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コンテの音
散歩中に紅葉が目に留まり
自然と足を止め徐に描いた
駅のホームでは向かいの母子を
ビルの屋上から眼下の景色を
指先の感覚に委ねるまま
衝動に駆られるまま
黙々と描いた
風景からの音に
耳を澄ませているのに
次第に音が遠のいていく
コンテがスケッチブックの上を
すいすい滑る音だけが耳に届いてくる
絵に命が宿る合図
気が付くか否かが
絵描きとそうでない者の
違いなのだと聞いた
紅葉の赤と空の青に
思想の相対を見たり
向かいのホームに
貧困という現実を
ビルの屋上に上がると
現代社会が抱える問題の
総てが見渡せるなどと
つい錯覚してしまう
コンテの音は
いっかな聞こえてこない
純粋な絵描きには
なれそうにない