リップヴァンウィンクルの花嫁
この映画を初めて見たのは、もう4年ほど前になります。
1番最初に見た時は、悲しい気持ちがいっぱいに胸の中に広がりました。
だけど、まだ言葉にできない気持ちがずっと心の中に残っているようで、しばらくして2回目を見ました。
そして、またしばらくして3回目も見ました。
今では何回見返したのかわからないくらい大好きな作品になっています。
サブスクで見てたけど、手元にも置いておきたくてDVDも買いました。
こんなふうに、心に染み込んでくるように、どんどんと好きになっていく作品は初めてでした。
人気の監督さん、岩井俊二さんの脚本、監督の作品です。
この作品は「劇場版」と全6話からなる「ドラマ版」とがあります。
私はどちらも見ましたが、「劇場版」の方がずっと好きです。
ドラマ版は映画公開の後に作られたそうですが、映画でのすごく大切だと私が思うシーンがいくつかカットされているし、結局、真相が示されないまま終わっているんです。すごく残念に思いました。
付け足されたシーンもあるけど、カットされたシーンの方が、うんと大切だったと私は思いました。
物語は前半と後半でガラリと違う内容になっています。
もちろん1つの物語なので繋がっているお話なんですが、いろんな意味で前半と後半が対比され、視聴者へ問いを送られているようなそんな気がします。
もし、前半を見ていて好みじゃないと感じても、ぜひぜひ後半まで見てから判断してもらいたい…そう強く思います。
私は毎回、前半を見ているととても悲しい気持ちになります。
1人でいるよりも2人でいる方がずっと寂しい、そう思わずにはいられなくて。
こんなのは絶対にイヤだと思いました。
お見合いサイトで知り合った主人公の七海さんとお相手の男性にまつわる物語が前半です。
後半はその後の物語となり、とあるバイト先で知り合った女性、真白さんとの物語になっています。
前半と後半では主人公の七海さんの表情の違いがどんどん浮き彫りになっていきます。
後半は、ありのままの自分でいること、それを受け入れてもらっている安心感、幸福感に満ちているように思えました。
心からの安心した笑顔なんです。
真白さんは厳しい現実の中で生きてきた人でした。
自分は傷だらけでボロボロなのに、自分の傷には無頓着で、自分が大切だと思うものには簡単に命さえ差し出してしまいそうな、そんな女性なんです。
七海さんは、そんな真白さんを心配して泣いてしまいます。もっと自分を大切にしてほしいって。
「私、この涙のためならなんだってすてられる」
泣いている七海さんを見て口にした真白さんの言葉です。
真白さんは大切にされることに慣れていないんです。
真白さんを見ていると胸が締め付けられるように痛くなります。
(ドラマ版ではこのシーンもカットされてるんです…どうしてなんだろう…真白さんのおかれてきた状況と心情がすごく伝わってくるし、2人の気持ちが向き合った大切なシーンだと思うんだけどな…)
前半と後半の対比。
私は圧倒的に後半の世界に属していたい、そう思います。
大切で一緒にいて一緒に安心して、心から笑える、そんな場所にいたいです。
2人の間にあっものは、友情なのか恋なのか、正直言って私にはよくわからないし、何もカタチにはめる必要もないと思います。
恋と友情、どちらとも少しずつ違って、2人の間だからこそ生まれた2人だけの感情、というのが1番しっくりくる気がします。
ギリギリな状況で出会い、特別な絆を結んだ2人だからこそ、それはとても尊い絆に思います。
そして、ラスト。
目には見えない思い出の欠片を慈しむような、寂しさと共にありながらも、自身の足でしっかり立とうとする清々しさも私は好きです。
今回久しぶりに見て、やっぱり大好きな作品だな〜と思いました。
見れてよかった!
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