過食の鎧
自分ではコントロールできない過食
拒食から過食へと変化したのは退院後のことである
拒食症が治る=過食を経て実現するモノだと知った。
小学6年生のある日
食べた後は罪悪感で心神喪失し、明日からは食べないと決め
朝ご飯は抜き、給食は合掌の後に量を減らしにいき
食べるふりをしてみんなが食べ終わった頃に残飯にした。
これで痩せられると思うが下校時間付近になると食欲が出ていき
一斉下校だろうが用事があると先生に報告し誰よりも先に学校を後にし
コンビニへと急いだ。
ためていたお小遣いを全部使い切るかのごとく
食パン一斤やチョコクリーム、家に残っていたご飯などを
時間の許す限り食べまくった。その時間とは親が帰ってくるまでのことだ
自分でもこの量を今の時間だけで食べきる様子は悪魔にでもとりつかれているかのような状態だと思った。絶対に止められる、ばれたら食べられなくなるその一心で早食いをした。そしておなかがいっぱいになったところで罪悪感にさいなまれ、夕食に参加することはほぼなかった。
夕食を食べないとなると、親がまた痩せようとしているのではないかと心配
してきたが、自分は食べてしまった罪悪感で悩んでいるのだ。分かってもらえない悲しみから白紙に食べたものの絵を描き、
「こんなに食べたんだよ、すごいでしょう」
褒められると思ったが、おまえは異常だという顔で
「ふぅ~ん」と一言だった。
このコントロールできない自分を止められるモノは居ない
ある日親との買い物に付き合った、お菓子を一つ買っていたので
それを車で食べようとしたとき、親が阻止した
「あんたは過食症だ、気づけ」
いや気づいている、コントロールできないだけなんだ。
この理解されないストレス、怒り
取り上げられるお菓子をボロボロになろうが力で取り返す。
身も心もボロボロになり人前に出ることを拒んだ
見るからに体型が変わってしまい、また次はどんな悪口を言われるかが
怖かったのだ
ある日親に言われた
「なぜ習い事に行かないのか?」
俺は言う
「言われそうなのが怖い」
というと
「太っちょだとか?」
何故一番言われたくない言葉を当ててくるのか。
またそこで泣いてしまうのだが
「毎日歩くか」
それが親からの助言であった。
習い事を休みがちになり、家に籠もりがちになった
何を言っても信じてくれない、抱きしめてくれない喪失感に死んでしまおうとも思ったが、それでも一緒に遊んでくれる友達が居たのが救いだった。
悩みは相談しても意味がないのだと知った俺は
何でも一人で解決しようとする癖がついてしまった。
ただ肯定してほしいのだが、いらないアドバイスや否定される恐怖で
悩みや感情を出すことを恐れる性格となってしまった。
もちろん親も初めての経験で変わりゆく息子が不安や恐怖で
何をしてあげたらいいか悩んだと思う。
理解できるはずがないのだ、
おれも高校生になってテレビの仰天ニュースで
自分が摂食障害だったんだと知った。
医者は分かっていたのだろうが、あえて親に言わなかったのか
悲しませたくなかったのか定かではない。
精神疾患は心のコントロールが支配している
それは自分を表現すること、内面を出すことの大切さを教えてくれたんだ
人の言動や環境をカービーのごとく吸収して生きるのもいいが
自分の好きなモノ、楽しいモノ、だけを吸収していい鎧をまとって生きてみたい。そうするとだんだん防御率が高くなり、悪いものが入ってこなくなる
その装備をおれに見せてほしい。