ゼロから始めよう
「なにか趣味でも持とうかな」
そう思った瞬間、今の自分には何もないことにハッと気づく。
ここまでずっと無趣味に生きて来たわけではない。
かつては、かなりの数の趣味を有していた。
幼いころから読書好き。これはやがて学生時代に図書館司書の資格を取得し、のちに社会人となってからは図書館でボランティアをするに至った。
また私は映画好きでもあった。サスペンスとホラー以外ならば幅広く鑑賞した。足繫く映画館に通い、パンフレットはもとより、『映画年鑑』やら『キネマ旬報』は欠かせなかった。ドキュメンタリー映画を観たあとは新聞記事にコラムを執筆をしていた。
その他にも文学の分野では短歌歴もそこそこあり、詠んだ歌は定期的に新聞掲載されてもいた。
さらにアロマテラピーやハーブティーにも凝った。趣味が高じてプロのライセンスを取得するほどで国際資格まで得た。
それから英語も好きだった。趣味にとどめることをせずに子ども英会話教室の講師をボランティアでしていた時期すらあった。
と、ここまで読んでくださった方々は気がついたかもしれないが、私の「趣味」はどれも「楽しむ」のを通り越すほどの熱の入れようなのだった。
多趣味・多資格。これを生かさない手はないと、2012年。地域の多目的サロン開業を目指して準備に取り組み始めた。しかし、だ。2013年夏。それどころではない事態が起きた。夫との離婚問題が生じて、半年後には離婚が成立した。(離婚理由についてはこれまで書き綴ってきたのでここでは言及しない)
あれから十数年が過ぎた。
今は自分には何もないことに気づいてハッとして愕然とする。
英語はすっかり忘れているのは言うまでもない。
現在は病ゆえに図書館ボランティアをすることもできない。かといって映画にもたいして関心がなくなってしまい、アロマテラピーにも興味はなくなってしまった。
私には何も残っていないことに失意を隠せず、ひとり、胸の中で焦った。「えっ?もしかしてすべてを失った?」
趣味が全くなくなったということにショックを受けて悶々とした。
しかし、そのあとに「ようやく、ここまでたどりついた」と心に感謝の念があふれた。離婚と手術・闘病を余儀なくされ、ただ生きることに無我夢中で、趣味どころではなかった長い歳月。
けれども、「なにか、趣味でも持とうかな」とようやく、ここまで気持ちは落ち着いたのだ。
闘病は続くけれども、ゼロから新しいことを始められる。
そうして思うことは、今度はヒートアップする趣味よりは、ほわっと楽しめる趣味が持てたならいいな、と願ったりしている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?