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読書33 『彼女が天使でなくなる日』
寺地はるな著
九州北部に位置する人口三百人の星母島。その島にある「母子岩」がパワースポットとして注目を集めつつある。
十五歳までこの島で育った千尋が、去年島に帰ってきた。育ててくれた遠縁の政子さんは「おまえはこの島のみんなの子ども」と言い、島のみんなからは「モライゴ」と言われていた。
千尋は政子さんの民宿「えとう」を引き継いで、託児所を併設した。託児所は民宿に泊まりに来るお客さんを対象にしていたが、島の保育園が閉まっている時間や早朝や夜中などに預かる夜間保育なども考えていた。
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子育てに孤独を感じている母親。子離れできない母子。恋人と結婚した親友と一緒に、千尋の民宿に訪れます。
政子の娘は子どものまつりを置いて島を出ていきます。まつりは十六歳で妊娠します。
保育園に入れず、無認可の保育園に預けて、働きながら子どもを育てる大変さ。夜泣きがひどくて、ちょっとしたことで癇癪を起こす子ども。全く他人ごとの夫。無責任な義実家。いいおとなの娘が、自分のいうことを聞かないからと、行方不明を装う母親。扱いにくい子どもに限界の父。
どの話も、思いあたる身近な話だと思いました。
いっぱいいっぱいの気持ちを抱えて、民宿えとうに辿り着いたお客さんが、何年後かに訪れて「うちの近くにも『民宿えとう』みたいなところないかなぁ。『育児、無理!』って思ったら泊まりに行って。託児所に子ども預けて寝たり、他の宿泊客と『夜泣ききついよね』とか話すの」と、話されて、千尋は「つくればいいんじゃないですか」と言います。「無理」と言いながら、考え込んでいるようでした。そういう声が実現したらいいのになと思いました。
「願うだけなら誰でもできる。願いはすべての種子だ。種子がなければそこから芽を伸ばし、葉を広げることもできない」「枝に沿うようにして、世界は広がっていく。そこでふたたび蒔かれた種子が、また新たな誰かの世界を広げていく」
今回も刺さる言葉がたくさんありました。
何よりうれしかったのは、この作家さんの本を読むきっかけになった『今日のハチミツ明日の私』のクロエ蜂蜜園のハチミツが、一瞬でしたが出て来たことでした。
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