獲得的幸福と協調的幸福の違いー日本的ウェルビーイングについて考える
●第4次教育振興基本計画に策定された「日本社会に根ざしたウェルビーイング」
文部科学省は2040年以降の社会を見据えた教育政策の総括的な基本方針として、
⑴「持続可能な社会の創り手の育成」
⑵「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」
を掲げる第4次教育振興基本計画を策定した。それらは令和5年度から実施され、全国の教育委員会はこれを踏まえた教育振興基本計画を策定する。
ちなみに、国外ではOECD(経済協力開発機構)において、2030年の教育を見据えた「学びの羅針盤2030」が2019年に示された。
同羅針盤は、子供の主体的な自己開発力を中心概念とし、その描く目的としてウェルビーイングを掲げている。
その中核は「変革を起こす力」であり、その構成要素は「新たな価値の創造」「対立やジレンマへの対処」「責任ある行動」の3本柱であり、これを手掛かりに「攻め」の道徳教育と授業改善を図る必要性があると、日本道徳教育学会の記念講演で、会長である永田繫雄東京学芸大学教授は強調した。
●日本人の幸福度は本当に低いのか
ウェルビーイングの国際的な比較調査においては、自尊感情や自己効力感が高いことが人生の幸福をもたらすとの考え方が強調されているが、これは獲得的な幸福を重視する欧米的な文化的価値観に基づくものであり、同調査によると日本を含むアジアの文化圏の子供や成人のウェルビーイングは低いとの傾向が報告されることがある。
しかし、我が国においては人とのつながりや思いやり、利他性、社会貢献意識などを重視する協調的な集団的幸福感がウェルビーイングにとって重要な意味を有しており、獲得的幸福と協調的幸福とのバランスを取り入れた日本的ウェルビーイングの実現を目指すことが求められる。
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