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【インクルーシブ・リーダーシップ】ILの代表的な論文② Carmeli et al.,(2010)

今回は、インクルーシブ・リーダーシップ(IL)の調査指標と言えばコレ!という論文をご紹介します。おそらく、現段階では1,2を争うくらい使われている指標ではないかと思われます。

Carmeli, A., Reiter-Palmon, R., & Ziv, E. (2010). Inclusive leadership and employee involvement in creative tasks in the workplace: The mediating role of psychological safety. Creativity Research Journal, 22(3), 250-260.

どんな論文?

この論文は、ILを開放性(Openness)、近接性(Accesibility)、有用性(Availablity)の3次元でとらえ、調査指標を作成し、開示した論文です。先日の投稿でも、この3次元について少し触れました。

Carmeliらの研究によると、ILが、心理的安全性(Psychological Safety)を媒介して従業員の創造的な仕事への関与度合い(Employee Involvement in Creative Work)が高まった、とされています。

言い換えると、ILが直接的には従業員の創造的な仕事への関与(EI)に及ぼす影響は見られなかったものの、ILが心理的安全性(PS)、PSがEIに及ぼす影響は確認された、つまり、PSを介したILがEIに及ぼす間接効果は見られた、と言うこととなります。

わかりやすく、該当箇所だけ抜粋。IL→PSやPS→ECは有意差があるけど、IL→ECは有意差なし


何より特筆すべきなのは、著者らがILを概念化し、指標として論文に掲載したことだと思います。それまでは、Nembhard & Edmondson (2006)のLeader Inclusivenessの指標が用いられることが多かったようですが、Carmeliらの公開した指標が後続研究でも度々活用されています。


調査方法

最新のテクノロジーに関するR&D機能を持つ企業8社から、150人にアンケート回答を2回に分けて回収。1回目にはILを聞き、2回目(1回目から2か月後)には心理的安全性と創造的な仕事に対する関与度合いについて聞く、という2段階方式でした。

このように、確認したい変数を数回に分けて聞くことで、コモンメソッドバイアスを防げる、という狙いがあるようです。コモンメソッドバイアスとは何か?という点については、以下のサイトで神戸大学の服部教授が丁寧に解説してくださっているので、そちらをご参照ください。
簡単に言えば、複数の変数を一度のアンケートで聞くと、実際以上の相関が出てしまうよ、というものです。


インクルーシブ・リーダーシップの設問

以下が著者らによって論文に公開された指標の一覧です。(こういうの載せてくれる論文は珍しいので、見つけたときは嬉しかった・・・)

Carmeli et al., (2010)


感じたこと

最初に見つけた時は、指標を公開してくれるなんて大盤振る舞い!ありがとう!なんて思いましたが、その後、様々な方と話す内に、

「指標がたくさん参照され、使われているからといって、その指標が本質的かどうかわからない」

という話を聞き、なるほど、、、と唸りました。

開放性(Openness)、近接性(Accessiblity)、有効性(Availablity)という3つの概念は、果たしてどれほどインクルーシブ・リーダーシップの本質を衝いているのか?フォロワーのインクルージョン、つまり帰属意識が促され、独自性が重視されたと感じる認知に、どれだけ影響を与えるのか・・・?
(※このインクルージョンの定義に関しては、追って投稿します)

そう言われると、どうなんだろう、という気がしてきます。

この論文では、10名の社員、15名の学生に予備調査を行い、因子分析を行った結果として1因子構造が示されたようです。このあたりも、もう少し精緻な分析を行うと、異なった尺度・概念になるかもしれません。

自分がインクルーシブ・リーダーシップとは何か?問われたときに、

  • ほにゃららで、ほにゃららなリーダーシップで、

  • ほげほげと、ほげほげ、ほげほげで構成されるもの

と、腹落ち感のある明快な説明ができるとよいのに、と思っています。これが自分の研究にどう繋がるかは、これからのお楽しみ、ということで。


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