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カレーが生み出す街と人との相互作用

『つながるカレー コミュニケーションを「味わう」場所をつくる』
加藤文俊・木村健世・木村亜維子 著 読了

加藤先生の〝カリーキャラバン〟に二度お邪魔して(前回は迂闊にも告知を見逃してしまった)、この活動のルーツが知りたくなった。そこで『つながるカレー』を読んだ。墨東大学での活動が起点となって生まれていった街中でカレーをつくり、無償で振る舞うというプロジェクト。

やがてその手法を使って、街に出ていき、あるいは招待され「カレーキャラバン」として日本各地を巡るようになる。
このあたりの経緯が本書に収められている。そのドキュメンタリーというかルポルタージュは、新しい出合いと活動の進化に溢れ初々しい。
また、「クローブ犬は考える」というブログにも詳細が紹介されている。

つくられるカレーがいかに即興性に満ちているか。そこに街の人々がどのように関わっていくのか。予測できないその面白さにはまり、徐々に本格化していくキャラバンの実装品たち。

この自前のプロジェクトは、その大いなる未来について語りながら、残念ながら実際にはそうはならなかった。共同主宰である木村さんたちが参加できなくなった(理由は知らない)こととコロナ禍がこのプロジェクトを頓挫させたのだ。
この本で意気込んでいたようにキャラバンが続いていたらどうなっただろう。

が、しかし、現在、加藤先生が行っているソロ活動〝カリーキャラバン〟も十分に楽しい。一五〇文字の文章を認め、その対価として先生のカリーを頬張る。この僅かな文章たちの集積は、やがて〝市井のカレー史〟といった輪郭をもち始めるのではないか。
自分のカレーストーリーをこの史書に収めたい人は、一度、〝カリーキャラバン〟に参加してみるといい。


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