【読書感想】 「自己信頼」 ラルフ・ウォルドー・エマソン著 伊東奈美子訳
伊東奈美子さんの翻訳された、エマソン氏の「自己信頼」を読みました。タイトルにある「自己」とは何なのか考えながら読むのがおすすめです。読んだ本の記憶が薄れないうちに、心に残った部分を書き留めておきます。
言葉が力強くわかりやすい、比喩が美しい
この本を読んでいて、とても力強い言葉が印象的でした。まるで目の前でエマソンが演説しているような、彼は牧師だったのでもしかすると説教しているような、感覚になりながらこの本をめくっていました。分量は全体で100ページほどであり、口語的な表現が多いので、さらっと読むのであれば2時間ほどで読めてしまいます。その点でも、彼の話を聞いているような印象を受ける本でした。翻訳された伊東さんもその点に留意したと言うような趣旨のことを巻末に書かれていました。
また、この本は考え方や心など抽象的なものを語っているので、数値などは一切登場しません。その代わり、比喩が多く使われており、その例えが美しいなと思いながら読んでおりました。
印象に残った箇所
引用をして印象に残った箇所を記していきます。
自分というものを信じて適宜判断することは結果として何か遠くに定めた目標に対して蛇行しているように見えるかもしれないが、自己を本当に信じて決めたことであれば自然と遠くの目標に向かって後悔は進んでいくものだという励ましと捉えました。
花のようにただそこに咲くだけで美しくあれ、という歌詞が聞こえてきそうな言葉です。だから人は咲いている花や、新芽に心惹かれるのかもしれませんね。
ただ、自分を信じ切ることは難しい。本当に自分を信じ切った結果、人に迷惑をかけてしまったとしたらそれは自己の望む結末ではない。未来は想像できないのだから、自己の信じたことを決めてその判断に対する結果も受け止めて、というのは実際に非常に難しいことです。私は、皆がやっていることや他者に指示してもらった事をすることで、結果の責任を人にあずけてしまいたい。そんな本心に寄り添ってくれる部分かなと思います。
「パパラギ」という本を思い出しました。記憶が定かではないですが太平洋のどこかの島の村町が島に入ってくる西洋文明に対して思うことを講演されていた内容が、まさに上に引用したようなものだったと思います。つまり自分で選び取ってきた生活、まさに「自己」を信じよ。といったことをあの村町がおっしゃっていたのだなということを、この文を見て改めて思いました。時系列的には「パパラギ」の方がエマソンよりも後なので、「パパラギ」を語った村町もエマソンに影響を受けたのかもしれません。
これはエマソンではなく、翻訳を行なった伊東さんの文なのですが、エマソンの言葉は解釈のしようによっては自分のエゴを振り翳しても良いといっているように聞こえてしまう場合があるかもしれないと私も思いました。最近の自己啓発風潮でも良く聞く「自分に正直に」という言葉は、心が疲れている時に聞くととても魅力的な甘言に聞こえます。ただ、ここでの「自己信頼」が意味する「自分で選択をし、それを信じ切って生きる。」ということは「人に判断してもらったレールの上をいく人生」よりよっぽど大変だろうなとも思います。
なんだか日常に飲まれていると、「自己信頼」の本懐をすぐに忘れていきそうなのでメモに残しました。それほど長くもないので、自分に喝を入れたい時にはまた読んでもいいのかもしれません。
ここに記しているのはあくまで個人の感想です。本の内容についての誤解等にはご容赦ください。