんだよね。

去年の「シカゴ7裁判」はいかにも、ポリコレ・リベラル的なテーマを扱ってはいるけれど、かなり笑えたから、そんなに気にはならないが、今年のラインナップを見るとね…。

現時点で上映済みのものは以下の通りだ(日本オリジナル作品は除く)。

「THE GUILTY」黒人監督作品
「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール」黒人監督作品
「チック、チック…ブーン!」ヒスパニック系監督作品
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」女性監督作品
「消えない罪」(本作)女性監督作品

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」はアカデミー作品賞ノミネートは確実だと思うし、「チック、チック…ブーン!」は(賞自体の閉鎖性に対する批判はさておき)ゴールデン・グローブ賞のミュージカル・コメディ部門作品賞にはノミネートされる可能性が高いと思う。

「THE GUILTY」や「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール」は作品賞や監督賞のノミネートはないと思うが(演技部門は可能性あり)、娯楽映画としては十分に合格点に達していたと思う。

でも、あまりにも監督の属性で作品を選びすぎでしょ。

本作に続いて次週上映される「Hand of God」はイタリア映画だし、本当、ポリコレ路線のラインナップばかりだと思う。
唯一、最後に登場するオールスター映画「ドント・ルック・アップ」だけが、かろうじて、監督も主演も英語圏の白人男性の作品だ。

ネトフリに限らず、どこの映画会社もこうした作品で賞レースに参戦しているんだから、そりゃ、一般の映画ファンが映画賞レースに興味を持たなくなるのは当然だと思う。

でも、いずれの作品も良作であることは間違いないんだよね。

本作も確実に賞レースを賑わせる作品になると思うし、サンドラ・ブロックのアカデミー主演女優賞ノミネートはほぼ確実だと思う。本当、素晴らしい演技を披露している!

ただ、本作で彼女が演じた役って何歳なんだ?
彼女の実年齢は50代後半だが、本作における彼女はやつれたオバサン感は出ていても、そこまでの年齢という設定には見えない。
また、20年前のシーンも出てきて彼女が演じているが、学校にはきちんと行けなかったと言及されていたので女子大生とか女子高生でないことは確かだが、そこまで若くは見えない。
でも、妹は20年前のシーンで5歳。つまり、現在のシーンでは25歳ってことでしょ。一体、何歳差の姉妹なんだ?

ところで、最近、罪を犯した者は一生、贖罪しなくてはいけないのか?人権は一生、剥奪されたままなのか?みたいなテーマを取り扱った映画やドラマを見かけることが多い。

個人的には一生償うべきだと思うし、ましてや、不特定多数の人間に被害を与えたヤクザとか詐欺師なんていう連中には人権なんて与えなくていいと思っている。

でも、本作の主人公に関しては再起のチャンスを与えてあげるべきだと思える理由がきちんとあるんだよね。

「すばらしき世界」とか「ヤクザと家族」みたいなヤクザ擁護のクソ映画を作った連中は本作の爪のアカでも煎じて飲んでくれ!

まぁ、主人公以外にも、妹や彼女を引き受けた家族、主人公によって家族を失ったとされる家族、主人公がかつて住んでいた家に現在住んでいる家族、主人公が出所後働いている職場の人々、保護観察官といった具合に、地味な映画にしては登場人物が若干多いような気はしたが、良作だとは思う。

《追記》
TLCの“ノー・スクラブス”を妹がピアノで弾くシーン面白かった!
作中の現在がいつかは知らないが、妹が姉と暮らしていた頃に耳にしていた曲って設定なのかな?

もう一つ《追記》
水没したガラケー、いつ直ったんだ?というか直す金はあるのか?水産工場も、ホームレス施設の建築もフルタイムでやっているようには見えないし…。

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