ひとり飯
仕事が終わった。
今日はまっすぐ帰宅するのだ。1時間後の幸せそうな自分を想像しながら電車に乗って、冷蔵庫の中身を思い出しながら電車を降りる。
駅前のスーパーでお豆腐と豚肉を購入。駅の向こう側のスーパーの方が少し安いけど、もう1秒でも早く帰りたい。だってお腹がぺこぺこなのだ。
直径17cmのお気に入りの土鍋に、キャベツとしめじ、お豆腐に豚肉を詰め込む。ねぎを買い忘れたから玉ねぎを入れておこう。残っていた竹輪も入れちゃえ。あと人参。彩りは大事なのだ。
白だしとお味噌でグツグツ煮えたら豆乳を投入ー。分離しないように火加減には注意する。お豆腐+お味噌+豆乳。大豆ってすごい! 最後に少量のごま油と大量の擦りごま、七味をかけたら出来上がり。ああ、食欲そそるいい匂い!
さて、テレビの前のテーブルに手作りの鍋敷きを置いて、熱々の土鍋を慎重に慎重に運ぶ。ここは1番気を使うところ。能の “はこび” をイメージするのだ。そろりそろりである。
冷えたレモンサワーも用意して準備万全だ。
DVDをセットしたら斉藤和義とともにひとり飯がスタート。(いや、実はスーパーで買い物している頃から私のひとり飯は始まっていた)などと考えながら、1時間前に想像した幸せそうな私についに追いついた。あ、まだ油断は禁物だ。焦ってひとくち目に舌を火傷したら台無しなのだ。
ほろ酔いで “歌うたいのバラッド” に聴き入り、土鍋の底が見えてきた頃、気付けば空き缶をマイクに “ずっと好きだった” を本気で熱唱。
最終的には「こんな私に生んでくれてありがとう!」くらいの気持ちでマイク…缶を置くのだ。なんてのんきな時間。
こうして私は、今夜も至福のひとり飯を満喫したのであった。