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【アジアの舞踊解説】踊る起源や価値観とは


人が踊り始めたとき


⭐︎紀元前5世紀頃、ギリシャ人は人間の行動が天地自然と同調しているという宇宙論をもっていた。動く天体の惑星と動かない天体の恒星から、宇宙の動と静の運行リズムを身体化して表現した。
バリ島サヌール村のウパチャラなど。

自然環境による民俗固有の生活文化(稲作農耕、騎馬牧畜など)と同調するリズムからも舞踊は生まれる。

この調和が維持されないと、心身のリズムが狂い病気や災いが起こるとされていた。
周りで起こる不慮な出来事や恐ろしい病気は自然界の霊力と交流していないために起こると信じており、そのため多くの民族では村落の人々が集団で舞踊を行うしきたりがある。

自然や宇宙のリズムを用いた模倣が、舞踊であるという考え方。
中国や朝鮮では、足の振動から上半身、両手へ。
ギリシャの舞踊は身体全てを使って。


⭐︎古代より人形に神霊を憑依させて、神々と交霊し、邪気を祓う儀式舞踊があった。
インドネシアバリ島タバナン村のサンギャン・デリン、サンギャン・ブンブン、サンギャン・ククル、新年のムチャル、古代中国の王の殉葬など。最後の人形は傀儡へと発展。超自然的な力を持った神像として。


⭐︎祭礼で演じられる時空間は、超日常の神霊と一体化する世界のため、物忌みの行事などのように祭礼前の心身の浄化、聖化、内なる精神に秘められた霊力の復元が最も重要。アジア各地で基層文化として見出される。表現される精神世界は土着信仰や宗教とも深い関係を持つ。


⭐︎アフリカ民俗でも、太鼓や舞踊の伝承が文字伝承よりも早く成立。部族民をトランス状態にすることで結束を強化する機能をもった。アジアも同様。


⭐︎舞踊は、無文字社会では目に見えない生命エネルギーを形象化しようとする行動。表現する世界は、個人の意識を超えて、神話や伝説など太古から人類や先祖が認識や体験してきた世界。無意識的な動作でもあり、そこから民俗固有の文化的行動となり信仰などに影響している。
自然や動物の模倣など、現在でも多く見られ、偉大なる生命を身体で表現してきた。


⭐︎日本の革命的な舞踊家、土方巽(ひじかたたつみ)
身体をめぐる政治、慣習、教育の外に身体を再発見し、身体を統制する言語を変形して身体の振幅と振動を再発見する試みの実践。言葉と身体の境界線を超え、2つを連結して練り上げた舞踊。


踊りの可能性


⭐︎身体表現によって、言葉を必要としない普遍的で暗喩的表現が、思いをめぐらすのと同じように可能になる。
インドのカタカリという舞踊劇などのように、インド演劇は音声に近い歌謡と身振りで言葉で言えない内容を表現して発達。


⭐︎

舞踊者の模倣は、諧音をのぞきリズムのみを用いる。何とならば、舞踊者は自分の姿態のリズムを通して、人々の性格ならびに人々の働きかけたこと、ならびに働きかけられたことを模倣するからである。

ギリシャの哲学者アリストテレス『詩学』より


つまり、舞踊を見ている人を前に人々の心を動かし、その動かされたものに反応して演じるということ。
鑑賞者が舞踊を決定付け、また能動的に心を揺り動かすことも重要となる。演じる者と見る者の境界がなくなり、ここに宇宙が再現される。


⭐︎舞踊と歌謡の統合
日本の能、歌舞伎、インドのサンスクリット劇、中国の崑曲、京劇などでは、舞踊と歌謡を演技の基礎に置いている。



⭐︎道徳的倫理的教えを繰り返し共通経験として広く、身体伝承により伝える演劇の社会的機能がある。インドのラーマーナヤ演劇など。宗教的儀式内においては、民俗の共生だけでなく神と人間の共生を認識させる。

また完璧な形での伝承というよりも、子どもの人格形成という精神性に重きが置かれている。


⭐︎アジア舞踊の中には、直線的な動きと曲線的な動きが混ざった様々な動きが簡単に表現されて見られる。様式化されていない民族伝承の動きは、高度で斬新。


形象するもの・装置


⭐︎古代より人形に神霊を憑依させて、神々と交霊し、邪気を祓う儀式舞踊があった。
インドネシアバリ島タバナン村のサンギャン・デリン、サンギャン・ブンブン、サンギャン・ククル、新年のムチャル、古代中国の王の殉葬など。最後の人形は傀儡へと発展。

超自然的な力を持った神像の人形を人間化することで神の畏怖心の克服と偉大な霊力の獲得という欲求を満たして行った。後に人間の俳優へと像が変わっていく。


マレーシアクランタン地方のワヤン・シャム、台湾南部皮影戯、インドネシアジャワのワヤン・クリッ・プルワなどに見られる、影絵芝居。闇夜の白い幕が天上と地上の境界を自然の中に顕在化させる。精霊の言葉を聞く呪術行為に始まる。

中国では、形なく空間・時間を超越した無、天地万象の根源を意味するものが、玄=黒。


⭐︎「仮面」や化粧には、変身というよりも、世俗的な心を止めて真なるものを顕現させる目的がある。俳優の精神性によって仮面に神霊が憑依して、俳優の肉体を借りて現れる。

インドカシミール州ラマ教の仮面舞踊劇、チベット由来の伎楽などにみられる、ジャトウ様式(すっぽり被る仮面)の起源はカンボジア影絵芝居スバエク・トム

古代西域に見られる、頭からすっぽりと被る様式の伎楽面。日本では正月の祝福芸の大面や獅子舞など。


⭐︎能役者は、心を自然の器、無心の器とする。自然があらゆるものを生み出すように、芸は深みに達してあらゆるものの表現が可能になる。
紀元前インドの演劇聖典「ナーティヤシャーストラ」では、サラという情調表現は俳優の中ではなく観客の心の中に現れ、俳優は器=媒介者とされる。
南インドケーララ地方のヤクシャガーナという舞踊劇では、宇宙の動静を表現できる手足獲得のため、訓練で身体を神が造化する容器に作り変える。歌い手との競演であり、言葉は教わらない。自らの心を虚なるものにしていく。心の微妙なはたらきを理解しようとする西洋と反対に、アジアでは身体と精神で学ぶ。



⭐︎またインドの劇場は、宗教の祝祭で神々に演劇を奉納するために寺院の中に作られ、観客は神への荘厳さを感じ聖域の中で精神状態を高揚させ、生命力を回復させた。、南インドなど古代劇場は、柱が多く洞窟型の強い共鳴が特徴。緞帳がなく、歌舞伎の消し幕のように、若い男子が幕のヤヴァニカを持って現れる。


⭐︎神々や精霊は闇夜に降りてくると信じられているため、アジア舞踊は闇夜の時空間で上演される。舞台空間は自然界をすべて含んだ神聖な空間で、自然の一部として人間やすべてが生まれてくること、神と人間の共生を認識させる。神が到来するかのように、太鼓や鈴の演奏から次第に始まる。


⭐︎アジア各地の古代壁画に描かれる舞踊図は、円形か輪の形が多い。円の中心に対して踊り手の求心力が強まり、集団による霊力の結束を求めるのに適していた。呪術的で閉鎖的形態のため、村落を外部から防御し、異質な力の浸透を許さなかった。


⭐︎空間は絶えずさまざまな方向を作り出す運動性・宇宙的な気の動きに満ちており、その気の動きを顕在する動きが舞踊である。空間の中ですでに動きの前表現が作り出されている。アジア舞踊では空間の中でに神霊の生命力を強く感じられる。


伝承される舞踊



⭐︎西暦二世紀頃、現存の形になったインドの叙事詩「ラーマーナヤ」。ラオスやカンボジアなどアジア各地に読誦という口頭による伝承がされて、語り形式や影絵やあやつり人形、楽器、舞踊劇、彫刻、壁画など様々な芸術様式で伝えられた。そこで生まれた違いに民俗性が表れている。

インドでは、文学としてではなく、多くの僧徒に吟唱や朗唱され祭礼で演じられる身体伝承の形態をとる。
時代の流れにより見せる側面を強めてきている。


⭐︎口頭によって物語が語り継がれ、身体表現によって伝承される方法は、アジア全域に伝統的な伝承形態。観客も身体伝承的に体験をする。

時代とともに、口頭から身体へと伝承されるように。また、影絵芝居で染色技術が加わりカラーになるなど、次第に視覚的な娯楽が発達していった。


⭐︎「リアムケー」演劇などに見られるように、浮き彫り像や皮革人形が、動いてみせる身体動作の舞踊や演劇として伝承されるようになることも。

古いジャワ演劇では、絵巻物ワヤン・ベベルの絵図をもとに、影絵芝居ワヤン・クリッ・プルワができた。この人形が平面横向きのため、俳優も横向きで似た仕草をする。


⭐︎中国雲南省のチベット族、チベット暦の正月グオッジョ(輪踊り)
神の山を礼拝後、読経の勤めを続けながら、村人たちがそろって飲み食い歓談しながら、踊り手が力一杯に蹴って踊る。
イ族、旧暦二月と六月に素性を隠し動物などの異形の扮装仮装で悪態をついて、家々を来訪する訪れ神行事。この形態はユーラシア大陸各地で収穫前の初春や収穫後の豊年祭の時期に見られ、農耕民的とされる。
村の境界で道を塞ぎ、若い男女が打歌という輪踊りに興じて、歌垣的掛け合いを行う。貴州省トン族や福建省シェー族、沖縄の訪れ神マユンガナシィなどにもみられる。


⭐︎韓国、朝鮮王朝の歴代王と王妃を祀る宗廟での祭礼の時に演じられる「礼楽」
日本の雅楽と共に中国の礼楽から生まれ、屋外演奏の大掛かりな楽器編成が特徴。


アジアの身体性


⭐︎西洋の身体は規律化され、秩序や形式や輪郭のなかに固定されてきた。一方、日本やアジアの身体は輪郭がなく果てしなく流動する生命の知覚に開かれてきた。


⭐︎身体の重心を腰でとらえて安定させることで、様々な動作が可能になる。身体をまっすぐにして、腰を下ろす基本姿勢は、アジア舞踊に共通する重要な要素である。


⭐︎腕を前で組み合わせ伸ばした際、肩甲骨を通って片方の腕からもう一方の腕へとくねくね蛇行していく動作は、極東地域特有の動き。ギリシャ後期の渦巻き舞踊やエジプト葬式舞踊にもみられる。


⭐︎西洋の場合は音楽先行で振り付けがされるが、日本の伝統的舞踊では、最初に教えてくれる人の声と間、振りによって踊りになっていく。声が重要となる。



インドの舞踊劇ヤクシャガーナ


もともと寺院専属の奉納芸能として、400年近い歴史ある舞踊劇。歌詞や楽器に神話劇が取り入れられて、歌舞劇形式となった。闇夜での上演。祭壇のように神聖な楽屋。

歌い手兼演出家のバーガヴァタが全てを司る。歌い手は歌だけ歌い、演者がみずから台詞を語る掛け合いへと変化。男性演者と女型。

上演構造(神楽に似ている)
①神を迎える儀礼
太鼓チェンダ→ガナパティ(演劇の神)の供養→上演場所へ行列
②神話世界の上演
太鼓と歌い手の手足で祈願→神をたたえる歌と踊り→クリシュナ神登場→ヴィシュヌ神たたえ踊る→二人の女型のクリシュナ神たたえ踊り
道化踊りと幕テラから演者顔見せ→歌手のあらすじ歌→歌と踊り→道化登場→演者即興演技
③神を送る儀礼
神へ劇の終わりを告げる踊り→一座と一座の神の名を言う→楽屋へ行列→ガナパティ神へお礼を言う

何時間にも及ぶ白塗りの特殊な化粧や衣装により、修行のように演者を現実世界から神的世界へ移行させる。
舞台空間の狭さが、演者の動作の象徴性を高める。
ハスタ(手振り動作)がほぼなく、天に飛び上がる動きは豊穣儀礼として民間信仰を取り入れた呪術行為とされる。

人の内なる世界に目を向けさせて、自然との共生を問うというアジア的演劇の本質がある。


インドの仮面舞踊劇チョウ


西ベンガルの西、プルリア地方の雨乞いと春の到来を喜ぶ儀式祭礼。
大半が戦闘の場面で、呪術的な行為により神と感応する目的がある。

大地の表面を足で強く踏む、特徴的表現がある。大地の霊を喚起させるのでなく、天高く跳躍する動きの意識のため。回転動作も多い。四肢の表現。跳躍のあと、膝から大地に降りるなど、一連の動きに表現パターンがある。

激しい身振り表現と凄まじい太鼓の音、甲高い管楽器シャナイの表現。

演目は、様々なヒンドゥーの神が登場したり、マハーバーラタやラーマーヤナからの一挿話、クリシュナ神と牧女ラーダーの愛の物語などがある。

神を演じる者はトランス状態で神そのものとなり、人間では考えられないような動きを表現する。

上演で使用した仮面は火で焼き、人々の願いを天界に届けると信じられていた。


ミャンマー舞踊の歴史


インドと中国の楽舞が組み合わさり、宮廷の古典舞踊として伝承されたのがはじまり。強い仏教色があり、様式化されていた。

ヒンドゥー教の代表的な叙事詩「ラーマーヤナ」は、タイとの共通性がみられ、仏教説話形式で語られていた。

ミャンマー舞踊の基本動作には、腰を横に突き出し、足で裾を蹴ってすぐにしゃがみ込む激しい動きがある。

タイやカンボジアと異なり、先生が生徒の身体を決して触らない教授法をとっている。


タイの舞踊劇の歴史


1431年混合信仰のアンコール王朝カンボジアをタイが支配し、舞踊の演者や演奏者を捕虜として連れてきたのがタイ舞踊のはじまり。カンボジア舞踊と類似が多い。
南部ラコーン・チャートゥリー→北部ラコーン・ノーク→宮廷舞踊
ラーマーナヤのタイ版「ラーマキエン」のみが仮面劇コーンのために作られ宮廷で上演された。

宗教的理由で男女が同じ舞台に立たず、別々に発展した。現在は南部のみ女人禁制。女性による舞踊ラコーン・ナーイ、ノマーラ、男性による仮面舞踊劇コーン。


⭐︎仮面舞踊劇コーン

影絵劇ナン・ヤイの人形遣いの動作を基本に創られた。影絵劇で人形遣いが白幕前で人物が飛び出したかのように舞踊表現する演出が独立し、王の前で顔を晒せないことから伎楽面の仮面をつけるようになった。現在は魔神、猿族、動物のみ仮面をつける。上演形式は朗唱と語りからなる。
伝統戯曲の基本構成で、5場から7場の構成からなる。

かつては野外で自然を丸ごと作り背景として、200人以上の演者が登場して、夕方から早朝まで演じられた。現在も政府の芸術局のもと伝承され、圧巻の人数規模と豪華さ、様式化された感情的でない優雅で美しい舞踊劇。

影絵劇と同じく、足を真横に180度開いて腰を下ろす構えが基本姿勢。戦闘場面で、足を絡ませて相手の膝の上に片足を乗せて優勢を象徴する型も同様に。影絵人形のように斜め横に動く動作。

舞踊学校の身体訓練
下半身の足部、膝と足首、内股の柔軟性を中心に。
膝を叩く、腰を叩く、柱での足踏み、股を広げる、トンボ返り



アンコールの舞踊の歴史


クメール舞踊は九世紀はじめ、国内統一されたアンコール時代から。ジャワから帰った王がインドの宇宙構造を権力に取り入れ、宮廷文化を作り上げた。1432年に滅びるが、アユタヤの宮廷芸能としてタイで文化化されて独自の舞踊や演劇へと発達した。

天女アプサラは王のために様々な儀式で踊り、華麗に表現していた。腰をしっかり下ろし足裏を見せず小幅歩き、両腕を肩まで挙げて、手のひらを上にして手首を曲げ、片足を高く後ろに蹴り上げて飛翔を表現する姿勢は、基本動作に見られる。かつては激しく躍動的で官能的な踊りだったが、今日は静的動作の舞踊表現。手首を軸に肘をつかって指を繊細に動かす特徴的な動き。
能狂言と同じく、身体の中心軸をとってお尻を後ろに突き出す深さに重心を下げる構えをとる。さらに速い速度で、回転もする。

カンボジアの舞踊の基本の動きは、螺旋とねじれの動きで自然に反するが、恍惚状態をもたらす。感情を手指と腕で表現する。関節の動きや反り方も流れるように表情される。全て女性が演じるが、予言者と道化は例外。

踊りの始まりと終わりのあいさつ、合掌の姿勢は感情表現として祈りの表現となっている。胴体の筋肉を早く緊張弛緩させることで震えさせ、指から肩までわずかな震えが見えている。表情は作らない。



現在のアプサラ舞踊はクメール古典舞踊団が継承。芸術学校でも教えられ、内面的精神性を伝承される。


ジャワの宮廷舞踊


インドネシア中部ジャワ、ヒンドゥージャワ芸術文化か繁栄した地域の、九〜十世紀の舞踊は王侯貴族の舞踊や仮面舞踊など。インド文化の宇宙観やイスラム文化の精神世界により、アルスという美的観念が様式美を高め、宮廷の神秘主義を実践する舞踊として、人間の内面を高めることで神との一体化を実現した。
歌舞伎の女形のように、優美な静の表現と躍動的な動表現が呼応する、アルスの中世的身体表現が美学とされる。(男性演者のみ)

影絵人形劇における皮革人形の動作に基づいた基本的動きがみられ、様式化されている。
抑制された、手足特に先の直角的な動き、頭の位置と付随する視線による感情表現、戦いの場面でも優美な動作表現
精神と身体を一体化させて宇宙や全てと調和するための、スンバという合掌の姿態。

構えは両足を大きく外開き、腰割り重心を下げ、両手を肩まで上げる姿勢。足の運びは日本の能のすり足に近く、歩幅小さくゆっくり。


最も知られるジャワ宮廷舞踊、ブドヨ。
多くの種類あり。龍宮伝説が由来。
十六世紀に誕生したとも言われ、1908年頃、民間にも普及した。
人間の九穴、九天など神聖な数字であり宇宙の呪力を得るために、九人の女性により演じられる。腰に垂らした絹布をつまみ動かし、海底の舞姫の姿を模す。台詞はない。
宇宙の運行にしたがい、目に見えない神秘的な霊力がもたらされる。

四人の助成が踊る、スリンピ。東西南北をあらわす。
題材は、ジャワ歴史物語、インドのマハーバーラタ、アラビアのアミール・ハムザなど。
舞踊はほぼ同じ動きだが、戦闘場面は二人同士向かい合い様式化された動きをする。
⭐︎上演の流れ
舞台端で膝を下ろして王に手を合わせる動作コパン・コパン・モジェン→中央で四人シンメトリーの動き→低い姿勢で退場口へ進み王に手を合わせる動作コパン・コパン・ムンドゥル
宇宙を形成する陰と陽の二つの霊力の相克な戦いをあらわし、内面での葛藤が表現される。



バリ島の舞踊劇ガンブー


バリ島で最も古く、所作などバリ舞踊劇の基層を作った。古代ジャワ語カウィ語で語られ、ヒンドゥーの文化やジャワ宮廷舞踊が統合された政治的精神的な舞踊劇。バリ音楽古典様式と異なる旋律とリズムのパターン、ガムラン・ゴン・クビャル(太鼓、竹笛、青銅楽器など)。四、五時間かかり歌と台詞が多い。
四つの戯曲の中でもパンジがよく知られる。王に捧げる儀式舞踊で、昔は全て男性が演じた。

日本の注連縄のように、寺院の庭に竹と椰子で囲った空間が舞台となる。
芸能の第一目的が冠婚葬祭。

1906年オランダの征服により、八つの王族は絶えてガンブーも絶えたが、70年代から国立音楽舞踊学校で教えられている。


バリ舞踊の特徴
腰や足、手など身体部位が人物性格をあらわす。
足の位置で人物の内面性が表現される。親指を内側に入れて内的な緊張を表現。
立った構えのアガム、移行のダンダン、手の動きのムドラ、顔の表情のタンクップなど動きが有機的に連動しながら身体動作がつくりだされる。
インドのカタカリ同様に、顔の表情の代わりに目で物語り感情をあらわに表現するため、厳しく訓練される。


神掛かり状態になるため魂が汚れていない子どもが踊り、村の平和を守るために日々神を供養し踊りを捧げて、心の均衡を正している。


⭐︎ガンプーから派生したレゴン
悪霊退散など宗教色の強い秘儀性の舞踊から文学芸術舞踊と移行。
二人か三人の踊り手にキャラクターを凝縮し、所作を優雅な踊りにしたもの。抽象的表現。
マニス(ジャワでのアルス=上品で優雅で善良な人物の性格を表すものに近い)の動作は、洗練され気品があり、静かにゆっくり流れて演じられ、声は甘ったるい作り声。気はゆったりと流れ、目を細めてうっすら笑う。
敵の王は、クラスという荒々しい強さをみせる動作。目は見開き、口はへの字で、威嚇するようにしゃべり歩く。

転換に幕はもち入らず、演劇的なガムラン音楽のメロディー、人物の出捌けが場面転換を暗示する。
鉦とともに目をすばやく動かし肩を揺らす動作で、自然界の動物昆虫を模倣し、これから起きることへの本能的緊張を見せる。
足の親指のみ反らして緊張をあらわす。
二人が優しく鼻をこすりあう動作は、バリの恋愛遊びを舞踊化したもの。
扇子の小道具で感情を表現する。
死は暗示的表現にとどまる。
幾何学的な回転動作が多い。

女官チョンドンと役を演じる左右少女二人完全シンメトリーの舞踊(普遍的な型を見せる純粋舞踊)→舞踊劇→大詰の儀式舞踊


台湾南方蘭嶼島の呪術舞踊


六つの集落があり、精霊信仰があり、十一種の伝統舞踊(身体動作)がある。
基本は女性のみで、漁に出る男性の豊漁を祈って残された女性が踊る呪術行為として演じられた。捕魚のさまを舞踊化。
次第に竹や竿を持つようになる。

満月の夜に踊られ、明け方まで男女分かれて祈祷の歌を唄い、霊力をしめす。男性に向け、慰労のための表現。

反復動作の回数に決まりはなく、リードする人のエネルギー伝播で変わる。
手(組むなど)や足、首の動きを組み合わせる。隊列に並んだ集団のダイナミックな動き。
非日常的な髪振り踊りなどあり、歌詞があり呪文のように即興的につくり反復する。
若い女性ではなく、年老いた女性が踊る。


アジア民族の歌の歴史


⭐︎中国西南域の多くの少数民族がもつ、自民族の始源神話語り(歌)・対歌
雲南省イ族の「梅葛」は、世代ごとに異なる歌い方で、老人梅葛が歌の宇宙の基調であり、同一旋律の問いと答えからなる単調な反復形式となっている。

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