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【社史】探究学舎実録30~生意気で未熟なアルバイトが入社するまで~
前回までのお話
去年の10月から探究学舎では「コロナ禍に伴う授業のオンライン移行」以来実に3年7ヶ月ぶりに「オフラインの小学生通塾クラス」が復活した。
小学生の教室事業が復活するのはなかなか感慨深いし、かつての自分のように若手の講師(MF)が授業しているのも「あぁ、自分もそんな時あったなぁ〜」なんておじさんみたいなことを思ってしまうぐらいには懐かしさを感じる。
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オンライン授業がメインになってから三鷹の教室に小学生たちがわんさか押し寄せる光景も珍しくなったが、最近はずいぶん賑やかさが戻ってきた(オンライン事業と教室事業が並行して走る関係で、会社は2倍忙しくなった…)。
今年に入って、教室でとある保護者さんに話しかけられたのだが、その内容が…
「たかおさんのnote記事の大ファンです!!もう読んでて涙が出るくらい感動したし、仕事頑張ろって思いました!!早く続きが見たいです!!」(注:超訳です。木元の脳内でかなりポジティブに変換されているかもしれません)
マジすか…こんな駄文で人様の勤労意欲をかき立てることができるなんて…!何はともあれ、自分が時間をかけて生み出したものを喜んでもらえることほど嬉しいものはない。早速続きを書きたかった…のだが。
今年の3月から8月まで「半年間で1つのテーマを探究する」≒「授業制作者が半年間魂を削って生き様を見せ続ける」ことでお馴染み「深めるコース」で世界史の授業を制作していた。余談だが去年の同時期にも「日本史シリーズ」という授業を半年間作っていて、これで2回目である。深めるコースを新テーマで2回作ったのは「僕が人類で最初」だ。
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合計24回分の授業を毎週作ってリリースし続けていたので、マルチタスクをこなすのがただでさえ苦手な僕には、とても世界史以外のことに頭のキャパを割くことができず。。。だが先週の土曜日についに最終回を迎え、ようやく続きを書く気になった。お待たせしました。いや、お待たせしすぎたかもしれません…!そして思った。
「前回ってそもそもどこまで書いたっけ…?」
ついでに気づいてしまった。
「前回の更新日2023年1月5日じゃん」
まぁでもざっと見た感じ、僕のアルバイト生活最後の年である2017年4月から2018年3月ぐらいまでの話をいろんな視点で書いている…ってことで多分間違ってないよね。多分。
であればこの話を避けて通れない。今回のテーマはズバリ「僕はどうして探究学舎に社員として入社することにしたのか?」だ。
入社するもしないも半々
前にも書いた話だが、僕は大学を留年している。勉強するのが嫌いだったというより、自分の好きな授業を好きなように取っていたら「必修単位を取る」ことを完全に失念したまま4年生を迎えてしまって、結果その年の後期で取り切れる可能性がなくなり、5年生となった。
僕の母校早稲田大学は「4年で卒業するのは三流。留年で二流、中退して一流!」という名言(迷言)があり、そんなに気にしていなかったのだが、ズボラな性格は相変わらずだったので、単位計算をそんなに真剣にやらなかった挙句5年生になっても取得しなければならない単位が結構あった。「3年生のうちに単位を取り切ったので、4年生はゼミだけです!」みたいな大学生って、どこに行ったら見つけられるんですか???
加えて大学4年生、5年生時代はカタリバという教育NPOでインターン活動に勤しんでおり、探究でのバイトよりこっちの方がはるかに熱心だった。確か探究でのアルバイトはせいぜい「週2回」ぐらいで、しかも小学生のクラスに入るのは1コマだけだったような。
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大学5年生になった段階では、特段猛烈に「探究学舎に入社したい!!」という気持ちがあったわけではない。確かに勝手知ってるという意味では居心地は良いが、当時の探究学舎は毎年新卒を採用していくほどの規模ではなかった(この時社員は4人でこの年初めて新卒が入社した。僕の唯一の先輩社員ムラちゃんである)。
それにもっと根本的なことを言えば「仮に入社して何するの…?」って話で。この規模の会社であれば、もちろん「授業づくり&講師」という探究事業を担える人材の採用となってくる。
僕はいろんなものを「とことん調べ抜く」のはすごく好きで「新しい知識が増える」ことに喜びを感じる性格だ。だがそれを探究の授業のように「わかりやすく編集する」ことが得意というわけでもなかったし(複雑なものは変に単純化せず、複雑なまま伝えていきたい性質)ましては「面白く子どもたちに伝える」技に長けていたわけでもなかった(むしろ逆で、あまりの授業のつまらなさに子どもが泣いてしまったというトラウマ大事件の話は「探究学舎実録26~敗北を抱きしめて~」を参照あれ)。
こんなどう考えても「授業作り」にも「小学生授業の講師」にも能力なさそうなやつ入社できるの…?てか、仮に入社したとして、講師といえば圧倒的カリスマ塾長のやっちゃんや、新進気鋭のムラちゃん、ふくいけん…そんな名だたる中に首突っ込んで勝負するの?無理じゃね?!
とこんな感じだった。だが一方で、探究を飛び出して就職するとして…何やるの?興味のないことにはトコトンやる気の出ない性分である僕にとって、普通人生の一大イベントとなるはずの就職活動は「サッパリ関心のわかない」類のもの。周りが業界調べたり面接の練習してたりOBOGを訪問してたりエントリーシート書いてても、僕は特に何もしてなかった。面白くなさそうだったので。
まぁ今になって振り返れば「面白くなさそう」とか「関心がわかない」とかテキトーなこと言って面倒なことを避けてるだけで、もっと自分から「面白がっていく」姿勢に欠けていたなぁ…とめちゃくちゃ反省している。どんな会社に入ってもやりたい仕事だけで満ち溢れていることなんてない訳で。自分で周りの環境にアプローチして面白くしていく姿勢がなかったら、どんだけ魅力的な職場で働いても満足できないよなと。なのでタイムマシンで当時の自分に会えたら、とりあえず殴っときます。
でなわけで。このままいけば(おそらく)年が明けても探究にいることになるけど、そもそも入社できるかどうかも不透明。塾長はじめ役員たちと面談する機会も特にない。かといって積極的に就職活動する訳でもなく、相変わらず探究の外でインターン活動に時間を費やし、大学でわんさか残っていた単位を取るのにあくせくしてる。全然人生を積極的に選んでない。本当に迷惑極まりない。ほんと当時の自分をブン殴りたい。
1個あえて積極的な理由を書くとすれば、教育NPOでインターンしていたり、仲間内でよく「学問をライトに学ぶ勉強会」とかやっていたこともあって、曲がりなりにも「教育」という世界に対する興味とこだわりはあったんじゃないかと。もう少し細かく書けば、自分の経験とも相まって「学問の面白さを知る、それが分かち合える」ことにこだわりがあった(し今もある)。だから学校の先生になりたいとはさっぱり思ってなかったし、いわゆる「学習塾」で受験指導したいとも思ってなかった。大変そうだし、「面白さ」にあまり力点を置いてない世界に見えたから(学校には学校の役割があるので、それはそれで大事なんだが)。
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前にも書いたが「人生における正しい選択などない。選択の後、その選択が最適になるように適切な行動を取る。すると後から振り返って、結果的にその選択が「正しい選択」となる」のだ。要はどんな選択をするのか?入社するもしないも半々。
全てを決めた2017年夏
転機となったのは2017年夏の探究スペシャル。この年もバイトのGF(テーブルごとで子どもたちをサポートするスタッフ)として幾つかの授業に入った。そしてこの年の5-6月にウィークリー(通塾の授業)で実施した授業が、2日間6コマのパッケージに編集され、リリースされた。経済金融編という授業である。
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起業、投資、格差とは?経済・金融の仕組みに迫る!
お金持ちの仕事に隠された、秘密をさぐる。通貨や株式など、経済・金融を支える仕組みはいつどうやって生まれたのか? そもそも経済はどんな仕組みで回っているのか? 投資家や起業家はどんな発想でお金を稼いでいるのか? 経済・金融の仕組みを楽しく学べる超入門プログラムです。
今となっては探究で歴史系の授業を作ることがとても多いので意外かもしれないが、僕自身は大学では経済学を専攻していた。といっても学部が社会科学全般を扱うところだったので経済学だけを学んでいた訳ではないが、ゼミはマクロ経済・国際金融だった(一応こう見えてゼミ長だったんですよ…笑)。
それなりに経済学を勉強してた身からすると「いやぁ〜、小学生相手に経済ってテーマはちょっと無理があるって…絶対みんな頭の中「???」ってなるでしょ」と思ってた。思ってたのだが。
そんなことは全くなかった。
授業をしていた塾長は、まず初日の時点で子どもたちを散々焚き付けて「社長ってすげーー!!」「お金持ちになりてー!!」と爆発させてた。なんといっても最大の必殺技は。
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現金だ。「みんな100万円とか見たことないでしょ!?イメージできないでしょ!?」と子どもたちをけしかけて、ポケットから帯付きの100万円の札束を見せる。すると子どもたちの目が露骨に「¥」マークに切り替わる。抽象的な「100万円」という概念と、目の前の「福沢諭吉×100枚」には雲泥の差があるのだ。
塾長「みんなお金持ちになりたいかーー!!」
子どもたち「はーーーーーーーいいい!!」
人が何かに興味を持つきっかけなんて、極論なんでもいいのだ。事実ここから先、子どもたちは驚くほど授業に食いついていた。朝の段階では「別に経済なんて興味な〜い」と言っていた子どももちらほらいたにも関わらず、だ。
しかもこの経済金融編のすごいところは、ここまで散々「お金を稼ぐこと」を煽り立てながら、2日目の後半には資本主義が必然的にもたらす「格差の現実」を子どもたちにぶつけていたことだ。
日本では到底見ることもないような貧困が世界には存在している。いろんな画像や動画も交えながら、おちゃらけモードから打って変わって「世界のリアルな姿」をマジトーンで語る塾長の姿に、教室が静まり返ったのを今でも覚えている。その現実を作り出した「”もっと稼ぎたい!!”というマネーゲーム」についさっきまで自分たちも染まっていた子どもたちは、たった2日間で資本主義の「光と闇」をジェットコースターのように追体験した。
最終章では「どうすれば格差のない世の中を作れるのか?」「いや、そもそも格差をなくすことはできるのか?なくすべきなのか?」「許容できる不平等のラインとはどこなのか?」そんな答えのない議論を熱心に繰り広げていた。
このような2日間をいちスタッフとして体験した僕がもった感想はシンプルだ。
完敗だ。
経済学という一見するととっつきにくそうなジャンルで、ここまで子どもを熱狂させ、そして深く思考させる授業が今まであっただろうか?自分は無意識のうちに「そんな難しいこと子どもには考えられない」なんて決めつけてなかっただろうか?でもそれは、あまりに傲慢な、大人本位な考え方ではなかっただろうか?
子どもにはそもそも「自分たちで問いを立て、そこに向き合う」素地が十分身についている。あとはどう前提や場を整えてあげられるか?どう学びのプロセスを形作っていけるか、伴走していけるか?大事なのはそこなのではないか?
そんなことをグルグル考える数日間を過ごした挙句、夏が終わり9月に入った時「半々かなぁ」なんてナメて考えていた僕は、明確に決めた。
探究学舎に入社しよう。入社したい!
塾長のようなレベルに追いつけるかどうかはわからない。でも「追いついてみたい!」と猛烈に思った。特にロジックがある訳ではない。そんなふうに心が動いたのだ。
さぁ、こんな経緯で入社を決めたのだが、決めたから入れるほど世の中は単純ではない。ここからまたいろんな出来事があった上で半年後の2018年4月に、晴れて探究学舎の新卒第2号として入社するのだが、それはまた次のお話で。