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【盆踊りに役立つ】日本的なしぐさを深掘り!


〈参考書籍〉
しぐさの民俗学 ミネルヴァ書房 常光徹著
ちちんぷいぷい「まじない」の民俗 小学館 神崎宣武著
日本の風俗起源がよくわかる本 大和書房 樋口清之著
民俗学がわかる事典 角川ソフィア文庫 新谷尚紀著



盆踊りを日々考える、高尾可奈子です!


盆踊りと身体観について、このところ興味が高まっていまして、身体の身体による身体のための踊りについて見ていくと世界が無限に広がっていくように感じます。


盆踊りはいくつかの決まった振り付けを揃って踊るところに楽しさ、面白さがありますが、、


この
振り付け=動作というのは、1000年の歴史で磨かれ取って代わられ普遍的な美しいものとなってきました。



その振り付けがどこからやってきたのかと突き詰めていくと、民俗学としての身体観、すなわち私たちの先人たちの日常の動作=無意識的意識的なしぐさに基づいている部分が大きいように思います!



そこで、今回は日本のしぐさに焦点を当てて、現代の私たちにとって不思議であったり興味深いしぐさをお伝えしていきます。



なにか盆踊りを踊る際のヒントを見つけてもらえると、嬉しいです!


それでは!





しぐさとは、、


しぐさや身ぶりは子どもの社会化の過程で習得していく社会・文化現象。

それぞれの文化的な型にはめられているもの。

現代では、その意味や意図は抜け落ちたが、しぐさ自体は定着しているものも多い。


しぐさは呪いの意味をもつものもある。
呪い(まじない)=病気の治療・神仏などにより災禍を免れたり起こしたりする祈り、アニミズム的で他の宗教より迎合的

明治以降は医学の発達により、まじないが形骸化して、縁起担ぎや俗信のみが残っていった。
民間のまじないが、公的な呪術信仰に発展することも。まじないは、神だのみより軽く、自己満足の範囲にあった。「願かけの遊戯化」




しぐさの分類


⭐︎おぎじのしぐさ
視線を外し頭を下げることで、相手に敵意がないのを伝えるため。
魏志倭人伝では、目上の人に会うと手を打つとある。
畳に両手の人差し指と親指で菱形を作って、鼻を入れてお辞儀する、一番深いお辞儀である拝。
それを省略化した三つ指をついた形。


⭐︎息を吹くしぐさ
対象を遠ざける意図がある。

災厄を払うため(怪我や病人や穢れに向けて、ふうふうふうと3回吹きかける、呪いの後に吹く)

妖怪に吹かれる=死

呼吸は霊魂と同一のもの

口笛=風が吹く

⭐︎息を吸うしぐさ
吹く仕草に比べて少ない。対象を招き寄せる意図がある。

豊漁のためのねず鳴き
遊女の客引きや、逢引きためのねずみなき

霊魂が吸い取られる


⭐︎指を隠すしぐさ
霊的で邪悪なものが指先から(特に親指先から)侵入するという観念。

霊柩車など死にまつわるものを見た時に親指を握って隠さないと、親の死に目が悪いという俗信。
夜間の出歩き(夜は魔物の支配する時間)や疫病をよけるとき、怖い犬にも親指を隠す。

足の親指からも邪悪なものが取り憑きやすい。

明治始めのコレラ流行の際、狐がもたらすものだから、魂結びとして手足の親指を糸でくくればよいという呪いが広まり、約半分が実践していた。

指先の爪から虫や悪いものが入るとされた。

死者の親指を噛むしぐさや指先をねぶるしぐさ


⭐︎指を弾くしぐさ
非難や嫌悪感情表出や、排斥や災厄の除去、神霊を移動させるための意味。親指の腹に人差し指か中指を当てて弾くのが多く、密教の宗教家から広がった。


⭐︎股のぞきのしぐさ
日常の境界線から時空間の外側の世界が見えるという俗信。上下前後があべこべで、背中を向けて対象を見る姿勢が、世界の境界を作り出す。

妖怪か確かめる、未来を占う、異界を見る目的。

天橋立股のぞき

袖のぞきや脇覗きにも、共通点がある。
ロシアでも似た言い伝えあり。


⭐︎後ろ向きのしぐさ
異界など非日常な世界との関わりを拒否しつつ、同時にそれらに働きかけるという二面性。

葬送風俗に多くみられる。

練り歩いた盆踊りの最後に振り返らずに帰宅する例

あの世と繋がる異界との接点である辻に、後ろ向きでものを捨てる行為

拾うと逆に厄がうつるとされた。
振り返ることも禁忌



⭐︎穴や隙間から覗くしぐさ
異常事態の際にすぐに危難を逃れるための手段。

身近な道具のわずかな隙間から、外世界が見えるという俗信。

昔話の鶴の機織り

二股(Y字形やV字形)も境界を象徴。

顔を隠して扇の骨の間から異形などを覗き見る呪的なしぐさ

現代では、ジャンケンの前に両手を組んでできた穴を覗いて占う動作が残る。

⭐︎斜め十字(✖️)をつくるしぐさ
バッテン(別名アヤツコ、たすき、ペケ)は呪術的雰囲気で、禁止の意味を含んだ形であった。

手指をつかったエンガチョ、バリアー遊び

魔除けの印として、死葬や出生で使われた。

エジプトミイラと棺にもばつ印が多い。

シメ〆には封の意味

妖怪に股の間をくぐられると命をとられるから、左右の足を交互に交差させて歩くという俗信→舞踊の女性的仕草が内股な理由のひとつ?

安政六年のコロリ流行の際、十字の連続が織りなす形に邪悪なものを阻止する力があるとして、数百本の竹を基盤のように立てた。
蚊帳の機能
ものを絡めとる網の機能に、呪的力もあるとされた。


⭐︎大声を出すしぐさ

風追い
強風に見舞われると、被害を防ぐために家々で大勢で怒鳴り声を出して風を追い払う習俗
「ホーイ、トーホイ、ホォーッ」
火災や水害にも大声を出していた。

ホーの声は、神事や害獣払いでもみられ、邪悪なものを追い払うために発せられた。
法螺貝の音とも重なる。


⭐︎ものを激しく打ち叩くしぐさ
邪悪なものを追い払う常套的手段

拍子木など鳴物、鉄砲

火災や災害、節分や正月、儀式などの際


⭐︎くしゃみの後のしぐさ
クシャミは身に起こる現象でありながら意思で制御できないことから、邪霊や知人など外部から何者かが働きかけているからだと信じられていた。

後に呪文をとらえたり、罵ったりする。
撃退や健康祈念やうわさされたと考える。
「クソクラエ、トコマンザイ」

鼻が魂の入り口であるという俗信
乳児がクシャミをするたび、魂が抜けないように大人が紐や糸を結ぶ鼻結び


⭐︎2回繰り返す動作
一つは不吉で不安定で非日常、二つは正常で安定で日常的であるという俗信

ノック音、モシモシ
一声呼びの禁忌
神霊は連呼せずに一声呼びするため
逆に死者への特別な呼び方でもあるため、葬送習俗で死者との絶縁のための一口呼びがみられる。

一声鳴き、一杯茶、一本箸、一つ鐘などを忌む。

行きっぱなしは非日常で忌まれる行為
→洗濯物はさした方から抜かねばならない、葬式は同じ道を往復してはならない

同じ形が左右で存在する現象を忌む伝承
家を通り抜けない、山を割るように歩かない


⭐︎二人同時を避ける動作
言葉や行動が二人同時になると、どっちつかずの宙に浮いた状態が発生し、ある種の危険、穢れとして避ける感覚

犯すと、死や仲違い、知恵を奪われるとされた。

ハッピーアイスクリーム、同じ火を吹き合うことを忌む俗信、箸わたしを避ける、妊婦が二人いるのを避ける、双子を嫌う

先に言葉を言ったり、二人が後の動作を逆にすることで消し去ることができることがある

綱引き行事=年占い的な性格、一方は神的なもので神と人との交流を可能にする原理
一つの対象をめぐり拮抗する二つの力がせめぎ合うエネルギーの激しさ、人間の営みの根源的なところから起こる情動からきている

逆に、箸や履物など二つ同時が本来的なあり方とされるものは、一つに融合や片方の欠如が起こるとき、異常な力、異界と繋がるという俗信
歌舞伎のニラみ芸、神仏の前で手合わせ


⭐︎左側通行
江戸時代から作法となる。差した刀同士がぶつかるのを避け、すぐ攻撃しやすいように。相手から見た左側が上座のため、その位置を避けるため。

能楽では正面の鏡板にかかれた松の絵が神の象徴で、神から見た右が上座となる。舞台右側が上座。心臓が左にあり、左は守る必要があるため左が上席とされた。
しめなわや鯛などの縁起物も左が頭になる。


⭐︎右手を隠すしぐさ
お辞儀の時、お茶の作法など。
攻撃性の高い右手を隠し、無抵抗を示す礼儀のため。


⭐︎握手
昔は喜びの表現手段。
君主から家臣への労いとして。
歌舞伎では、他に男女の恋愛表現として、芝居の型となっている。


⭐︎正座とあぐらで座る
歴史的に古いのはあぐらで、すぐ立ちやすい。
お茶の影響で正座が始まり、攻撃姿勢に移るのに時間が掛かるため、平和な礼儀作法として広がった。



⭐︎顔や身体を黒く塗る
自分の正体を隠して、邪気悪霊払いして、無病息災の願いがかなうとされた
行事での泥塗りや黒塗り、魔除けとしての入墨


⭐︎別れ際に袖を振る
魂振り。相手の生命を再生産してあげる、活力を与える意味。のちに、着物やふろしきを贈ったりするようになる。


⭐︎参拝で、柏手を打つ
手を打つことで空気を振動させ、その力で神を呼び寄せる、霊振りのため。また人間の魂を動かし、魂を再生産するため。

祭式のたいこや笛、除夜の鐘も霊振りの効果がある。

二拝二拍手などの数の決まりは、本来決まりはなく多くても良かったものが、明治時代にルール化されたもの。


⭐︎肩車や胴上げをする
元々、ハレの日の儀式の際に、聖なる者が地に足を触れることを避けよう、地に接することでその持つ威力の低下を避けようとする手段だった。
また、その者が別の段階や地位へ移行することを象徴的に表している。
福島県いわき市錦町熊野神社祭礼では、神を憑依させ託宣を聞く子供の勅使役を、馬や肩車で運ぶ。
花嫁が嫁ぎ先の家に入るときに、背負われて入る風習があった。


妖怪に対抗するしぐさ


何か不可解な体験を人に伝えるときに、お化けや幽霊といった超越的存在を持ち出すことが、かつての社会では伝達にうまく機能していた。

妖怪は、人間だったものが人間の形をとる幽霊に対して、人間以外の形をとるもの。また妖怪は、日本人の神観念の否定的部分のあらわれとされる。


⭐︎頭に草履を乗せる
→上下のあべこべ
⭐︎背中に「犬」と書いてたたく
→鋭い嗅覚
⭐︎親指を中に握って歩く
→爪の先、親指から入る
⭐︎着物の裾をしぼる
→着物の先端から霊的なものが出入りするという俗信
⭐︎しゃがんで棒でなぎ倒す
→狐の正体は低い高さ

天気雨=狐の嫁入り
⭐︎指を組んで隙間から覗く
(両手を表裏に組み合わせるあべこべ)


動物に対するしぐさ


⭐︎ニガテ、マムシユビ(特殊な手のこと)
触ると病を治す、動物を動かなくする、対象を悪い状態にする


⭐︎人差し指をくるくる回す
回転する指の輪の中に対象をとらえて動きを封じる呪いの俗信

とんぼ、へびなど


⭐︎動物を殺した後食べる行為
猫や蛇を殺したとき、未然に祟りを防いだり、発生した祟りを鎮めるねらい
噛むという相手を威嚇し災難を駆逐する行為としての作用もある
異類を体内に取り込んで同化することで力関係を無化している

猫やへびなど


⭐︎戌の日に妊婦が腹巻きを巻くお祝い
生児の額に犬の字をかいたり、葬送の際に死者にかける頭陀袋の中に米類を入れて、死出の旅路に犬に出会ったときに食べさせた
犬はお産が軽く、あの世とこの世の境界で境を守る役割を担っている、境界を往来すると考えられていたため。


ものの特徴的な扱い方


⭐︎ものを立て置く
悪霊祓いの普遍的なかたち(雷神、出産など)
刀や鎌や、ヒイラギやカヤなどを立てる
邪気悪霊を防ぐため、玄関やムラの出入り口、辻に藁人形や陽物、仮面や大わらじを立て置く
神霊が宿るとされる石を置いて、死霊を押さえつける、魔除け石


⭐︎ものを供える
絵馬や草鞋、前掛けなどを奉納する
安産や病気の治癒のための願掛け

生馬の奉納が、模型から板絵へと縮小された形
(信仰の大衆化、流行神の出現)


⭐︎像を洗う、なでる
神仏像や墓石、地蔵や観音など、自身の患部の代わりに水をかけて水徳を得るため
なでることは手当て、癒しそのもの


⭐︎門口に張り紙をする
邪気悪霊がしのびこみやすいとされる節句など節目に、手形や、居留守や鬼とかいた札を貼る
無病息災や子どもの風邪予防のため
寺院でもらう魔除け御札を貼る他、尖ったもの刀の形のものを取り付ける

⭐︎注連縄(しめなわ)を張る
神社の鳥居、村境、祭りや正月の戸口など
神聖な場所を区切り、また締め出す防塞の機能あり
地域によってはトゲ状の葉の小枝、線香や御札などを張る

水引やのしに見られるように、古代の魂を結び入れるという結びの信仰も由来のひとつ。


⭐︎豆を打つ
節分の際に、邪気悪霊を払うため行う
豆は五穀豊穣の五穀のひとつで霊力があるとされ、年占いにも重宝された
他にいわしを吊るしたりもする


⭐︎座布団を二つ折りにして出す
現在は芝居の舞台でのみ残るしぐさ。
ものを開くのは縁が開けるということでめでたいため。
座ぶとんに仕掛けがなく安全であるとみせるため。


⭐︎年賀状を書く
古代から言葉は記号ではなく、語られた言葉は実体を持つという呪術信仰があった。暦に合わせた節目に、相手に祝福言葉を贈ることで、本当に相手がめでたくなるとされていた。


⭐︎同じ杯で酒を飲む
結婚式や師弟関係などで、同時にひとつの器のものを分け合うことで、魂レベルの精神的交流により擬制血縁、親戚関係になるという意識がある。
かつて酒は自家製で、飲むと意識が変化するため、酒を贈る=魂を心を贈るとされた。


⭐︎扇の機能
平安時代に生まれた。
開く形→心が開く→縁起が良い
手の平に似ている→手で神を招き寄せる
竹は硬く防御に使えるが、それを挨拶の際に置くことで無抵抗を示した。
①実用的な送風機
②神を招くもの
③武器
④相手に恭順の意を示すもの


⭐︎帯を背で結ぶ
287種類の結び方のうち、全て背で結ぶ。
人が人を鑑賞する場合側面が背面をみる傾向から、背面美の演出のため。
寸胴体型をスマートに見せるテクニック。


⭐︎ふんどし祝・腰巻き祝
かつての成人式のこと。生殖能力がそなわると成人とみなされ、ふんどしや腰巻きが下半身保護するのもだったことから、性の象徴として贈られた。それぞれ結び合うことは、性の結合を意味した。


⭐︎みこしを振る
霊振りにより、神を起こして威力を増そうという意図。地方の村では当屋という当番制の祭りを代表して行う人がおり、共同体の神様をあいまいにしないように工夫した。


⭐︎胞衣(えな)=胎盤を埋める、踏む
胎児と分離後もその子の性格や病気に影響力をもつと信じられた。
戸口、上りはな、馬屋、床の下などに、壺や桶に入れて埋めた。虫などに侵されて子が病気にかかるのを防ぐため。胞衣は踏まれるほど良い。
他に、川や海に流していた。


⭐︎塩や米糠(こめぬか)で清める
葬式の後に、塩を振りかける。地域によって米糠も混ぜる。戦後石鹸の代わりに使われていたくらい洗浄力が高いため。
店の入り口や相撲後の土俵に、掃き清めた印として盛り塩する。





いかがでしたでしょうか。

日本に住む人々が、長い時間をかけて、四季ある島国の環境に適応して、生み出していった考え方や行動やしぐさたち。


これを知ることで、日本的な踊りの盆踊りを踊る際にも、ひとつひとつ実感として噛み締めながら、踊ることができます。


そうして踊ることではじめて、踊りの本質を掴めるかも、ぶれない軸のある身体を獲得できるのかもしれませんね。


しぐさについては、まだまだトピックがありますから、また機会があれば記事にしていきます!


是非盆踊りを踊る時に、思い出してもらえれば嬉しいです!


以上、高尾可奈子でした!



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