中村桂子氏が提唱する「生命誌」に学ぶ
ミヒャエル・エンデ『モモ』(岩波書店)をあらためて読んでみると、「時間」と「関係」を大切にして生きることが、心を働かせることであり、皆でそのような生き方を取り戻すことが大切であることを教えてくれる。コロナ禍が「時間」と「関係」の大切さを再認識させてくれた。
●「生命誌」とは何か
最近、「生命誌」を提唱する中村桂子氏の著書や対談集に出会い、「感知融合」の道徳教育、とりわけ「生命に対する畏敬の念」を育む道徳教育の理論と実践を深める貴重な視点を学ばせていただいた。
「生命誌」とは、「対話」で作り上げていく「知」であり、生物学の最先端であるDNA研究の成果を踏まえ、約40億年という平等な歴史を背負うものとして、人間を含むすべての生物の多様性と相互の関係を捉えなおそうとする中村独自の理論である。
中村桂子『ゲノムが語る生命一新しい知の創出』(集英社新書)によれば、「生命を基本とする知」のキーワードは、「生きる」「変わる」「重ねる」「考える」「耐える」「愛づる」「語る」で、「根っこ」を張るところを探し、どっしりと根を下ろしながら、「翼」を広げて飛んでいくことを夢見る若者を育てることの大切さを説いている。
この「翼と根っこを持つように」というメッセージを発した国連難民高等弁務官・緒方貞子は、日本は「人道大国」になってほしいと訴えたが、子供や若者たちの「翼と根っこ」を育てるためには、まず親や教師、私たち大人が「主体変容」し、翼と根っこを持つ必要がある。
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●生きものの共通パターン
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