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神様は、意外と僕たちを見てくれているのかもしれない。

サムネイル:写真ACより(URLはコチラ)

これは、端から見れば大したことはないかもしれない、しかし本人からしたらまるで神様が見ているかのごとき奇跡の連続としか思えない、虫歯との文字通り1mmを争う攻防戦の記録である。

1.ことの始まり

「これは知覚過敏ですね…ん、ちょっと待って?
あの…今すぐ麻酔して削ってみてもいいですか?」


いろいろあって以来、きちんと自分を幸せにしよう、と心に決めてはや半年。
歯列の矯正中なので虫歯に一層気をつけなければならない時期というのもあるが、今までなおざりにしがちだった歯医者さんにも頑張って通うようになった。
というのも、
・小さい頃から、定期検診に通うたび平均3本ほどのペースで虫歯治療される
・親知らずが変に4本揃ってしまったせいで、苦労して抜くはめになる
(抜歯時の手術が大変なのは言わずもがな、抜いた後に一晩中出血が止まらず、朝起きたら血まみれになっていたことも)
という出来事が重なり、この歳になっても未だ歯医者さんへ通うのがトラウマなのである。

しかし、そんなこと言ってるうちに虫歯が見つかってしまうと、矯正にも支障が出て結局大変な目に遭うため、定期検診で問題なしとされていても
「冷たいものがしみる!」
と異常を感じた時点で歯医者さんへ行ってみたのが、つい先日の話。

「あ~、これは知覚過敏ですね。ちょっと処置しておきますね。」
ホッ、虫歯じゃなくてよかった。
そのまま処置してもらい、念のため虫歯があるか併せてチェックしてもらうことに。
とはいえ、前回の定期検診から1カ月足らずのため、特に心配もしていなかったのだが…。

「ん、ちょっと待って?これは…。」
歯医者さんの手が止まり、おもむろに口の中を覗き込まれる。
視線の先には、通院先を変えるたびに毎回違和感を申告していたその歯が。

「あの…すみません、ちょっと怪しいところがあるので今すぐ麻酔して削ってみてもいいですか?」
歯医者さんの説明によると、
・今回診察した歯とは別に、前々からお話をもらっていた箇所に目視で虫歯と疑われる部分を確認した
・ただし、レントゲン写真で診察を進めようとすると、矯正器具を外さなければならず時間がかかる
・もしよければ、このまま麻酔して削り、中の状態を確認させてほしい
とのこと。
「きっと虫歯があるだろうなあ…」と常々感じていた場所なので、こちらとしてもようやく治療の機会がやってきた、という思いでお願いすることに。

そして…。

2.ギリギリセーフ

ブスッ。
グ~ッ。

キュイイーン。
ガリ、ガリガリガリガリ…。
ヴィィィィ~ン。

そして麻酔を注射され、ドリルによる掘削作業が始まった。
「うん、そうか…。」
歯医者さんが中を確認し、そのまま治療を続行する。

ギィィィィ~ン。
ガリガリ、ガリガリ…。

やがて…。
「オオニシさん、思ったより深かったです。神経ギリギリでした。」
治療を終了し、掘削現場の写真とともに説明を受ける。
いわく、もう少しで虫歯が神経に届くところだったため、気づくのが遅かったら神経を抜くハメになっていたとのこと、、、あな恐ろしや。
まさにギリギリセーフ、ケガの功名だったわけである。

「いやあ、本当に来てもらってよかったです。」
いやいや、こちらこそ本当に助かりました、ありがとうございます、とお互いに礼を言いながら、その日はお開きに。
その後の経過も無事大きな問題はなく、無事新しい銀歯がはまり、治療は終了した、のだが…。

3.怪しい影

きっかけは、治療の終わり間際の、こちらの何気ない一言だった。
「あの~、他に怪しそうな歯はありますか?」

それ自体はなんの変哲もない、誰もが歯医者さんで質問するようなことである。
しかし、この発言を機に、ドラマ(?)は一気に動き出す。

「いや、まだ虫歯が残ってる可能性、ありますね…。」
いや、そんな、まさか…。
これだけの治療を受けて、まだ他に虫歯が?
一瞬、聞き間違いかと思ったが、続く歯医者さんの説明を聞いて、素人の自分でもそれは確信に変わった。

矯正を始める直前のレントゲン写真を取り出し、歯医者さんが指さした先にあったのは、歯の中に小さく写る、白い影。
その影が何なのか、僕は知っている。
だって、子どもの頃からさんざん虫歯治療を受けてきたから。
…その影は恐らく、虫歯が作り出した空洞だ。

(しまった、そういえば…。)
実は、心当たりはあった。
というのも、以前、初めてその歯医者さんに定期検診をお願いしたときにも、同じレントゲン写真で虫歯の可能性を指摘されていたからだ。
ただ、そのわずか数カ月前に一度治療を受けていたこともあり、ビビって尻込みした当時の自分はやんわりと再治療を断ってしまったのである。

マズい。
当時から、時間はかなり経過している。
今、どこまで虫歯は進行しているのだろうか?
…とは言っても、いまのところ明らかな自覚症状はない。
「ラッキー、まだ間に合いそうだな」とのんきに考えた僕は、1週間後に診察の予約を入れ、歯医者さんを後にしたのだが…。

4.1mmを争う戦い

ところが、その翌日から事態は急変する。
ピシッ、ズキッ…。
歯が、痛い…?
つい昨日、歯医者さんに指摘された、まさにその歯が。
それは、数多くの虫歯と対峙した経験をもってしても、初めての感覚だった。
でも、まだ痛みを感じる頻度はかなり少ない。
気にしすぎかもと思い、その日は眠りについた。

ズキッ、ズキッ…。
しかし、日を追うごとに痛みは悪化する。
何もしていなくとも痛みを感じ始めるのは、虫歯が神経のすぐそばまで来ているサインだ。
マズい、マズすぎる。
なぜって、ここまで自覚症状が出てしまった虫歯は、基本的には神経を抜く治療をせざるを得ないからだ。
たまらず歯医者さんの予約を前倒ししてもらったが、今度はもう、手遅れかもしれない。
もはや、一刻の猶予もなかった。

そして―。
「ちょっと良くないしみ方みたいですね…。
では、削ってみましょうか。」

治療当日、症状はさらに悪化しており、ほぼ常時、痛みやしみを感じるところまで来ていた。

ブスッ。
グ~ッ。

キュイイーン。
ガリ、ガリガリガリガリ…。
ヴィィィィ~ン。

前回と同じように、麻酔を注射され、掘削作業が始まる。
歯医者さんによると、虫歯が神経まで到達していなければ、まだ治療方法があるとのこと。
しかし、届いていれば…即アウト。

ギィィィィ~ン。
ガリガリ、ガリガリ…。

「うーん…もう少し続けますね。」
途中、中を覗きながら、歯医者さんから声をかけられる。

ギギギギギギギ…。
チュイイイイイイ~ン。
グリグリ、グリグリ…。

やがて…。
「やはり、目の前まで来ていました。
いま細い針で刺そうものなら、神経までブスッといっちゃいますね。
通常なら、もう神経取る状態です。」

ドリルを置いた歯医者さんが、説明を始めた。
ああ、やはりダメか…?
諦めかけていた、その時だった。

「でも、保険適用外ですが、いったん神経を取らないで治療ができそうです。
これから処置しますね。」

まさしく、ミラクル。
まったく違う症状で歯医者さんを訪れたにもかかわらず、神経ギリギリの虫歯を2本も見つけ出した。
しかも自覚症状が出ていた分、前回より際どい攻防戦だったが、首の皮、いや歯の層1mmつながり、すべての神経を死守したのである。

5.治療、完了

そして現在。
おかげ様で両方の歯とも経過は順調で、このまま半年~1年以内に神経が死ななければ大丈夫、という状態まで持ち直した。
これはもう、歯医者さんに感謝しかない。

もしかすると、神様は日頃の行いを見てくれているのかもしれない。
自分をなおざりにせず、違う箇所とはいえ症状が出たタイミングですぐに歯医者さんを訪れたおかげで、手遅れになる前に虫歯が治療できた。

これからは、気になったらすぐに歯医者さんに行こう。
そう心に決めたのもつかの間、他にも冷たいものがしみる箇所が出てきたではないか。
よし、早速予約を取ってみよう。

「ん~、知覚過敏と、磨く力が強すぎて歯が削れているかもですね。
オオニシさん、ちょっと気にし過ぎなところがあるので気をつけてください。」
気にし過ぎって注意されちゃった、とほほ…。
歯を大切にするって、なかなか難しいなあ。

(おわり)

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