【連載】川崎老人ホーム高齢者連続転落事件今井隼人被告が語る“介護の闇”#3
【事件概要】
2014年11から12月、川崎市の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で、80から90代の入所者3人が、4階と6階のベランダから相次いで転落死した。事件があったすべての日に夜勤に就いていたのは、同施設の介護職員だった今井隼人被告ただひとりだったこと、そして「3人をベランダから投げ落とした」との自供により、2016年2月、神奈川県警は今井被告を殺人の容疑で逮捕。
一転、今井被告は裁判では自供を覆し無罪を訴えた。だが、一審、二審で死刑判決を受け、現在は最高裁に上告中である。
【今井被告が“介護の闇”を語るまでの経緯】
事件や裁判の経過とは別に、介護現場の実情を世間に問い、現状を見直す一助になればとの思いから、今井被告が介護に携わるようになった経緯から、逮捕までを書くことを依頼した。
本稿は、今井被告が介護現場で過ごした、約1年間の記録である。
※本稿は、今井被告から届いた手紙を文字に起こしたものです。なるべく原文ママでの掲載になりますが、一部、事実関係が損なわれない程度にこちらで修正しております
※全6回程度の連載の予定です。また本稿の売り上げは、今井被告への原稿料及び取材活動費などに充てさせていただきます。
【今井隼人被告が語る“介護の闇”】 これまで、施設入所後から約1ヶ月単位で書いてきましたが、以降については大まかにしつつも、ポイントポイントで細かく書いていこうと思います。
まず、入社してから約2ヶ月経つと、ライン表に基づいて動いていくことはもちろん、入居者の方とのコミュニケーションも徐々にはかれるようになってきます。
それ以降は、例えば結局は当時の介護職員は私自身を含めて、おそらく全て最終的にはどういう順番で、どうやって介助すればより効率的に介助がスムーズに進められるかということについて、各介護職員が決められます。
これは、私が当時思っていたことだったのですが、介護というのはこうやってやれば、こういう順番でやればミスなく安全に実施できるという、いわば”正解”などないんです。
介助者も人間なのでミスはする。そして、同じ入居者の方であっても、その日その日で心身の状態が違う。だから同じ介助項目であっても、同じやり方でうまくいくとは限らないんです。
介護というのは、正解がないからこそ失敗や成功しては考えて、考えて。頭も使って当然、体も使う。
だから介護というのは大変なんです。大変だからこそ、入居者の方から「ありがとう」「アンタがいるから助かってるよ」等と言われると嬉しいんです。
このようなことは、だいたい私自身が入社して2ヶ月以上経ってから思っていた、感じていたような記憶です。
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