ナンバーワンからオンリーワンへ!「本当の自分」への気付きこそ”教育の核心”
昨日に引き続き、本日も学生に語った講演録を投稿したいと思う。
「本当の自分」への気付き。
「自分一人からの出発」、すなわち主体変容。
これらこそ、教育および教育者の核心ではないか。
講 演 日:平成8年5月
場 所:早稲田大学
タイトル:教育再生 ーナンバーワンからオンリーワンへー
●「生命」の危機の時代
「いじめ」なんていうことはまあ大した問題じゃない、と思っている人がいます。教育界の問題に過ぎない、と思っている人もいます。
でも僕はそうは思わない。
今、地球環境の問題が叫ばれています。僕はこれを「外なる自然破壊」と言っています。それと共にいじめに象徴される「内なる自然破壊」が深刻な問題になっている。
内と外の自然破壊、つまり「生命」というもののそのものの大きな危機が今、来ているのではないか、そういう問題としていじめの問題を捉えたいんです。
NHKがいじめの特集番組をやった時、全国から2,000通を越えるいじめっ子、いじめられっ子からの手紙が殺到しました。
僕が一番気になったのは「いじめている限り救われる」という、あるいじめっ子の手紙でした。自分がいじめている側にまわっている限りはいじめられない。つまり、極端な言い方をすれば、人間関係が「傷つけ傷つけられる」関係、「敵味方」の関係になってしまっているんです。
●いじめの構造
13,500人の中学生を対象に文部省が調査をした結果、約4割の中学生は、「いじめられた」或いは「いじめた」と答えています。
その59%は重なっています。
つまり、いじめっ子といじめられっ子に二分しているわけではなく、又ごく一部のいじめっ子といじめられっ子がいるのでもないんです。ちゃんと「いじめの構造」というものが全国の学校にできあがっているんです。
ある塾の子供ははっきりこう言いました。
「僕の友達は皆敵です」と。
運動会でライバルが転ぶことが自分の幸せにつながる。会社に入れば、上司が早く死んだ方が自分の出世につながる。
えげつない話をしていますが、「人の不幸が自分の幸せにつながる」これが競争社会の現実です。
「役に立つか立たないか」或いは「損か得か」、そういう合理的な利害関係というものの中で人間関係が今、固定化されている。
本来、アイデンティティーは、自分の中に内在しており、皆それぞれのオンリーワンの価値を持っているんです。
ところが我々は、外的な差異を比較してアイデンティティーを確認しています。偏差値に象徴されるような差異で比較して一喜一憂し、他人との比較で自分を意識するんですね。
大阪の豊中市で、軽い障害を持った女の子を、登校拒否の少年が、4人で30分間殴る蹴るの暴行を加えて殺しました。
その子たちには、軽い障害を持っている女の子が自分より下で、その自分より下の人間をいじめることによって優越感を感じるという心理構造が、残念ながらあったんです。
●経済成功の原因が教育荒廃の原因に
効率主義、合理主義、機能主義、平等主義・・・こういったことは、実は日本の近代化を支えてきた要因、経済を成功させてきた要因なんです。
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