根詰め過ぎず我が子と思え
これを読んだらぬか床仕込みたくな〜るの一席。
私の相棒、否、お子のような存在である「ぬか床」。
お店を立ち上げる前からの付き合いでしてね、ちょうど今月で3年と半月が経ちました。
この不精な私が、床から産み落とし、よいしょよいしょと育ててきたこの子は、今じゃぁ立派ないい女。(うちの子は女の子だと思っている)
育てはじめたばかりの頃なんざぁ、「こんなもん食えたもんじゃない!正直言って美味しくない!」などと、散々悪口なんか言われたりなんかしてね。
「ったりめいよ!育ち盛りの床がハナからいい味出せると思うなよ」
と、への字に唇を噛み締めながら、泣く泣く「なぁ、ぬか。がんばろう。大丈夫よ美味しくなるよ」なんて話しかけたのも今や懐かしき思い出でございます。(菌は生きてるから、話しかけるといいんだよ。)
(これは、はじめて床を授かった日の貴重なお写真)
さて、3か月も過ぎますと今まで「ただ酸っぱい」だけの子が、不思議なもんで「いい味」出してくるんですねぇ。
ちゃんとぬかっぽくなるんですよ。
我が家は親戚含め、ぬか床なんていう食文化とは無縁で生きておりましたもんでね、何が正解なのかは未知の世界でございました。もう手探り状態。
調べれば、「やれ塩分は、ぬかに対して7〜13%」「毎日混ぜろ」などと言われても、ハテナマークが頭に浮かんじまうもんですからね、こりゃもう自分の感覚を信じようとなる訳です。
私のモットーは
「根詰め過ぎずに我が子と思え」
たまにやるワークショップでもお話ししておりますが、これに尽きる。
毎日混ぜなくたっていい。塩分なんて、床の味見て適度にしょっぱきゃそれでいいの。
あ、水分出てきたから水抜きしよう。なんか酸っぱくなってきたから唐辛子足そうとかね。
あの子達素直だから、いりこをいれたらいりこの味になるし、唐辛子強めにいれたらピリリとちょい悪に育ったりするの。
とにかく、床の様子を見て、感じ、調整、そして信じてあげることが大切。
子育てみたいでしょ?(なんて、育ててもない私が何を言ってらぁ!)
ここだけの話ですがねぇ。
一度だけ横着して、1か月くらい放置するなんていうこともありましたが(横着通りこしてネグレクト!)、うちの子は強かった。
だいぶ荒れ狂ってましたがね。
酸っぱさ100%だし、白い膜(産膜酵母というぬか独特の風味につながる菌)がこれでもかとはってて「あちゃ〜」っていう感じ。
明らかにこちらが悪いから、そりゃもう謝り倒してご機嫌をとりとり、今に至る訳です。
そんな思い出すらも、今じゃぁいい床の旨味になってる訳です。
可愛い子にはなんとやら〜だな。
またもベラベラと。ここからはウンチクもね。
ぬかの威力は凄まじく。
日本人は、ヨーグルト食べるよりもぬか漬けを食べたほうがいい(その理由をご説明っ!)。
なんせ、奈良時代からある文化ですからね。(この時代は「須須保利(すずぼり)」なんぞと言われておりまして、大豆や粟を臼でひき、塩と野菜を加え使われていたそう)。
江戸時代になりますってぇと、精米の技術が一気に上がりって「白米」が登場する。
(膳の上にのってるのぬか漬けですねぇ)
となると、大量の「ぬか」がこれでもかと出るんですね。
実はこの「ぬか」。
お米の栄養分の95%が含まれてるんだそうで、えいようの宝庫な訳です。
(裏を返すと白米って贅沢だなって思いますよね。)
さらに、このえいよう満点のぬかが発酵すると、多量の乳酸菌が発生する訳です、えぇ。
ヨーグルトで摂取できる乳酸菌は1種と言われているから、びっくりしちゃいますよね。
そして、昔(と言ってもだいぶ)から親しまれてきた菌や味、酵素が床の中にたくさんいるので、体が喜ぶ訳ですね。そして何種類もあるので、自分にジャストフィットの乳酸菌を取り込むことができるのです。
ここまで聞いたら、なんかムズムズしてくるでしょうっ!
まだある、ぬかのいいところ!
「食べるサプリメント」または「最高のローフード」なんても言われてまして。
床につけた食材たちは、床に住み着く微生物や菌のお陰で旨味や栄養価もUPしちゃう訳です。
なので、少量で効率よくえいようを吸収できるなんてそりゃもう結構、ケッコー!
ビタミン、ミネラルも豊富なので、美容にもいいだそうですよ奥さん。
なぁんて、次から次へと話は止まらず。
育て方のコツやら、ここ最近は肉やら魚も漬けてアドベンチャーワールドなもんで、その研究もゆくゆくは報告いたします。
え?いい迷惑だって?
そりゃ結構。勝手に報告しちゃうんだから!
お後がよろしいようで。
食べたいものをつくる人 高橋 拝。