野良デザイン#36-40|コンクリートブロックの看板立て 他
本来の想定された用途を超えた道具の活用『野良デザイン』。
野良デザインは、職業人としてのデザイナーの手や、産業のデザインプロセスではなく、匿名な生活者一人ひとりの創意工夫から生まれるのです。
『野良デザインの蒐集』は、ストリート生まれな野良デザインの蒐集を通して、道具の可能性や、生活のリアルを探る試みです。
野良デザイン#36|コンクリートブロックの看板立て
とある路地裏の私道に立つバイク乗り入れ禁止の看板。道幅2mほどの狭い通りの両脇には、各戸の栽培するプランターが並び、その一角に看板が立てられています。
ベニヤ板に角柱を取り付けた簡素な作りの看板には、ラミネート加工された手製の張り紙が貼られ、コンクリートブロックの側部の穴に差し込まれています。
注目すべきはその固定方法。この看板立ては、コンクリートの端材を楔(くさび)のように差すことで、看板とコンクリートブロックを固定しているのです。
コンクリートブロックの穴に対して小さい寸法の角柱は、そのままではぐらつき、強い風が吹けば飛ばすぐにされてしまうでしょう。
私道を舗装しているコンクリートの端材を使うところも、この看板立ての野良デザイン性を高めています。
ネジも針金も使わない、スマートなソリューションが施された看板立ては、狭小な私道の風景に今日も溶け込んでいます。
野良デザイン#37|コンクリートブロックの看板立て
野良デザイン常連のコンクリートブロック。便利な彼らは、他にも看板立てとして活用されているようです。
こちらの看板は、縦に置いたコンクリートブロックのU字の凹みに看板を立て、建物の外壁に立て掛けて設置されています。
ベニヤ板に着彩したカラフルな看板。そのサイズに合わせて2つのブロックが使われています。
コンクリートブロックの長尺方向を縦に置いて高さを出すことで、道ゆく人の目に止まりやすく、可読性も高めている点にも工夫が見られます。隣のシーサーやカエルの置物とも、仲良く横並びで可愛らしいですね。
野良デザイン#38|物干し看板
昼の街は、夜のそれとは全くことなる顔を持ちます。夜の街を照らす飲み屋の看板も、日の高い時間は休憩中なようです。
人通りの多いゆとりのある歩道に面した店舗の店先には、使わない電灯看板が置かれ、巻かれた電源コードが、看板の角に掛けてありました。
看板側面に付けられた長細いパーツは、もしかしたらコードを束ねるためのものか。すると野良デザインみが薄まるが、このパーツがなくとも成立する工夫であるため#38にアーカイブ。
違う時間に通ると、水洗いされたマットが干されており、休憩中も大活躍な看板の姿を目にしました。働き者ですね。
野良デザイン#39|ビールケースのプランター台
路地裏には、国道沿いの往来の激しさと対照的な、ゆったりとした時間が流れます。
そんなゆるい路地裏の空気は、軒沿いに置かれた緑の自由さにも見られます。
コンクリートブロックの上に置かれたプランターに混じり、樹脂製のビールケースをひっくり返してプランター台として活用する野良デザインに出会いました。
軽量化のため格子状になった底面と、2Lペットボトル程度の丈のあるケース。路面の浸水からプランターを遠ざけ、さらに水やりや雨から溢れた水を地面へ落とす、理にかなった構造のようです。
地面から生えた草や、背の低いプランターと組み合わさり、ただ並べただけでは単調になってしまいがちな軒先のプランティングに、抑揚が生まれています。
野良デザイン#40|樹木のプランターホルダー
国道沿いの歩道には、店舗が所狭しと並びます。
どの軒先には、無味乾燥してしまいがちなガードレールの風景をなんとか味のあるものにしようと、各々の店が工夫を凝らしている様子が伺えます。
ある美容院の前には公の街路樹が植えられ、その周囲に店舗の私有のものと思われる緑が散らばっていました。
その中に、面白いプランターの設置を見つけました。
なんと、人の丈ほどの樹木の細い幹に、プランターが固定されているのです。鉢形の樹脂プランターの胴に針金が巻かれ、木の幹に括り付けられているようです。
長いことこの状態なのでしょうか。針金が括られ、プランターの重みを支える幹に、針金が食い込むように木が成長しています。
亀の甲のようなバキバキな表皮の質感も、このプランターを支える力に影響されたものなのでしょうか。網を引く漁師の屈強な手指を思い出しました。
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眞木孝明