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野菜か?果実か? おいしく進化し単価上昇するトマト

世の中の様々な値段に関わる疑問を解き明かす「値段の方程式」。今回のテーマは「おいしく進化 トマトの単価が上昇」。夏野菜の彩りの主役トマトは最近、甘さがぐんと増しておいしくなっていますよね。 

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

アメリカで「トマト裁判」

かつてトマトが野菜か果物かを巡り裁判があった、ということはご存じですか?。 130年ほど前のアメリカで、輸入にかかる関税法が改正され、 野菜の税金が引き上げられました。一方、果物はゼロだったため、関税を払いたくない輸入業者がトマトは果物だと主張し、裁判になったのです。 

結果はどうなったんでしょうか。 「トマトは野菜」という判決が出ました。 判決文には「トマトは野菜畑で育てられていて、食事には出されるが、 デザートにはならないから野菜である」と書かれていたそうです。

高単価品の比率増える

話はトマトの単価に戻ります。調査会社のインテージが店頭の値段を分析した単価350円以上のシェアは2021年に15.7%と調査を開始した2013年度と比べて 6.2ポイント上昇しています。 500円以上のものも少しずつですが、存在感が出始めていますね。 一方、200円未満の割合が年々縮小しているのが下のグラフを見てもわかると思います。

これは単純に需給バランスで値段が上がっているというわけではないんです。 タキイ種苗の調査によるとトマトは好きな野菜ランキングで1位。 その理由として「おいしいから」のほかに、 「健康によいと思うから」、「栄養があると思うから」と 付加価値が注目されているんです。 

 トマトは付加価値を高めて単価を上げているんですね。付加価値の一つ、甘さが増すようになったのはここ30年ぐらいの動きです。 1985年に登場した「桃太郎トマト」がきっかけだといわれています。 その後、水を少なくして栽培する方法でトマトにストレスを駆けると甘さが増し、 皮が固くなり熟してからでも出荷できるため、 おいしいものが流通するようになりました。
最近ではカゴメが血流改善効果が期待されるリコピンの成分を多く含むトマトを発売、スーパーの売れ筋になっています。サナテックシードは血圧上昇を抑えるなどの効果があるとされるギャバの含有量を従来の4~5倍に高めたトマトを販売しています。

東京の大田市場で多くのトマトを取り扱う青果仲卸、 三秀が扱うトマトの商品数はこの10年でおよそ100増え、今では400を超えています。7年前に登場、野菜ソムリエが数あるトマトの中で グランプリに選んだという「OSMICトマト」を取材してきました。

一個づつ糖度を測定し出荷

訪れたのは茨城県稲敷市の農場。 冷暖房を完備し、日照時間なども含めて 徹底した管理の下でトマトは育てられています。収穫したものは一個ずつ、すべてのトマトの糖度を計り甘さにばらつきがない形で販売。その値段も糖度によって決まっています。

実際に1箱(16個入り)2300円のトマトを試食しました。糖度12度(普通のトマトは7~8度、標準的なイチゴで10〜11度とされる)のものでしたが、本当に甘かったです。特徴について担当者は「トマトにとって最適な環境をハウスの設備で整えて、植物本来の力を発揮させるためのオリジナルの土の両方を使い高糖度のトマトを栽培しています」 と話します。こうした高付加価値トマトの栽培は日本が世界でも飛び抜けた栽培技術を持っています。 日本は収穫量を引き上げ数を追うのではなく、味や機能を引き上げて利益を得るという戦略です。
今日の値段の方程式です。

価格上昇は日本人が甘さや栄養価を追及するという「消費者のし好追求」と、 収穫量ではないところで利益を上げようとする「生産者の利潤確保」が 掛け合わされて導き出されたわけですね。 最後にこんな食べられ方もあるという事例を紹介したいと思います。 6月にホテル雅叙園東京がOSMICトマトとコラボしてトマトのチーズケーキやコンポートなどトマト尽くしの「アフタヌーンティー」を提供しています。 お値段は5280円。

スイーツとして食べるトマトも

これは一度食べてみたくなりますね。 最初に紹介したトマト裁判の判決文では「トマトは食事には出されるが、デザートにはならないから野菜である」となっていました。スイーツになっているトマトを裁判官が食べていたら判決は変わり、「トマトは果実」というのが定着していたかもしれませんね。



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