2021年5月の読書振り返り
ちょっと一つ一つの感想が長すぎました。
TROUBLE MAKERS
装丁がケバケバしいので購入を少し悩んだが、ペラペラ立ち読みした感じ、面白そうだったので購入。
シリコンバレー黎明期の様子を綴った内容で、マイク・マークラや、ATARIの成り立ちなどを詳しく知れたのでよかった。黎明期ならではのカオス。今ならばちょっと成立しないようなこともあるけど、圧倒的な熱量は読んでて感銘を受けるというか。イノベーションを起こすにはこれくらいじゃないとなと改めて思った。
『調べるお』でもこの本について書いたので、ぜひご覧いただければと。
Smart City 5.0 地方創生を加速する都市 OS
何気なくツイートしたら思っていた以上に反応があった本。「地方創生」「地方スタートアップ」「スマートシティ」あたりを最近興味持って調べてたのでこの本を購入。発売は2年前なので、間にコロナを挟んでいるので状況は少し違うかもしれないが、参考になった。
地方都市の活性化というと「工場誘致」や「コールセンター設置」などをつい浮かべてしまうが、そういうことをしててもしょうがないなと悟った。高付加価値の産業が根付かないと。
ちょっと前に地方でスタートアップが盛り上がるには?という趣旨のブログを書いたけど、その中で「行政のやる気」「都市の規模」「若者の数」「ロールモデル」の4つの要素が必要かもしれないと書いた。本書では会津でのスマートシティ化の話が中心だが、会津には会津大学があり、やはりそれが重要だと書いてあった。地方活性化には当地に大学があるかどうかがカギなのは間違いない。
ま、そんなわけで、本書を読みながら自分なりの「地方創生案」を考えてみると面白いと思います。僕もやってみよ。
チョンキンマンション: 世界の真ん中にあるゲットーの人類学
いくつかの映画や書籍にもなっている(らしい)香港のチョンキンマンション。僕はその存在を知らなかったけど、なんか興味がそそられて読んでみることにした。
本書は2011年年に発行され、今年日本語版が発売された。巻末に「一〇年後のチョンキンマンション 日本語版のあとがきにかえて」というのが追加されている。
香港に住む著者が2006〜2009年くらいにチョンキンマンションを調査し、それをまとめたのが本書の内容。この15年で香港は大きく変わってしまったと思うので、その点が懸念ではあるが、かつての香港の様子を知るには良い本なのではないだろうか。
昨今、中国にアフリカ人貿易商がやってきて、買い付けを行っているというのは知っていた。しかしその前段として、香港がそういう役割だったということを本書を通じて知った。アフリカ人貿易商やインド、パキスタンあたりの貿易商などが集うのがチョンキンマンション。混沌としながらも独自の秩序があり、興味深い場所だなと思った(行ってみたいかというと、それは別の話...笑)。
フィッシュ・アンド・チップスの歴史: 英国の食と移民
15年前くらいにロンドンに行ったんですが、当然のようにフィッシュアンドチップスを食べました。4泊くらいしたけど毎日食べた。それくらい美味しかったんですよね。写真はその時のもの。伝わり辛いけど、びっくりするくらいフィッシュが大きくて、ポテトもどっさりだった。
「当然のように」と書いたが、イギリスの食べ物といえば当然「フィッシュアンドチップス」を思い浮かべた。逆にそれ以外思いつかない。それくらいイギリス=フィッシュアンドチップスという印象。しかし、本書を読むとその図式が確立するまでには様々な経緯があったことがわかる。
フィッシュアンドチップスという料理を通して、産業革命以降のイギリスの社会の雰囲気がわかる気がする一冊。切り口の違う歴史本として面白かったし、何よりフィッシュアンドチップスがめちゃくちゃ食べたくなった。
カルティエ 最強のブランド創造経営
1,2年前だったか「D2CブランドがLVMH目指すとか笑っちゃうよ」みたいなコメントをどこかで目にしたことがあった。確かに「笑っちゃう」のもわかる気がする。上っ面の、量産型の「D2C」が多すぎる。そこには「ハック」はあっても「哲学」はない(もしくは薄い)。
当然のことながら、それらは淘汰されていくと思う。そして残るのは「哲学」があり、本気のモノ作りをしてるとこだけなんじゃないかなと。一段、二段上のレベルを目指さないと生き残れない気がするし、その中でラグジュアリーブランドの戦略はとても参考になるんじゃないかと思ってる。
本書はリシュモン傘下のブランドの成り立ちやこだわり、戦略などが端的に掲載されている。D2Cのブランド向上だけでなく、企業としてどういった打ち出し方、考え方をすれば「ブランド」になるかのヒントが結構あった気がする。
多様な社会はなぜ難しいか
「ダイバーシティ」とサブタイトルにはあるが、主にジェンダー中心に綴られた内容。
今月は地方創生の本(Smart City 5.0)も読んだが、「地方活性化」と「女性の活躍」は似てる部分あるなぁと思った。地方活性化させる=工場やコールセンターを作ろうという安易なイメージを持つ人、企業が多そうだが、活性化してないとこを活性化させるにあたって、「安い労働力」的な施策が多すぎるなと。『Smart City 5.0』にも「そういう考えは間違っている。価値の高い仕事を地方に根付かせないと意味はない」という趣旨のことが書いてあって激しく賛同したが、女性も同じだなと。この本を読んで改めて強く感じた。「女性の活躍」施策の結果、大量の非正規雇用者が誕生し、昨年からのコロナ禍で非正規雇用者から切られてしまい、結果彼女たちは困窮してる。
本書を読んで、様々な施策が「これじゃない」んだなと思った。
善意の人々による浅い理解は、悪意ある人々からの絶対的な誤解よりも腹立たしいものだ。生ぬるい受け入れは、はっきりとした拒絶よりもはるかに当惑させられる。
話は変わるが、後半の方にキング牧師のこの言葉が紹介されていた。まさに僕は「善意の人の浅い理解」の人だと思った。誰もが最初は「浅い知識、浅い理解」だと思うので、時間をかけて理解度をあげていくのが正しい。
思い返せば、僕も「善意/浅い理解」で奥さんを苦しめたなぁと反省するのだが、対話を続けながらだいぶ改善していったと思う。本書にもある、家事などの「無償労働」のあたりなど昔はかなり理解が浅かった。無理解→手伝う→分担と概念が改善していってると思う。「手伝う」は間違いだと気づくのには時間がかかった。
「手伝ってる」人は善人ではあると思う。それがゆえに事故る。でも対話を続けたり、本などで知識をつけていけばきっと理解するはず。
「育休」でも「善意の人の浅い理解」は多い気がしている。最近では育休をとる男性も増えている。その際に「育休しっかり取ってくださいね。ゆっくり休んで!」みたいなコメントする人はいる。他の人は「育休みんな取ればいいのに。休めるんだから」と言ってた人もいた。彼らはたぶん悪い人ではない。ただ理解はまだ浅いんだろうなと感じた。そもそも「育児休暇」というネーミングは悪いのかもしれないね。
徐々に「育休」周辺の理解は深まってきているとは思うが、一方で「結婚してるのに子供がいない」夫婦はそれなりに生き辛かったりもする。まぁこのあたり書いていくとどんどん本書の感想から遠ざかってしまうので止めておくが、本書のように「思考の出発点」になる本は有益だなぁと思いました。
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