読書90 『盲剣楼奇譚』
島田荘司著
娘の通う大学の、総合研究博物館で開催されている「赤門から金沢展」で、元妻の作品が出品されているため、吉敷刑事は会場にいるが、鷹科艶子という日本画家の絵画に惹かれて動けなくなっていた。
それは、非常に美男な剣士が赤児を背負っているもの。タイトルには「盲剣さま」とある。
艶子は、金沢に住む通子の店や画廊のある家の所有者で、大家であった。
艶子は金沢一とも称された、江戸時代から次く「盲剣楼」という置屋の娘だった。
「盲剣楼」の中庭には社があり、そこに「盲剣楼」の守り神である盲剣さまが祀られていた。
昭和二十年九月。楼を襲いしばらく居座っていた男たちを、どこからともなく現れて斬殺した謎の美剣士。しかも赤児をおぶっていた。当時十歳だった艶子が見た姿が「盲剣さま」だったという。
艶子の孫娘が誘拐された。犯人の要求は、戦後「盲剣楼」で起こった斬殺事件の犯人を連れて来いというものだった。
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戦前戦後の話から盲剣さまの由来になった江戸時代の話。そして、現在の誘拐事件です。すごいボリュームです。
最後に「不適切とされる表現が一部含まれていますが、当時の時代性を反映させるために用いたものです。ご理解賜りますよう、お願い申し上げます」と書かれているように、昔の話の中には、ひどい差別や用語が出てきます。
その内容には驚くばかりです。
印象に残った場面は、盲剣さまのもとになる話のところで、鮎之進(偽名)が、千代の状況を聞いて、取り乱したところです。さほど気にしていないと思ったので。
鮎之進は修行中の身で、たまたま千代の村を助けたのですが、千代の熱烈すぎる行動に押され気味のまま、無理矢理必ず戻ると約束させられて城下町に向かったのでした。
最後に誘拐事件に戻ります。
これまでの長い話が全部つながります。
二十年ぶりの「吉敷竹史シリーズ」だそうで、私は前作は全く知りません。それでも、問題なく読めました。
いくつもの時代の話が、この物語に入っていて、ていねいに描かれていました。
長編も全く苦になりませんでした。鮎之進のキャラクターがイメージと違っていましたが、好感が持てました。
奇譚とは「めずらしい言い伝え」「不思議な物語」のことだそうで、タイトルの意味がわかってほっとしました🤭
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