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【一生上手くなる?】日本の舞踊、盆踊りは、老いるほど魅力的な最強の踊り!?



美意識は、その社会の価値観や通念と密接に繋がっている。舞踊やダンスも然り。

日本の舞踊は、年長者が尊敬される家元制度によって、長い伝統が統制と維持、踏襲されてきた。血縁関係並みに強く師弟は結びつき、日常生活から芸の全てまで影響が及ぶ。そのため、修行を経て訓練された老いる身体は高く評価される。円熟した踊り手は人生についての多くの経験が舞踊に吹き込まれるとされる。

西洋の、若く美しい能力の高い身体を美とするバレエやモダンダンスとは対照的な考え方。


老いの踊りを実践した、先駆者たち


⭐︎世阿弥風姿花伝は、老いと芸の円熟について述べた、歴史的にも貴重な早い時代の資料。

舞踊をする者として、それぞれの年代での理想の踊りについて細やかに述べている。

若い演者は時分の花を持つが、まことの花は老いていく演者にこそ残るものだとしている。


⭐︎舞踏家の大野一雄は、1980年に国際演劇祭に73歳でデビューした、世界で活躍した初めての高齢日本ダンサー。

舞台に立つまでかなりの稽古を行うが、舞台では即興で踊ることで、膨大な経験の染み込んだ心が身体を自由に導き、制度化されたテクニックから解放される方法を用いた。記憶を忘れて意識化の世界を超える老い的な美学で、踊ることをしない力を活用した。

過去の自在な動きと現在の不自由な身体のギャップは、舞踊への純粋な欲望がみえ、根源的な生への欲望、存在そのものをあらわす。



⭐︎ドイツの舞踊演劇のジャンルを確立した、「春の祭典」振付のピナ・バウシュと、その片腕で後にさらに老いの踊りを展開させた振付家の
ライムント・ホーゲ。


なぜ、老いた踊り手は特別なのか


⭐︎人生の時間軸で、老いると過去は固定され、未来の可能性は縮小するため、諦めが生まれる。また、生きるのに必要なことができなくなりはじめて、生きるために働いていた身体に気づき、生存を全面的に不可逆的に公権力に委ねなければならず、個人の境界線が薄れる。そして、老いた人は近代システム全体から外れた異界の存在となる。

→老いを隠さずみせる、絶対的弱みは、現実の根底を揺さぶる脅威となる。舞踊の根源や人間条件の表出、現実の解体は老者だからこそ可能なもの。


⭐︎日本の祖霊信仰、祖先が神となって子孫を守るという価値観があり、能などの中でも老人の姿で現れることがよくある。無常観を表す、老女物も多い。
老人は無欲であり、人の理想像に近く、神聖な存在で神に近いとされた。


老いることで、名人になる


⭐︎伝統的な日本の舞踊家は、老いるにつれて踊りの形式を身体に合わせて補正していく。


⭐︎演技ではなくを見せる
バレエでは、現実の身体を持つ単一人格の人間に完全になりきって踊る必要がある。踊り手の素顔を見せることはない。
一方、歌舞伎などの日本の芸は、劇中の化け物といったあらゆる人格をもつ人物と踊り手の人格が二重に同時に存在する。身体はイメージとして現れ、劇中の変身する人格はこの複雑な関係性の上で可能になる。本名と受け継がれた人格の芸名と劇中の人という三つの関係性。
→男女の差、現実と虚構の差を超えて、精神世界を見せる奇跡が可能となる。語り手としての芸の人格が重要になる。


⭐︎の存在
本質が凝縮した、広く生命力を備えたシステムである、芸の型。型によって、性別ある形としての人間を超えて、精神的次元に至ることができる。型は、芸を支える。型が、長年の修行により完全に身体化されることで、全ての表現上の方法から解放され、技術を超えられる。


老いと踊りの可能性



⭐︎定年を迎え、社会的に高齢者となった老人は、社会の外側から俯瞰した自由な目をもち遊芸として踊りを踊ることで、社会の中にいる若者には不可能な新たな文化をつくりだすかもしれない。


盆踊りの習得の流れとは


⭐︎盆踊りの振り付けに見られる動作ひとつひとつの要素(足の動き、手の角度など)は、抽象的な意味を持つ技法であり、これが上手にできるようになるだけで踊れる訳ではない。
これらをなだらかに繋げて具体的な意味をもたせ、間の空間を捉え、ひとつの表現に組み立てていく能力、すなわち技術によって初めて踊れるようになる。
盆踊りの技法は、1000年の間に様々に検証され淘汰された強靭なもののみが継承されている。
どんな技法も、それが成立した根拠があるので、長い間受け継がれてきた技法を学ぶことで、逆にそれが成立した背景を知ることもできる。

盆踊り習得も、所作を繰り返し体で学習し、動きや形から盆踊り唄や表現世界の理解へと進んでいくものである。技法の習得だけでも、かなりの時間がかかるため、高齢の芸能者が見事な踊りを見せる。


⭐︎村の歌や踊りでは、技芸を先祖から次世代に受け継ぐ強固なシステムが存在する事例もある。年齢階梯制の中の若者組では、祭りに向け若者宿で先輩が踊りの継承教育を厳しく行なった。また、祭りの諸役を地域内の数集落や宮座の家が毎年順送りに交代で執行する形態もある。役の難易度が上がっていく。

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