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【インクルーシブ・リーダーシップ】リーダーの「仲間外れ」「傍観者」といった行動が、エクスクルージョンを助長する!?(Shore & Chung, 2023)

最近、研究でも仕事でもデータ分析とか数値分析ばかりやっています。分析していると時間があっという間に溶けていきます。。ということで、しばらくぶりにNote再開です。今日はリーダーによるインクルージョン(包摂)とエクスクルージョン(排除)に関する論文です。

Shore, L. M., & Chung, B. G. (2023). Enhancing leader inclusion while preventing social exclusion in the work group. Human Resource Management Review, 33(1), 100902. 


どんな論文?

この論文は、リーダーのインクルージョン(包摂)やエクスクルージョン(排除)に関する論文を統合的に捉え、それぞれを促進する行動やそのメカニズムを理論的に提示したものです。

簡単に言えば、リーダーのインクルージョンは、帰属意識や独自性を促進する行動を通し、「ロールモデル」、「代弁者」、「味方」としての役割を発揮することで、従業員のインクルージョンを高めます。
逆に、リーダーが取る、「仲間外れ」や「傍観者」という行動によって、従業員のエクスクルージョン認識を高めるようです。

英語補足:Ostracizer=仲間外れにする人、Bystander=傍観者、Advocate=代弁者

インクルージョンとの対比で、エクスクルージョン(排除)という言葉が用いられることは多いですが、この論文の特徴は「仲間はずれにする」「傍観者」という、比較的卑近な言葉によって、職場におけるエクスクルージョンが起きることを示した点にあります。

あからさまな差別は、しないよう気にするリーダーも多いのではないかと思いますが、「ちょっと面倒くさいな」という人に対して、リーダーが仲間外れにしたり、同僚が仲間外れをしていることを傍観するということはあり得るのではないかと思います。

著者らによると、統制を効かせようとするコントローラータイプのリーダーは、統制を重視するあまり、意に沿わないメンバーに対して、その影響力をもって仲間はずれにしてしまう危険があるとのこと。

また、同僚における仲間はずれについても言及されます。この状態を放置してしまう「傍観者」的なリーダー行動も、職場のエクスクルージョンを促進してしまうようです。本論文では、以下のように述べられています。

しかし、すべてのリーダ ーが排他的行動を阻止しようと行動するわけではない。リーダーにとっては、その状況を避け、争いに関わらない方がずっと楽なのです。

排他的行動を取るメンバー(学校のいじめっ子みたいなイメージ)に、リーダーが阻止しようとする(学校の先生が介入するイメージ)ことで、逆に面倒なことになる(モンスターペアレンツの逆襲)、という感覚は、わからないでもありません。だから、管理職は大変、、、と言われてしまうのかもしれません。

こうした問題に対して、論文で紹介される「処方箋」こそが、インクルーシブ・リーダーシップの発揮です。メンバーをコントロールしようとせず、話を聞き、メンバーの帰属性と独自性を尊重するようなかかわりこそが大事、というのが、本論文の主たる提案です。

リーダーによるインクルージョン推進の留意点

この論文の著者であるShore氏は、2011年にインクルージョンのモデルを独自性と帰属意識の高低で表現されるマトリックスで表しています。船越(2019)から引用します。

本論文では、リーダーがロールモデルとして、チームメンバーの帰属性と独自性の両方の経験を強化するリーダーシップ行動が重要と説明します。

例えば、リーダーの行動が、独自性を伴わずに帰属性の支援を強調する場合、これは同化(右上の象限)を促進する可能性があります。このとき、メンバーは「馴染まなければならない」というプレッシャーを経験することになる(Shore & Chung, 2021)と指摘します。

加えて、同化はステレオタイプ化 、偏見、差別の増大と関連するため、このリーダーシップ・アプローチは、特に多様性のあるチームにとって有害であ る可能性があるとのこと。

帰属意識なしに独自性を奨励する差別化志向(左下の象限)のリーダー行動は、メンバーに自分が「トークン」(Kanter, 1977)であると感じやすくさせるようです。つまり、特定の社会的カテゴリー(ジェンダーや人種など)に属しているという理由で採用された、特定のプロジェクトを任された、と感じてしまい、チームへの帰属意識を感じにくくなってしまうようです。

また、このタイプのリーダーは、多様性を(偏った形で)重視するあまり、低い帰属意識の経験を作り出していることに気づいていない可能性があるとも指摘されています。

すなわち、リーダーはインクルーシブな行動を通して、チームメンバーの帰属意識と独自性の両方の経験を促進する行動(右下の象限)を一貫して行わなければいけない、と強調しています。


感じたこと

インクルージョンの大切さを説く論文は多いですが、リーダーのメンバーに対する関わり方について、インクルージョンとエクスクルージョンを比較したものは少ないようです。

特に、エクスクルージョンが起こるプロセスや、関連するリーダーの行動として「仲間外れ」や「傍観者」といった行動の危険性に関して言及した研究も少ないため、希少性が高いように思います。

リーダーは、仲間外れの状況をそもそも作らないようなかかわりや、仮に仲間外れが生まれていたら適切に介入する、という役割も求められるのは、一見当たり前ですが、これがなかなか難しいようにも思います。リモートワークが普及すると特に・・・。マネジメントの難易度は高まる一方です(ため息)。


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