文献紹介 サルコペニアの嚥下障害 その2
こんにちは。先日途中までまとめた文献について、続きをまとめていきたいと思います。
「サルコペニアの嚥下障害」 藤島一郎 國枝顕二郎 CLINICAL REHABILITATION Vol.29 No.12 2020.11
最近は栄養リハに興味があって、そこを勉強していくと、サルコペニアやフレイルも切っては切り離せない関係にありますよね。
そんなこんなで、これらは繋がっているため、関連させて学習していくと知識が深まるかなーと感じています。
ポイント4つです。
では続きをまとめていきます。
サルコペニアと嚥下障害で考慮すべき点
【純粋な嚥下筋のサルコペニアであれば、感覚障害はないはずであり、、嚥下障害において咽頭残留はあっても誤嚥すれば咳反射が起こると考えるのが普通】
【ただ、実際の臨床で問題となるのは脳卒中や神経筋疾患が高齢者に発症した場合である】
【ベースに嚥下筋のサルコペニアが合併している可能性を考慮して複雑な病態となる】
実際に入院患者さんや老健入所者さんで、整形疾患でも嚥下障害が生じている方はたくさんいます。
そういう時はサルコペニアによる嚥下障害を特に疑っていますが、脳卒中等での入院患者さんはたしかに複雑かと思います。
廃用症候群なのか、麻痺の影響なのか、知覚異常か、認知面、高次脳機能面の影響なのか、評価しなければなりません。
サルコペニア自体は神経筋疾患とは異なる状態ということで、それによる筋力低下や筋量減少による嚥下障害は厳密には分かれます。
ただ、その見極めは難しいところで、直接の食事や口腔体操、良好な栄養状態を維持できたとしてどこまで回復が望めるのかも判断が難しいところかと思います。
そういった意味では自身の病院でデータを積み重ねておくなどして傾向をつかむのも必要になるかと思います。
サルコペニアによる嚥下障害のフローチャート
ここでは以下の森隆志先生の論文を基に説明がされていました。
Mori T et al : Development, reliability, and validity of a diagnostic algorithm for sarcopenic dysphagia. JCSM Clinical Reports 2(2) 1-10,2017
ちょっと他の論文になってしまいますが、森先生たちが行ったこととして簡単に記したいと思います。
回復期リハ病院に入院した患者さんを対象にして
全身のサルコペニアのに該当しない方を除外
その後嚥下障害が無い方を除外
その後脳卒中や他の神経筋疾患がある方は純粋な嚥下障害とないとして除外
そして嚥下筋を舌圧で評価して
舌圧低下のある方⇒Probable sarcopenic dysphagia(可能性が高い)
舌圧低下のある方⇒Possible sarcopenic dysphagia(可能性あり)
に分けるというようにしたものでした。
画像:「サルコペニアの嚥下障害」森 隆志 :日本静脈経腸栄養学会雑誌 31(4):949-954:2016 より引用
嚥下筋量の評価をせずに明確にサルコペニアの嚥下障害を診断するのは避けるべきともあり、ここはサルコペニアがあるからと言ってそうだと決めつけないようにしないといけないですね。
サルコペニアによる嚥下障害における嚥下圧での検討
筆者の行った研究
16人のサルコペニアによる嚥下障害患者に対し舌圧と高解像でマノメトリー(HRM)による咽頭嚥下圧との関連を調べたところ、舌圧(MTP)と咽頭期嚥下圧(VPCI、MHP-CI)の相関はみられなかったようです。
また
【純粋なサルコペニアによる嚥下障害患者における咽頭嚥下圧は、健常者と比較して中下咽頭の嚥下圧が低く、食道入口部の静止圧は高く、開大時間が短いという結果だった】
【サルコペニアによる嚥下障害では舌圧と咽頭期嚥下圧は必ずしも相関しないが、咽頭期嚥下のパラメーターに特徴がみられる嚥下筋の特殊性を考慮してもサルコペニアが嚥下に何らかの影響を与えていると思われる】
とあります。
この辺に関してはこれからまた研究が進んでサルコペニアと嚥下圧以外でどういった関りがあるのかわかってくるといいのかなとも思います。
興味深いですね。
治療における運動と栄養の役割
【現実の高齢者の嚥下障害の臨床においては、多くの疾患や薬剤、それに栄養障害や廃用が複雑に絡み合った病態となっている】
【サルコペニアが関与した嚥下障害の治療においては原疾患の治療とともに栄養、そして運動がポイントである】
最近のリハ栄養の観点からも栄養状態はとても重要で、それとセットで運動を行うべきというのは通例ですよね。
やはり嚥下面をみる場合においても原疾患の治療はもちろん、良好な栄養状態を保ち、訓練の効果を最大限引き出した上で、サルコペニア予防、嚥下障害予防につなげていければいいですね‼
おわりに
自分は回復期病棟で働いておりますが、整形疾患の方でやはりサルコペニアによる嚥下障害を疑う方をみかけます。
気を付けなければいけないのは、論文内にもあったように原疾患等、全体をみる視点をもつことかなと思います。
脳卒中患者とはまた異なり、高齢者がもつ特性を包括的に捉えて丁寧に評価する必要があるなと思いました。
個人的にリハ栄養、サルコペニア、フレイル、認知症、それに伴う嚥下障害などはつながりがあって勉強していて面白いです。
平均寿命が延び続けている今後、ますます「高齢者をみる」視点が必要となるので、予防の観点から今後も学習していかねば!と改めて思いました!
今回はここまでで終わります!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
また予防医学についてもアウトプットしていければと思います。
それではまた!失礼します!
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