
寝台列車で辿りついた遠くの町を、あてもなく歩く
サンライズ瀬戸・出雲という寝台列車があるのをご存知だろうか。
東京〜岡山間を14両編成で走る寝台特急である。岡山からは7両編成ずつに分割され、それぞれ山陰方面、四国方面へと出発する。
これまで何度もサンライズ特急の寝台券を買い求めたものの、いつも完売。
超人気の寝台特急で、きっぷ入手はなかなか困難。
10年ほど前にやっと取れたと喜んでみたものの、インフルエンザで泣く泣く乗れず。ああ、私とサンライズは縁がないかなと半ば諦めていたけれど。
なんとなくぶらっと、まさかと思ってみどりの窓口に並んでみる。
奇跡は起こった。
なんと、希望のB寝台シングルの2階が1室だけ空いていたのだ。
周りを憚らず、カウンターでガッツポーズを決めてしまう。
空いていたのは、岡山までの10月8日分。
岡山下車では瀬戸大橋から望む朝焼けは拝めないけど、それでもこれは千載一遇のチャンスだ。
この際、行き先はどこでもいい。
ここで予約しなけりゃ女がすたる。

▼寝台特急サンライズ出雲、いざ乗り込み
10月8日。ついに来たサンライズ出雲の乗車日。出発時刻は東京発20時50分。
あいにく曇りで翌日は雨という嫌な天候に見舞われた。
寝っ転がりながら天井の星を見るという願いは叶えられそうにないが、とにかく乗る。

この2階部分に私の部屋がある


ここが私の特等席。
ちなみにA寝台は、グリーン車みたいな広々仕様。

車内は小さなホテルみたいで、ご満悦。

狭いけれど、これで十分!
落ち着きのあるウッディな室内インテリア

毛布と枕、着替えも標準装備

横に荷物も置けて快適!
ベッドの下のヒーターは温度調節可能。
何より寝ながらの車窓が最大の楽しみ

B寝台券は11,200円。ホテル代みたいなものだ。
乗車券は別で東京→岡山まで10,670円
合計21,870円なり

お魚大好き

星空を完全に断念する

隣の部屋の音もほぼ聞こえず、快適。
ガラス窓に車内の設備が写り込んでる。

読むのは京極夏彦の「虚談」。
薄暗い寝台特急の中、
ちょっと怖い気持ちになれる、
雰囲気満点の読書タイム。

▼流れる景色に旅情ほんわり
本を置いて、時折、外を眺めてみる。
知らない町の知らない人々の暮らしが流れていく。


iPhoneのロック画面は、位置情報で今どこに居るかが示される。
便利だなあと、でも苦笑い。
鉄道好きの女友だちにLINEする。
しばらくすると彼女から返信。
「01:12 もうすぐ浜松らしいよ」
彼女が見たのは位置情報ではなく、時刻表である。
うんうん。これこそ旅情だ。

豊橋通過。そろそろ眠くなってきた。
タイマーに起こされる前、うっすらと明るくなった空に目が覚めた。

段々、朝の景色に変わっていく



岡山まで、あと数分で到着だ。
6時27分、岡山到着。
さて、ここでおりてどうするか。
サンライズに乗れただけでおなかいっぱい。

でもせっかく来たんだから、まさかこのまま帰りはしない。
サンライズに乗ること以外、私にはあと2つ、この旅の目的があるのだから。

▼ふたつめの目的〜ぶどうを買う
秋といえばぶどう。
最近はシャインマスカットが大流行で、かくいう私も大好物だ。
昨年、noterのおーじろーさんから「シャインマスカットより瀬戸ジャイアンツが仰天美味」と教えてもらった。
ただし、京阪神地区より東には出回っていないらしい。
そこで無理に送っていただいた「瀬戸ジャイアンツ」を食したところ、舌がとろけた。ほっぺが蒸発した。それほど歓喜な美味しさにノックダウン!
瀬戸ジャイアンツはシャインマスカットよりスッキリした味わいの大粒ブドウながら、ふくよかな甘さとジューシーさ。忘れがたい魅力だったのである
そりゃあ取り寄せで買うことはできるけど、すこぶる高い。
どうせなら直売所で美味しく、お安く買いたいに決まってる。
だから行く。
なんのための岡山か。瀬戸ジャイアンツありきの岡山なのだ。
駅近くの直売所が開店するまで駅でのらりくらりと時間をつぶし、直売所まで歩いて出かける。とにかく私は歩きたい。
乗り物(鉄道)も好きだけど、歩いて町ブラするのはめちゃくちゃ楽しい。

(写真は夕刻撮影分を掲載)


安い! 美味しそう!
でも瀬戸ジャイアンツ、数が少ないな……。

このアドバイス、すごく助かる
瀬戸ジャイアンツを5房とシャインマスカットを2房買い、宅配にする。
直売所で買ったから、値段は一般店よりずっとずっとお安いのだ。
ああ満足、大満足。
サンライズに乗って、瀬戸ジャイアンツ買って、これで十分。
観光はもういいや。
どうせ何も調べずに来たのだからまた今度。
サンライズと瀬戸ジャイアンツを制覇したら気が抜けた。
つくづく勿体ない体質である。

▼適当に、あてもなく岡山市街をブラブラする
でも夫から「勿体ない、何しに行ったの」って言われるだろうし、岡山城だけは目に焼き付けておこう。
岡山駅からは路面電車に乗っていくようだが、地図を見ると徒歩圏内。
もちろん歩く。迷子になったらなったで全然OK。どこまでも迷ってやる。

ほっこりするよなレトロ感

今日は祝日だから親子連れや観光客で賑わっている


正真正銘、レコードが置いてある!
約1時間ほど寄り道物色。
70年代以降のアイドルものが充実。涙モノ

神保町の風景にどこか似ている。

洋食屋でもなく中華屋でもない。
よっぽど美味しいんだろうな。
めっちゃ安い。
私はパスする。まだ食べない。


▼壮大な岡山城とエビ飯に「?」




ここに行く




このビジュながら、味が薄くて何味かもわからず。
疲れのせいで私、味覚マヒしてるの?

▼最後の目的 深夜バスに乗る
今回の旅の目的はこの3つ。
1)サンライズ出雲に乗ること
2)ぶどう「瀬戸ジャイアンツ」を買うこと
3)深夜バス WILLER EXPRESSに乗ること
本当は、「瀬戸ジャイアンツ」さえ買えばとんぼ返りでも良かった。
でも一度は乗ってみたい深夜バスWILLER号が倉敷から出ているとわかり、ついに乗車を果たすことにしたのだ。
これこれ、このピンクの深夜バス。


隣席が気にならない仕様。

(ピントずれご容赦)
でもおよそ12時間の深夜バスはやっぱり疲れた。足が伸ばせるようになってはいるけど、まあそれなり。


家に帰って届いた瀬戸ジャイアンツ(右)を見る。
一房700グラムほどでずっしり大きい。一粒の大きさはピンポン玉小でめっちゃ大きい。これで1200円なんて超破格である。さすが直売所。
味比較のために買ったシャインマスカットも、小房ながら超安値。
5房買った瀬戸ジャイアンツ、もちろん贅沢に完食済みだ。
2種とも種なし、皮ごと食べられて手間なし超美味。
あー疲れた。
2夜連続での乗り物泊は、さすがにキツイわ。
了
*ちなみに深夜バス乗車(倉敷20時)までの時間、何をしてたかを告白
iPhoneの充電が切れ、充電器が見つからずに駅の充電コーナー付き喫茶店でウトウトしながら数時間待機。その後、あてもなく町ブラしながら路面電車に乗ったりして過ごし、倉敷に行って観光もせずストリートミュージシャンの歌声にうっとりし、倉敷駅前のモールでチキン南蛮を食べたらもう19時30分を過ぎていた。
本当はきっと素晴らしい街・岡山よ、楽しみきれずごめんなさい。
*サムネ写真はPhotoACより峠ちゃんさんの写真をお借りしました