第1章 医局と教育 『中堅放射線治療医が見てきた医局と資格 (仮)』の草案
過去の内容はこちらのマガジンに保管しています。
今日は第1章の続き。医局の機能について話します。
教育とその他が中心ですね。
本文はここから。
そして教育です。
これはどんな分野でも共通していますね。次世代の人材が育たないことには、その分野の発展はおろか、質の維持も見込めません。教育を通じて、後進の知識や技術の向上が図られることで、その分野の持続的発展が可能になるのです。特に医療分野に関しては、未来の医療の質を担保するために、教育は重要な意味を持ちます。
次世代の医師に伝えるべきことはたくさんあります。医師としての知識や技術はもちろん、患者さんとのコミュニケーション能力も必要です。さらには、研究の方法や、その成果を学会や論文として発表する方法も、受け継ぐべきスキルです。また、教育の方法そのものも継承されていくべきものです。
ときには、私が過去の本や本書で伝えたいと考えているような、お金やキャリアに関する内容だって、立派な教育になるかもしれません。そう思いたいだけかもしれませんが。
医療は人の命と健康に直接かかわる分野です。よって、医学教育においては、より高い倫理観と責任感が求められます。こうしたことを考えると、教育は私たち医師にとって、非常に重要な業務のひとつだと言えそうです。
確かに、大学の医局に所属していると、上級医や指導医から教育を受けます。
ちなみに、上級医や指導医にも定義があります。厚生労働省の医師臨床研修指導ガイドラインによれば、指導医とは、7年以上の経験があり、指導医講習会を受講する必要があります。上級医は、指導医には該当しない、臨床研修医よりも臨床経験の長い医師です。
研修医や専攻医といった若い先生はもちろん、私のような中堅医師にも教育を受ける機会はたくさんあります。学年が進むと、実際の医療現場で教育を受ける機会はどうしても減ります。ですが、その機会はないわけではありません。例えば学会や講演会などは、教育を受ける貴重なチャンスです。
一方で毎年新たな医師が誕生しますよね。厚生労働省が発表したデータでは、令和6年度の初期臨床研修医の採用実績は9,461人です。どこで働いていても、必ず若い先生と仕事をする機会がありますから、教育と無縁な医師はいないのではないでしょうか。
私もこれまで若い先生に教える機会はたくさんありました。私が勤めている病院では、現時点で若い先生に直接指導する機会はありません。ですが、今後、初期研修医が放射線治療科を選択してくれるかもしれません。また、埼玉医科大学と群馬大学で非常勤講師として医学生向けの講義をさせてもらっています。こうした形で教育に携われるのはありがたいことです。
ここまで考えてきた医局の機能は、臨床、研究、教育でした。この3つは、医局に所属していても、所属していなくても、医師として働く以上は避けて通れない大切な業務です。
では、医局に特徴的な機能は何でしょうか。もう一度、判決文を見てみましょう。『医局の場において教育、研究、診療等が行われている』と記されています。この「等」に含まれる医局の重要な機能が「人事」です。
(1238字)
医局の機能は臨床、研究、教育のほか、人事も重要です。
医局はいわば人材派遣会社の役割を担っています。
次回はその人事機能について書いていこうと思います。
読んでいただきありがとうございました。
髙草木