若気けた奴
左前の花柄シャツ
紫のシースルードレス
赤いベロアのワンピース
ステージに上がる時はよく
そんな類のものを身に纏った
若気けた奴と呼ばれることに
ある種の恍惚を覚えてしまうと
もう自分では抗いようがなかった
どんな心境で溺れたのか
どんな経緯を経て来たのか
欲望に流された半生について
束の間の仲間たちと車座になって
月曜日になると決まって語り合った
若気の至りと言えばそれまでだが
そんな簡単な言い回しで済むような
生易しいこととはかけ離れた話だった
刷り込まれた快楽の記憶とは
決して縁を切れるものではない
髪の毛が抜け落ち皮膚が弛んで尚
子ども時代の恍惚が今だに付き纏う
若気た奴と呼んでくれた者たちは
既にみんな鬼籍に入ったというのに
源氏名が恋しいし左前に憧れてしまう
そう長く待たずとも
経帷子に袖を通す日が
来ることは知っているのに