かげろふのごと入管に死せるをみな「たべたいです」とふ文を遺しき/紫苑
2021年11月1日発行「うたそら」第五号のテーマ詠の一首。
テーマは「食」なのに、「たべたい」というひらがな表記。出入国在留管理局にいた非漢字圏の女性のことだとわかる。
「かげろふ(蜉蝣)」と言えば、吉野弘の詩「I was born」。「或日 これが蜉蝣の雌だといって拡大鏡で見せてくれた。説明によると 口は全く退化して食物を摂るに適しない。胃の腑を開いても 入っているのは空気ばかり。」
彼女も胃の中には何もなく、残せたものは訴えの手紙だけだったのだろう。
2022年1月2日発行「うたそら」第六号「そらよみ一首評」掲載。