読書感想文:ラギッドガール/飛浩隆
ラギッド・ガール。
久々に美味しい本だったと思います。仕事ではなく趣味に関する読書量が格段に減っているのも一因ですが。
短編連作だったことに後記を読むまで気付きませんでした、普通に読んでた。
大抵、私は本を読むとき、つまみ食いか飛ばし読みで、一言一句丁寧に拾うということを余程咀嚼したい気分のとき以外はしないのですが、今回は咀嚼する気分で味わいました。
内容についての言及は野暮なのでしませんが、読んだときに何か宝石のようなものがきらめく気分がします、絢爛としているけれど、澱み、流れ、巡り、咬み、敲き、撲り、荒ぶる。さまざまな要素が錯綜していると思いますが、それらは素因として描かれていて、容赦なく、出来事や現象に押しつぶされていく。
煌く気分はディレーニィを思い出すのですが、あまり余人と比較したくはないと思います。むしろ、最盛期のメリット(ペーパーバックのファンタジー作家)を思い起こさせる。比較したくないと言いながら、やっぱり誰かの名前を出しているってどういうことだ。
とりあえず、楽しい本でした。
内容について読書感想文を書くことも、事細かに解説することも出来ないではないのですが、興味ある人は本作を読めばいいと思います。
SFが苦手でも、いまどき現実の方がSFで、数年前を思い起こせば現在が現実とは思えないことが多々ある昨今、情報的似姿の話は、決して荒唐無稽な夢物語ではないでしょう。けれど作者本人が言っているように「目新しい」よりも「美しくあること、残酷であること、清冽であること」がこれほど煌びやかで鮮烈であり、印象に残るものであるのも、大したことであると思う。
三作目が楽しみ。
本当に完結編になるのか、ならないのか、セオリーで行けば、仮想現実が現実を侵食するのが正しい道筋だと思うけれど、それすらも裏切ってくれそうで、とても楽しみにしています。