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#847 ブランド価値が高まる時
大ヒットする商品やサービスに共通する法則は、「広く浅く」じゃなくて「一部の誰かに深く刺さること」が重要だってことを聞きかじったことがある。
2022年上半期のヒット商品番付をみていると、確かにそのような側面があるのかな、と思う。「ヤクルト1000」なんてその最たる例なのかもしれない。
また、昨日のニュースで「トップガン マーヴェリック」が興行収入10億ドルと大ヒットになっているという記事も見かける。これも50代以上に深く刺さる作品なのだろうし、コロナ明けの需要と映画館で見たい豪快な作品という後押しもあっての大ヒットらしい。それがオリジナルを知らない他の年代にも波及したとのこと。
そして、現代のハイブランドと呼ばれる企業も当初は「一部の誰かに深く刺さる」ヒット商品が存在したから、今の地位があるのだろうか?なんて考える。
例えばエルメス。元々馬具のメーカーだったのが、自動車時代になってバッグブランドに転身したというし、その時点で一部の誰か(馬に乗っていた富裕層)に深く刺ささるヒット商品があったのかもしれない。
ナイキなんかもそうだろう。今では限定モデルが高騰し高級スニーカーメーカーとなってしまったが、元々はオニツカタイガーの下請け会社だった。
ただ、ブランド力を上げるとなると、ヒット商品を連発するのではなく、3割30本を目指さないといけない時もある。打てる球を打ちまくって、ヒットを量産するのではなく、難しい球を敢えて打ちにいって、凡打で終わることも必要なのかも。
そうしないと企業として成長しないし、誰にでも打てる球はすでにレッドオーシャンになっていて、消耗戦になるだろうから。
日曜日の日経新聞にはたまに「THE NIKKEI MAGAZINE Ai(アイ)」という女性向けハイブランド広告特集フリーマガジンが付いてくる。
先週日曜には「ヤーマン」の広告が掲載されていた。個人的なヤーマンのイメージは「怪しい健康器具メーカー」(失礼)。ところが、その広告ではハイブランドな他の商品群(Panasonic製とか)と並んでも遜色ないような広告展開。これもヒット商品を連発するのではなく敢えて難しい球に挑戦する流れなのだろう。
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ガジェット好きには今では定番のブランドとなったAnker。これも当初は怪しい中華製充電器の一部でしかなかった。それが今では「安心安全な充電器ブランド」といえばAnker。最近では価格もそれなりに上がって、高付加価値になってきている。
アプリの世界で言うと、TikTokもまさにそうだろう。リリース当初はYouTubeでかなり怪しい広告展開をしていた。その広告、自分には刺さらなかったけれど、一部の誰かの心には深く刺さったのだろう。
要は、一見「こんなの誰が買うんだ?」といった製品なりサービスは、誰かの心に刺さっている可能性はあるし、パッと出てきたようなブランドが、実は過去にそういった挑戦の歴史があったのかも、なんて1人で納得する。
敢えて難しい珠を打とうとして、派手に三振した例はこの本に詳しい。